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愛しの魔王様。完結いたしました。

皆様、こんばんは。白猫なおです。
いつも温かい応援を頂き有難うございます。
愛しの魔王様、昨日無事完結いたしました。ここ迄お付き合いいただいた皆様、ありがとうございました。この場にてお礼申し上げます。感謝を込めましてSS投稿させて頂きます。宜しければお楽しみくださいませ。m(__)m

【ウイステリア侯爵邸でのひと時】

エヴァリーナとランヴァルドは婚約の報告の為、大国にあるエヴァリーナの実家、ウイステリア侯爵邸に来ていた。

そしてウイステリア侯爵、夫人、エヴァリーナの兄と向かい合い。

エヴァリーナとランヴァルドは楽しいひと時を過ごしていた。

「ランヴァルド様はエヴァリーナのどこが気に入られたのでしょうか?」

ウイステリア侯爵は強国の王であるランヴァルドが、何故一国の家臣の令嬢でしかないエヴァリーナの事を気に入ったのか素直に気になった。

そんなウイステリア侯爵の何気ない質問に、ランヴァルドは熱のこもった答えを返した。

「エヴァリーナの魅力は全てだ。その存在自体が尊く素晴らしい。私にとってエヴァリーナは女神であり、私を照らす光でもある。エヴァリーナがいるから私は幸せであり、エヴァリーナが居なければ私には生きている価値が無くなる。そう思わせるほどエヴァリーナは清く美しい素晴らしい女性だ」

ウイステリア侯爵家の家族は皆驚いた。

まさかこれ程ランヴァルドがエヴァリーナを好いてくれているとは、想像もしていなかったからだ。

しかも傍にいるクリスの様子を見れば、これがランヴァルドの嘘偽りのない言葉だと分かった。

見つめ合うエヴァリーナとランヴァルドを見て、二人が相思相愛で有る事が良く分かった家族だった。

「あー……ランヴァルド様、娘を愛してくださって有難うございます……」
「ん……当然の事だ」

ウイステリア侯爵は今度は頬を染め、恥ずかしそうにしているエヴァリーナに話しかけた。

エヴァリーナの気持ちも確認したかったからだ。

「エヴァリーナはランヴァルド様のどこを好きになったのだ?」
「はい、ランヴァルド様はとてもお優しくて、それに頼りにもなりますし、お美しいですし、私には勿体ないぐらいの方なのです……それにラルフ様が仰るにはムッツリだとか……その……少し難しい言葉で意味は良く分かりませんでしたが、どうやら魔国では素晴らしい方に向ける言葉のようなのです……」
「ほう、ムッツリ? 初めて聞く言葉だな……」
「ムッツリですか? 私も初めて聞く言葉ですわね」
「私もです。ラルフ殿、ムッツリとはどういう意味でしょうか? 是非後世の為にも、我がウイステリア侯爵家の者にお教えください」

この後ラルフは言葉を失ってしまった。

のらりくらりと何とか質問をかわし、後日ウイステリア侯爵と兄のエーヴェルトにだけは本当の意味を教えた。

二人が大笑いしたことはエヴァリーナとウイステリア侯爵夫人には内緒だ。

エヴァリーナがムッツリの意味を知るのはまだまだ先の事だった。



【魔王様の幸せ】

魔法の国は王妃の出産を迎え、大騒ぎになっていた。

三人目の子の出産。

という事で王妃であるエヴァリーナは落ち着いた様子だったのだが、その夫で、魔国の王であるランヴァルドはそうでは無かった。

陣痛が始まったエヴァリーナの痛みに耐える姿を見ると、自分が変われたらと思い胸が痛む。

一人目、二人目と無事に生まれたが、三人目も母子ともに無事とは限らない。

子供やエヴァリーナに何か有ったら……

そう考えるだけでランヴァルドは、出産部屋の前でうろうろとするしかない自分を呪いたくなるほどだった。

「ランヴァルド、落ち着けって、取りあえずここに居ても邪魔だ、部屋へ戻ろう」

ラルフの言葉に無言で首を振る。

邪魔だろうが何だろうが、もしエヴァリーナに何か有った時には、すぐ対処出来る場所に自分が居たかった。

出来れば出産する部屋にいて、全ての痛みからエヴァリーナを守って上げたいぐらいだった。

けれどランヴァルドの魔法の影響が子供に何かしらの影響を与えてはいけないと、産婆に放り出されてしまった。

なのでせめてエヴァリーナを感じられるこの場に居たいと、ランヴァルドはてこでも動かない気持ちでいた。

「ランヴァルド様、エヴァリーナ様は大丈夫でございますよ。名医も側におりますし、腕のいい産婆も側におります。それに妊娠中も何の問題もございませんでした。ですから安心して下さい」

クリスの言葉に頷く。

そうランヴァルドだって分かっている。

分かっているのだが……

それでもエヴァリーナの姿が見えないと、不安で胸が押しつぶされそうだった。

結婚してから益々ランヴァルドのエヴァリーナへの執着は重い物になっていた。

それをまたエヴァリーナが嬉しそうにするものだから歯止めが利かない。

食堂でも、執務室でも、寝室でも、常にランヴァルドとエヴァリーナは一緒に居る。

なのでこの出産の時でも傍にいたくて仕方がないランヴァルドを、皆見守るしかないのだった。



それからどれぐらい廊下をうろうろとしていただろうか、出産部屋から赤子の無く声が聞こえてきた。

暫くすると、産婆が扉を開けてランヴァルドに声を掛けてきた。

エヴァリーナが会いたいと呼んでいると言われ、ランヴァルドは飛び出すように部屋へと入っていった。

「マオ様……」

少し疲れている様子ながらもエヴァリーナがランヴァルドに微笑みかけるその姿は、どんな女神よりも美しかった。

エヴァリーナは生まれたばかりの赤子を抱き、ランヴァルドを自分の傍へと呼び寄せた。

幾つになってもエヴァリーナは可愛くて魅力的な女性。

ランヴァルドの心の中を占めているのは、いつまで経ってもエヴァリーナだけだった。

「マオ様、貴方によく似た男の子ですわ……」

エヴァリーナの言葉に「……ん……」と頷く。

髪の色はランヴァルドの黒髪その物だった。

けれど瞳は形も色もエヴァリーナによく似ていた。

「可愛い子だ……エヴァ、ありがとう……」
「マオ様、私こそ、この子に無事に出会えたこと感謝いたします。マオ様が支えて下さったからこそ、安心して出産に望めたのですよ……」

ランヴァルドは愛しい妻と、生まれたばかりの我が子を抱きしめた。

エヴァリーナと出会えたからこそ、今これほど愛に溢れた幸せな生活を送ることが出来ている。

「エヴァリーナ、愛している……」

それはランヴァルドの心からの言葉だった。



こうして魔国では新しい王子の誕生に国中が湧き。

先の子達同様に、この王子も周りから愛されて育つことになる。

魔王様の幸せは、日々増えるばかりのようだった。

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