第十二章今日から始まります。
タイトルはスター商会王都店と闇ギルドです。引き続きお付き合いいただけたら有難いです。(=^・^=)
いつも応援して下さる皆さまへ感謝の気持ちを込めてSS贈ります。
【ピエールSS】
ドルダン男爵家の五男坊、ピエール・ドルダンは今最高に幸せだった。
ユルデンブルク騎士学校を卒業して、友人であるララ様とセオのお陰で有名なディープウッズ家の屋敷に滞在することが出来たのだ。
歴史大好きなピエールには夢のような出来事だった。
朝、目覚めたらまずはディープウッズ家の屋敷内にある図書室へと向かう。
前日に借りた本を戻し、今日読む本を選ぶ、この屋敷の図書室はドルダン男爵家ともユルデンブルク騎士学校とも比べられない程の沢山の本と、そして魅力的な本が揃っている。
ピエールは一週間ぐらい図書室に籠もりたいとも思ったが、ディープウッズ家の屋敷には他にも興味を引く事が沢山あった。
庭に行けば見たことも無い花が咲き、地下室には歴代のディープウッズ家の当主の武器や絵画などもあった。
それになのよりも、この屋敷自体が歴史ある建物でピエールの興味を引いた。
たまに這いつくばって廊下の絨毯の模様をじっくり見ていると、一緒にお世話になっているトマスに白い目で見られる事もある。トマスに注意を受けてもこの屋敷には秘密が一杯で、ピエールの気持ちは抑えられなかった。
「ピエール君、今日はこの前のお話の続きを聞かせてくれる?」
休みの日は卒業パーティーで仲良くなったカーヤと一緒に過ごすことが多い。
カーヤは家庭の事情で学校にいけなかったらしく、ピエールが話す歴史上の人物の話に夢中になってくれる。
特に姫騎士であった。ルナ姫の物語が好きで、良く話して聞かせてあげる。
目をキラキラさせてピエールの話を聞くカーヤの事が、ピエールは可愛くて仕方がなかった。
(本当に今とっても幸せだ……)
ふと実家の事を思いだした。
父親であるチャーリー・ドルダンは隠居して、今は離れでひっそりと暮らしているらしい。
ディープウッズ家の姫であるララ様に暴力を振るおうとしたのだそれも当然で、本来ならば極刑の上、御家取り潰しでも可笑しくない位の事だった。
それをララ様がレチェンテ王にお願いをして穏便に済ませてくれたのだ。
(ララ様は、僕が気にしない様にと心を砕いてくれたんだ……)
年下なのにララ様はまるで母親の様だとたまに思う事があった。
ピエールの食事や体調、それにお小遣いの事までララ様は常に心配してくれて、スター商会や護衛の仕事を手伝うアルバイトを用意してくれた。
早くに母親を亡くしたピエールは、そんな母親のようなララ様の気遣いがとても嬉しかった。
「兄上に手紙を書こうかな……」
ドルダン男爵家を継いだ兄に、アルバイトのお金を送るとともに、今の自分の幸せを書いて兄を安心させようとピエールは決めた。
(兄上達にも幸せになって貰いたい……)
父親が頑なになっていたのも母が亡くなったせいだと知っているピエールは、何をされても父親の事を嫌うことは出来なかった。それは今も気持ちは変わらない。
「兄上、僕は今とても幸せです……っと」
最後にそう手紙に書き終えた後、ピエールは長い休みが取れたら一度実家に顔を出そうと、そう決めた。
父に会い、兄たちに会い、今の自分を見て貰おうと、ピエールはこの国を守る魔石バイク隊になる為の訓練をもっと頑張ろうと決意した。
胸を張って故郷に帰る為に……ピエールの奮闘は続く。