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お休み頂いております……m(__)m

読者の皆様、急にお休みして申し訳ありません。
近親者が亡くなりまして、バタバタとしておりました。
葬儀も無事終わりましたが、片づけなどでもう少し時間がかかりそうで、今月いっぱいお休みさせて頂きたいと思っております。もう暫くお待ちくださいませ。
(連載内容を作者本人が忘れそうです……(;'∀')が、頑張ります。)

今日は少しですが書き溜めていた番外編、アランとベルナールのお話をこちらにて投稿させて頂きます。
五話に分けて書く予定で、実はこちらも滞っています。(;'∀')
気長にお待ちいただけたら有難いです。

では、若き日のベルナール(15)の登場です。パチパチパチパチ。

【アランとベルナール】
☆第一話 側近打診

「私が……王子殿下の側付き、ですか?」

アジュール子爵家の次男であるベルナールは、学園卒業を間近に控え、就職先も決まった矢先に、両親に「話がある」と呼び出された。

一体何事だろうと応接室に顔を出せば、父と母だけでなく三つ上の兄までも揃っていた。

その上ベルナールを前にした三人は、酷く深刻そうな表情を浮かべ『王子殿下の側付き』へとベルナールが推薦された話を持ってきたのだ。

王子の側付きと言えば子爵家のベルナールには勿体ないほどの話だ。普通ならば諸手を上げて喜ぶべきところである。
けれど両親の顔は、曇り顔。何が彼らを悩ませているのか、この時のベルナールにはまったく分からなかった。

今現在、ベルナール・アジュールは十五歳。

学園卒業後は王城の事務方へと務める事が決まっている。

実家は子爵家ではあるが、貴族として特に力がある家ではない。

箸にも棒にも掛からぬアジュール子爵家の次男でしかない自分が、何故王子付きとなるのか?

側付きはいわば側近中の側近である。

永年王子に仕える、それが約束されている。

だが、両親も兄も喜んでいるそぶりはない。

なので王家からの打診に素直に喜べず、ベルナールはすぐに返事を返すことが出来なかった。

裏があるのではと、若きベルナールにでも感じ取れたからだ。

「あの、王子殿下とは……エリザベーラ王妃によく似たあの馬鹿おう……ゴホンッ、ゴホンッ、えーと……可愛らしい王子殿下のことですよね……?」

新年の王城での集まりで、十五歳になったベルナールは初めて王家の方々を目にした。

この国の偉大な王であったアランデュカス王に憧れがあったベルナールは、期待に胸を膨らませ向かった王城で、愚鈍な昼寝王と噂される現王イアンディカスの姿を見て、可もなく不可もなく、といった残念な感想を持った。

そして結婚前から国一の美女だと噂され、 ”薔薇の王妃” だと評判のエリザベーラ王妃は、派手な装い(ドレス)を見事に着こなし、会場の視線を一心に集める、ラベリティ王国の薔薇と呼ばれるにふさわしい姿をしていたが、気位が高そうで好感は持てなかった。

そしてそんな二人の息子であるディランジュール王子は、見た目こそエリザベーラ王妃によく似て美しいが、父親である国王陛下の挨拶中、ずっと鼻をいじり、話が全く耳に入っていない様子だった。

まだ四歳か五歳でしかないディランジュール王子。

大人の話などつまらないと感じてしまうのは当然だと思う。
だがその話の最中、ディランジュール王子が鼻をいじっていた指を口に入れた瞬間、ベルナールは「アレはないな……」と心の底から呆れてしまった。

ある意味ではディランジュール王子は大物なのかもしれないが、夜会での様子だけ見て見れば、普段の甘やかされている姿が想像できた。

何故なら各貴族家からの挨拶を受ける際も、挨拶など耳に入っていない様で「お菓子お菓子」と騒では傍にいる使用人たちを困らせ、今の所食べ物にしか興味が無い、家畜に近い子供……のようだった。

そんな王子の側付きになる。

どう考えても我儘王子の世話係、面倒な仕事だとしか思えない。

出世街道には乗れるだろうが、嫌な役目でもある。

両親もきっとそこが気になるからこそ、こんなにも顔を曇らせているのだろう。

夜会でのディランジュール王子の自分勝手な姿を思い出し、断れるならば断わりたいと口を開きかけたベルナールに、渋顔の父は「違うのだ……」と小さな声で答えた。

「……? 父上、違うとは? 王子殿下とはディランジュール王子の事ではないのですか? もしや他国の王子? に付く……というお話なのでしょうか?」

尚更あり得ない話を持ちだしたベルナールの問いかけに、父は意味ありげに母を見た後、「ベルナールも成人したのだから……」と、ベルナールの知らない話を始めた。

それは世間では知られていない ”ある王子” の話だった。

「ベルナール、実は夜会でお見かけしたディランジュール王子は、この国の第二王子になるのだよ……この国には、アランデュール王子という第一王子がいるのだ……」

「……アランデュール第一王子……? そのお方は何故表に出ないのですか? もしかして体が弱くていらっしゃるのですか?」

ベルナールの疑問は当然の事だった。

第一王子であるアランデュールの名をベルナールはこれまで一度も聞いたことなど無かったし、存在さえも知らなかったからだ。

父と母はまた視線を交わし、何かを確認し合う。

そして兄にまで視線を送ったあと、アランデュール王子の出生について話し出した。

「陛下はエリザベーラ王妃との結婚前に、美しい少女に手を出したのだ……」

アランデュール王子の母アリスは、クラウド侯爵家の娘付きのメイドだった。

とても美しい娘だと評判だった為、当然当時王子であったイアンディカスの目に止まり、手を出されてしまった。

ただのメイドが王子の誘いを断れるはずもなく、気が付けばアリスは身籠っていた。

仕方なくアリスをクラウド侯爵家の養女にし、イアンディカスの側妃にすると決定したのだが、エリザベーラ妃の実家であるションシップ侯爵家がそれを許さず、当然プライドの高いエリザベーラ妃本人が許すはずもなかった。

