おはようございます。白猫なおです。
フォローしてくださっている皆様、いつも応援ありがとうございます。
☆や♡、それにレビューやコメント、皆様からの応援が創作の糧になっております。
まだまだ未熟な白猫ですが今後もお付き合いいただけるととても嬉しいです。
それでは愛する皆様に感謝のSSをお贈りいたします。
【ファブリスの一日】
ファブリスの朝は早い。
執事の仕事があるファブリスは、今不在となっているベンダー男爵家の主の部屋へと向かい、先ずは部屋の片づけをする。
そして次に向かうは中庭だ。
そこでは既にディオン、アランがランニングを始め、ベルナールがその後を必死で追いかけていた。
「ディオン様、アラン様、ベルナール様、おはようございます」
「「ファブリス、おはよう」」
「ふぁぶ……はあはあはあ……おは……ましゅ……」
挨拶を終えると、早速剣の稽古が始まる。
ファブリスが作り上げた敵を見立てたカカシのような人形が、ニーナの魔法のお陰でギシギシと音を立てながら動き出す。
巨大なカカシは長い手を振り回し、ディオンとアランに遠慮なく攻撃する。
そしてそのカカシに立ち向かっている二人の隙を突き、ファブリスはボールを二人に投げ込む。
カカシを相手にしながら、ファブリスの攻撃を避ける。
ディオンは嬉々として戦い、アランは無駄な動きを削る様に意識しながら戦っていた。
そんな二人が日々成長していく様が、今のファブリスの喜びでもあった。
そしてベルナールは、その脇で風魔法を使いナイフを的へと投げる練習をしていた。
森でシェリーに魔法攻撃の戦いに負けてから、ベルナールは風魔法の習得に燃えていた。
8歳児に負けるわけにはいかない。
主であるアランの恥になりたくはない。
ベルナールにはそんなの気持ちが強く表れていた。
そして朝食が終わった後はニーナの元へと向かう。
今度はファブリス自身の魔法の訓練になる。
ニーナからは日常の様々な場面で魔法を使う事を教わっている。
掃除もそうだが、お茶の入れ方や、物の整理整頓など、ニーナに教わる様になってから自分の魔力も、魔法を使う力も、数段強くなっている事を実感している。
この歳になって成長出来るとは……
ファブリスには驚きしか無かった。
「今日は高い位置の掃除を致しましょうか、ではお姉様、先ずは挑戦してみましょう」
「うん、ニーナ任しといてー、あた……私頑張るよー」
シェリーは良い返事をすると雑巾を空中へ飛ばし、高い窓を器用に拭いて行く。
その姿を見てベルナールの腕前では、まだまだシェリーには敵わないだろうとファブリスは思った。
なんでもシェリーは自室で自分を飛ばし遊んでいるらしい。
いつかニーナと空のお散歩に行くため、とシェリーは楽しみながら修行をしている様だ。
ベルナールとの差は広がるばかりかもしれない……
お喋り大好きなシェリーからその話を聞き、ファブリスはそう感じてしまった。
そして夜寝る前は、ニーナの部屋へと向かう。
最近では今日合った事の報告が毎日の習慣になっていた。
そしてニーナの可愛らしい笑顔が見れる、それはファブリスの至福の時でもあった。
「ロイクがニーナ様のお陰で野菜の成長が例年以上だと言っておりました」
「そう、それは喜ばしい事ね」
「それからザナが染み抜き魔法が完璧になったと喜んでおりました」
「ええ、ザナは頑張っておりましたもの、流石ですわ」
「それとエクトルがニーナ様の仰ったレシピで元気になるジャムを作れたと言っておりました。明日の朝食で出すとの事です」
「まあ、それは楽しみね」
フフフ……と笑うニーナは年相応だ。
喋らなければ6歳の幼い少女だろう。
けれどニーナの中にはたっぷりの愛情が詰まった聖母のような心がある。
ファブリスは心救われた時から、ニーナの笑顔を見るだけで心癒されるようになった。
ニーナ様に一生ついて行こう。
ファブリスはそう思っていた。
「報告は以上です。では失礼いたします」
「あ、ファブリス、待って頂戴」
ニーナはファブリスを呼び止めると、ハンカチを渡してきた。
そしてそのハンカチにはニーナの手によって美しい刺繡が施されていた。
「いつもベンダー男爵家の為に有難うございます。大切なファブリスに贈り物ですわ」
「……ニーナ様……」
「フフフ……癒しの加護を刺繡しておきましたから疲れも取れると思うのですよ、枕元に置いて使ってみて下さいね」
「……はい……有難うございます。一生大切にいたします……」
闇で生きて来たファブリスにとって初めてのプレゼント。
何の見返りも求めないニーナの愛。
ファブリスは益々ニーナに傾倒し心酔していく。
そんなファブリスの活躍は、いずれベンダー男爵家にとって復興の礎になる。
だがそれはまだまだ先の話となるだろう……
ベンダー男爵家の立て直しはもう暫くかかりそうだった。