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「あるいは深層に、遙かなる地平を夢見て」に☆レビューをいただきました! & 異世界言語の話

「あるいは深層に、遙かなる地平を夢見て」に☆レビューをいただきました!

 こんなに☆をいただける作品になるとは思っていなかっただけに、余計に嬉しいです!
 
 ありがとうございます!
 ぼくの体の半分は皆様への感謝でできております。
 
 読み手を選びそうな作品ですが、少しでも喜んでいただけていたなら幸いです。
 
 ▽
 
 恒例の裏話ですが、今回は異世界言語について語ってみたいと思います。
 
 と、その前に、知っている方も多いでしょう、Fafs F. Sashimi 先生のこの作品を紹介させてください。

「異世界転生したけど日本語が通じなかった」
 https://kakuyomu.jp/works/1177354054883808252
 
 ぼくはこの小説を「小説家になろう」で読み始めたので、いわゆる「ハードモード」のユーザーです。

 異世界言語をここまで突き詰めた作品は、もはや J・R・R・トールキン先生の「指輪物語」くらいじゃないでしょうか。
(余談ですが、筆者は「クウェンヤ」を習得しようとして挫折した経験があります)

「異世界なんだから言語も違うはず」派閥の人にとって、この作品が福音になるかどうかは微妙なところですが(挫折者も多いと聞きます)、ぼくは個人的にものすごくテンションが上がりました。

 なにこれ! 本当に異世界を旅してるみたいじゃないか!

 ▽
 
 上記は特殊な例で、異世界ファンタジーは日本においては日本語で書かれるのがふつうです。
 転移者も転生者も異世界人も、みんな日本語で会話します。

 中には「なぜ日本語が使われているのか」について丁寧な説明があったりもします。

 あるいは「登場人物には翻訳されて日本語に聞こえる」「異世界語だけれど、読者向けに日本語に翻訳されている」などいくつかパターンがあります。
 
「ハイジ」は「読者向けに異世界語を翻訳」パターンですね。
 ハイジもリンもカスティ語で会話しています。
 この場合、日本語的なダジャレや韻(rhyme)なんかが使えなくなるのが難点です。

「登場人物には翻訳されて日本語に聞こえる」作品はかなり多いです。
 不思議翻訳による齟齬をうまく使った作品もあって、すごい言語センスだなぁと思います。
 
「日本語である理由」パターンは説得力のある設定を考えるのがかなり難しそうです。
 過去に転移してきた日本人が広めたなどの理由があっても、文化的なバックボーンがちがうと通用しない言葉も多くありそうですし、書きながらめちゃくちゃ頭を使いそうです。

 どれも、作家さんにしてみれば一長一短があると思います。

 だからこそ「異世界転生したけど日本語が通じなかった」は「異世界語を作って読者に習得させる」という、一番面倒臭い、狂気じみた、執念さえも感じる最高のエンターテイメントだと思います。

 ▽
 
「あるいは深層に……」ではそこを悩みまして、結局ぜんぶの説明を省きました。

 Layer, Depth, Base Camp などの英単語が頻出しますし、単位はメートル法です。

 手抜きではなく、一応これには意味が二つほどあります。

 まず、山岳文学をモチーフにしているからというのが一つ。
 高山アタックでよく使われるワードを使うことで、少しでも臨場感を味わってもらいたかったのです。

 もう一つは読者さまがピンとくる単位でないと話が成立しなかったからです。 
 特に深層だと「えーと、100マーディということは、だいたい230メートルのことか」みたいに換算をしながらですと、かなり臨場感を犠牲にします。
 ですので、ここはバッサリ割り切ってメートル法を採用し、言語は英語で、なぜそうなのかの説明は省きました。

 もしかすると違和感があるかもしれませんが、どうぞご容赦ください。
 
 ▽
 
 ただ、例外もあります。

 一つはお金の単位です。
 流石に円やドルだと異世界感がなくなりますし、特定の国の貨幣単位を用いるのは単純におかしいため、ハリムという架空の貨幣単位を考えました。
 ちなみに 1ハリム = 1円です。
 もちろん、物価が違いますので一概には言えませんが、平均所得ベースでの換算となります。
 
 
 もう一つの例外は、読んでいただいている方にはお馴染みの「デプス」です。
 この作品には「8000デプス 級」「あとわずか 100デプス ほど」などの表現が頻出します。