なのでアリスは立場の弱い妾妃となり、生まれたアランデュール王子は第一王子ながらも、まるで存在しないかのようにひっそりと育てられた。

アランデュール王子の祖父にあたる、前王アランジュールが健在だった時はまだ良かったのだが、亡くなってからはアランデュール王子の扱いは酷いものに変わっていった。

王子としてはあり得ないことに、今現在五歳になるアランデュール王子には側近となる者は誰もいない。

その上母親であるアリスは出産時に無くなり、クラウド侯爵家は「弱い妃を押し付けた」と他貴族と王にまで責められ、強く出れないらしい。

それに何よりもアランデュール王子に後ろ盾が出来、味方が出来ることを、王妃であるエリザベーラと、その後ろ盾であるションシップ侯爵家が許さないのだ。

「アランデュール王子殿下には、心から守ってくれる者が必要なのだよ……」

だからと言ってクラウド侯爵家の関係者をアランデュール王子に付けることはもう叶わない。

アリスを無理矢理養子にし守った件だけで、クラウド侯爵家はションシップ侯爵家を筆頭に、他貴族からも妬みを買っている。

つまりアランデュール王子の傍に置けるものは、貴族として可もなく不可もないものでなければならないのだ。

全く力を持たず、どうにでも出来る存在である者が当然望ましい。

だからこそ力のない子爵家の次男であり、使い捨てが出来るベルナールに白羽の矢が立った。

そしてそんなベルナールだったからこそ、アランデュール王子の側近に選ばれてしまったのだと、両親は苦渋の表情を浮かべ話してくれた。

「つまり……アランデュール王子に何か有れば、私は共に処分される可能性がある……ということなのですね?」

両親と兄が深く頷く。

その顔には「それだけでは済まないだろう……」と 書いてあるようだったが、両親も兄も「御家断絶になるだろう」とは口には出さなかった。

貴族にしては人が好過ぎるベルナールの家族は、当然アランデュール王子に同情していた。

出来る事ならば手助けしてあげたいが、息子が側近になるとなれば話が違う。

愛する子供には自ら危険な場所へと飛び込んでは欲しくない。親なら当然そう思うだろう。

命を懸けた仕事になる。

ベルナールにもやっと両親と兄の曇り顔の原因が理解できた。

「ベルナール……断ることは、可能だぞ……」

子を思う父はそう言ってくれるが、これがもしションシップ侯爵家からの話であれば、断ることは出来ない、ほぼ命令だと言えるだろう。

アジュール子爵家の事を思えば、ベルナールは「受ける」と答えるべきだと分かっていた。

そしてアジュール子爵家の将来を考えれば「受けるべきではない」ことも分かっている。

なので尚更ベルナールはすぐに「はい」とは答えられなかった。

それにあのディランジュール王子の鼻をほじる姿を思い出すと、アランデュール王子を主として敬えるかも疑問だった。

「……父上、お願いがあります」

ベルナールはいつになく真剣な顔で父に問いかける。

「なんだ、何でも言ってみなさい……」

父もベルナールの想いを受け取り、頷いて見せた。

ベルナールは一つ息を吸い気持ちを落ち着かせると、父に自分の望みを話した。

「アランデュール王子に……お会いすることは可能でしょうか?」
「アランデュール殿下に? 返事をする前にか?」
「はい……私はこの申し出を、アランデュール王子にお会いしてから決めたいと思っています……それでも宜しいでしょうか?」

普通ならば子爵家程度の子息が「王子に会ってから側近を受ける」など言い出すことはあり得ない事だった。

それは王族であるアランデュール側が側近を決める事が至極当然であるし、王子の側近という仕事は名誉な事だからだ。

けれど一度の顔合わせも無く、アランデュール本人の意見を聞いた様子もなく、アランデュールの味方としてなんの役に立たないベルナールを選んだであろうこの人選に、ベルナールは怒りを感じていた。

「分かった……聞いてみよう……いや、必ず会えるよう手配しよう……」
「父上、有難うございます。無理を言って申し訳ございませんが、宜しくお願い致します」

子爵でしかない父に無理を言っている事はベルナールも十分に理解していた。

だが安易に受けられない仕事であることも、良く分かっている。

なのでこの時のベルナールは、ディランジュール王子ほど酷い王子でなければ家の為に側近を受けても良いと、そう思っていた。

不遇な王子であるアランデュールへと同情もしていたし、何より何か有った時は家を守る為自分自身が平民になればいいと、そう思っていた。

いずれアランデュールの心の支えとなる忠義者ベルナールは、この時はまだ何の力も持たない、そしてアランデュールに何の想いも持たない、ただの少年でしかないのだった。

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