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新規連載始めます。

おはようございます。白猫なおです。(=^・^=)
いつも温かな応援ありがとうございます。
新規連載小説を始めるため、魔法使いの子育て奮闘記は月曜日と金曜日投稿に暫くさせて頂きます。番外編の方は次回から三回程これまで書いたSSを投稿し、次回は6月1日に投稿いたします。
皆様これからもよろしくお願いします。

※新規連載小説【愛しの魔王様】【悪役令嬢は推しを愛でる】夜八時投稿します。


【マトヴィルSS】

 マトヴィル・セレーネ。

 その名を聞くと多くの者が伝説の武術家であり、英雄であり、アラスター様の一の供だと言うだろう。

 けれど彼の本来の姿は料理人だ。

 それを知る人は一部の人間だけになる。

「ココ、キキ、今日の弁当だ。森へ行くときは気を付けるんだぞー」
(マト スキ オベントウ スキ)
(キキモー オベントウ ダイスキー)

 最近のマトヴィルはキキとココに毎日お弁当を作っている。

 二人は森へ遊びに行くのが日課になって居て、ベアリン達と森の見回りをした後は、森の中で一日中遊んでいる様だ。

 銀蜘蛛のココが居ることで森の中は落ち着いているし、魔獣たちもキキとココのお陰で上手く間引くことが出来ている。ここ数十年の中でディープウッズの森が凄く安定している事が良く分かる。全て二人のお陰だろう。

 ただし、アグアニエベ国寄りの森の中は別だ。

 あちらからは不穏な空気と、強い魔素を感じるため、キキとココにもアグアニエベ国側には近づかないように強く言い聞かせてある。

 まあ、これだけ逞しく成長した二人なら、どんな魔獣と出会っても問題無いとは思うのだが、そこはマトヴィルもこの二人が可愛いため少し過保護になっているのだった。

 二人がご機嫌で出かけたため、今日のディナーに向けての準備を始めていると、何故かコソコソとしながらこの城の姫であるララがキッチンへとやって来た。

 そしてマトヴィルを見つけるとホッとしたような可愛い笑顔を浮かべた。

「マトヴィル、一緒に料理をしても良いですか?」
「ガハハハッ、勿論だぜ、ララ様が手伝ってくれたら百人力だー」
「フフフ、有難うございます。でもそれだと何だか凄く力持ちの女の子みたいですね。そんな事は無いのにねー」
「ガハハハッ、ララ様は冗談もうめーんだなー」

 ララとそんな話をしていると、いつもアラスターの事を思いだす。

 マトヴィルが料理をする時はいつもアラスターは手伝ってくれていた。

 いや、マトヴィルに料理を教えてくれたのはアラスターだと言っても可笑しくはない。

 マトヴィルはエルフにしては珍しい大家族の家の子で、子供の頃は常にお腹を空かせていた。

 いつしか勝手にエルフの森に行っては魔獣を狩り、自分で捌き、料理をする様になっていたが、アラスターに会って初めて香辛料などを知り、料理の奥深さに気が付いた。

 それからマトヴィルはアラスターやエレノア、それにアダルヘルムと世界中を回り、色々な食材を集め、より一層美味しい物を手に入れる楽しい旅をした。

 あの頃が今も自分の人生で一番楽しかった時期では無いかと思って居た。

「マトヴィル、後数年で一緒に旅ができますね。美味しい物を沢山探しましょうね」

 そんな事を知ってか知らずかララがマトヴィルと旅に出たいといつしか言うようになっていた。

 ララが生まれてからと言うもの、マトヴィルの料理の腕前は益々向上したと言える。ララは不思議な子でマトヴィルの知らない料理を沢山開発し、皆を驚かせた。

(まさかこの年になってから成長出来るとは思って居なかったぜ)

 ララはアラスターにそっくりでいつもマトヴィルを驚かせ笑わせてくれる。

 そう、ララが居るからアラスターがいたころと変わらないぐらい今は毎日が楽しい。

「ララ様、旅に出るならきちんと学校を卒業しなけりゃ―ダメですぜ。そう言えば今日はクルトの授業じゃー無かったんですかい?」
「えっ……あー、うん、そうなんだけど……」

 急にララの料理をする手がもたつきだした。

 クルトとの授業はララが苦手な分野らしく、余り進んでいないようで、良くクルトが愚痴をこぼしているのを知っている。

 ララはエレノア似の美貌を持っているので、心配性のアダルヘルムが異性との距離の取り方をララに覚えて欲しい様だが、どうしてもそれが上手く行かないようなのだ。

 そこはアラスターの娘なのでしょうがないとマトヴィルは思うのだが、何分ララは女の子だ。どうやらまあ良いかでは済まないらしい。

 アダルヘルムやオルガたちにそう言われてしまうと、こればかりはマトヴィルも見守るしか無かった。

「ララ様! 何故マトヴィル様の所に居るのですか! トイレに行くと言ったのは噓だったのですかっ?!」

 クルトがオルガのような怒りの表情を浮かべてキッチンへとやって来た。
 
 その顔を見てララだけではなく何故かマトヴィルまでも一瞬ゾクッとした。
 
 ララ曰くあれは鬼の形相というものらしい。

 確かにクルトの頭には魔獣のような角が見える気がしたマトヴィルだった。

「ク、クルト、えーと……そう! お茶を入れて持っていこうと思ったのー」
「ララ様はお茶を入れるのに包丁を使われるのですか? 下手な言い訳は聞きませんよ」
「ふえーん、クルトー、ごめんなさーい」

 ララはクルトに抱えられ、キッチンから連れられて行かれた。

 けれど去り際にマトヴィルに笑顔で小さく手を振っていたので、まったく反省していないのがそれで良く分かった。

「全くどこまでアラスター様に似てるんだか……」

 呆れた様な事を言いながらもマトヴィルの口元は緩んでいた。

 今は毎日が賑やかで楽しい。

 そうアラスターが居た時に負けないぐらいに……。

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