 これについては正確な長さを設定していません。

 あえて言えば、1880年代にジョージ・マロリー(人類初のエベレスト登頂にチャレンジした伝説の登山家)がエベレストを初登頂する難易度を基準としています。
 
 つまり「当時の装備と技術でエベレスト (8849m) に登頂する難易度」 = 「迷宮世界の最新の装備で L73 (8849デプス) に到達する難易度」です。

 マロリーは人海戦術と酸素ボンベを用いてアタックしました。
 それを「ボンベなし」「単独行」で落とそうというのがクラウディオの挑戦というわけですね。
(この辺についてはまた別の機会に詳しく書きます)
 
 L73 は横方向に長い階層ですので、デプス = メートルだとあまりに簡単すぎるので、最低でも数倍くらいはありそうですが、検証が不可能なため、このような設定になりました。
 
 ▽
 
 この話、そのうち物語の中で説明しようと思っていたのですが、どうにもうまくいかなかったので、近況ノートに放流してみました。
 
 興味がある方は少ないかもしれませんが、解像度を上げる材料にしていただければ幸いです。

7件のコメント

  • そう、こういった設定のお話なんかは物語の「解像度」を上げてくれますよね。

    私は文章を目で追うと同時に映像化を試みてる気がしますが、それがスムーズな文章、細かい所に目を向けても違和感ない文章が大好物です。
    雰囲気もですが、音が聞こえてきたり、吸い込んだ空気の密度が感じられたりすると最高。…苦しくても。

    えっと、つまり私は興味深いです!楽しいです!
  • ファンタジー世界の言語と単位のお話、わかるーと拝読しておりました。
    オリジナルのアレコレを詰め込みたいのは山々ですが、説明が……。
    でもいつか「言葉が通じない系」の異世界転生を書いてみたいという野望はあります。

    デプスのお話が特に興味深かったです。
    主なところはおなじみの表記を使用して読みやすくし、オリジナル単位も混ぜることで、ファンタジー色が出ている。
    職人技だ!
  • > ひかげねこさま

    喜んでいただけて嬉しいです!
    作中の単位の話なんて地味すぎるかなと思いながら投稿しました 笑。

    映像化されながら読むのわかります!
    気に入った作品は全部そうです。

    最後の「苦しくても。」の一言、ご馳走様です。嬉しいです。

    近況ノート、もっと前から活用しとけばよかったなーと後悔しているカイエでした。
  • > 月子さま

    「言葉が通じない系」! またすごいハードルを……!

    オリジナルの単位を考えるはすごく楽しいんですけど、あとで自分で忘れて「えっと、単位なんだっけ」ってなりませんか。
    ぼくだけかもしれませんが。

    職人技と言ってもらえて嬉しいですが、流石にちょっと褒めすぎかと(踊りながら)。

    ただ、異世界を書くなら必ず必要になる設定ですよね。
    掘り下げていくと面白いことができそうな気もします。

    次に異世界ものを書くときは、もっと丁寧に考えてみようかな。
    その前に月子さまの「言葉通じない系」を楽しみにしております!(プレッシャー。
  • ノートの更新、早! 笑

    オリジナルの言語は憧れますねえ。
    でも創るとなるとストイック過ぎる(°_°)
    デプスの単位は分かりやすかったです。臨場感は抜群!

    『幸せすぎて怖い』って救難信号をキャッチしたので参上したんですが、もしや、お気づきでないのか……。

    憑いてますよ、背後に。ディメンターが。
    そういえば誰か召喚してたような。

    対処方法はご存知ですね?(後すざりしながら)
    狼人間特製チョコレートを此処に置いときますんで、では(о´∀`о)
  • > 蒼翠琥珀さま

    >> ノートの更新、早!

    今のところ、☆をいただいた時と、なにかの告知の時には更新するというルールです。
    ものすごくありがたいことに、☆を連続で頂いてしまいまして、いそいそと文章をしたためた次第です 笑。

    >> 憑いてますよ、背後に。ディメンターが

    こわっ!
    「オブリビエイ糖チョコ魂C」を一ついや三つお願いします!(濃いめのコーヒーを淹れながら
  • そう来たか! トリプル・トリップ!
    (失礼しやした。笑)
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