主催者様の作品を読みました。
その批評になります。
■対象作品
幼馴染と3人の異世界性生活/大津 千代 様
https://kakuyomu.jp/works/1177354054882576143■はじめに
当記事は一人のアマチュア物書きの意見であり、的確でない事を言っている可能性があります。
また、他所でもレビュアーめいた事をしていた過去がありますが、
今のところ小生のアドバイスを受けた人の長編エター率は100%です。
また、小生は異世界転生/転移ものには疎いので、
そのジャンルにおいてのお約束などの部分に無粋なツッコミを入れている可能性もあります。
そのへん念頭に置いて、内容を取捨選択して読んでください。
■まず結論
忌憚なく簡潔に申し上げれば、個人的な感想としては
「やや描写不足はあるものの、9話までは決して悪くなかった」
です。
客観的なデータもこの感想を裏付けています。
PVを1話から順に見ていくと、11話で初めて100を下回り、
「応援する」も、最終話を除くと、14話以降は一切押されていない。(2017/5/22現在)
これは決して偶然ではないと考えます。
■全体として
本作の本質は、瑛斗が2人のヒロインとイチャついてる部分だと断言します。
異世界転移要素だのバトル要素だのは、イチャつくためのイベントを起こす大道具にすぎません。
これ自体は決して悪い事ではありません。
主題の部分を重点的に書く以上、それ以外の部分は都合のいい大道具でも何ら問題はないのです。
が。
その大道具が少々チープすぎる事と、はしばしの描写不足により、
読者が共感するのが少々難しい文章になってしまっている部分が散見されます。
正直言って、勿体無い。
ヒロイン2人も(描写不足になってる部分の行間をある程度読めば)可愛いんですよ。
もっとキッチリ作り込めば、良作になりえるだけのポテンシャルはあると思われます。
■具体的にどこがダメか
<2話>
>アリスの周りにいる3人の警備兵らしき人たちが手に持っていた銃を瑛斗と葵に向けいる。説得するのを諦めた瑛斗は降伏の意味で両手を上に上げようとした。しかしそれが警備兵達には‘‘どこから来た人かわからない人が攻撃を仕掛けて来た’’と勘違いをしてしまい、警備兵の1人が銃の引き金を引いてしまった。
⇒地の文の視点がブレまくっているため、非常に読みづらくなっています。
-----改変例ここから-----
アリスの周りにいる3人の警備兵らしき人たちが手に持っていた銃を瑛斗と葵に向ける。
瑛斗は説得を諦め、抵抗の意思がない事をアピールするつもりで両手を上に上げようとした。
しかし、
「貴様、何のつもりだ!」
"動くな"と言われたはずの瑛斗の行動に、警備兵は険しく叫ぶ。
そしてその指は、銃の引き金を引いた。
-----改変例ここまで-----
<3話>
>「銃弾、取れたよ。食べる?」
⇒冗談だとしても、人の目の前に血まみれの銃弾を見せて言うのは悪趣味すぎます。
アリスが他人の痛みがわからないタイプの超箱入りお嬢様であるなら辛うじて納得できなくもないのですが、そう読者に認識させられる描写はなし。仮にあったとしてもヒロインキャラとしては減点行動。
せめて警備兵が勘違いで撃ってしまった事を真摯に謝罪すべきでは。
さらに言うなら少なからずエロコメ風味の作品なのですから、手当てしてる最中におっぱいのひとつも押し当てるべきでは!
<5話>
>そう言った葵だが嫉妬しているような怒っているような感じがした。アリスにはそう言う関係の男の人はまだいなかったのだった。この頃から実はアリスは密かに瑛斗に想いを寄せていたのだった。その事はアリス本人以外知らない。
⇒完全に"説明"になってしまっています。"描写"しましょう。
せっかくヒロインの可愛さアピールできる箇所なんですから。
ついでに言うと、地の文の視点もブレてます。
-----改変例ここから-----
葵は嫉妬混じりに、憮然とした表情を浮かべた。
アリスは"奪ったりはしない"と言った――が、それがどこまで信じられる言葉か、葵は計りかねていた。
アリスのあの顔。
瑛斗を見つめる、どこか熱を帯びたような瞳。優しさと憧憬が入り混じったような微笑。
あれは、初めての恋に心を踊らせている女の子のものだ。
瑛斗が気づいているかはさておき、葵がそれを察知できないはずもなかった。
自分も、同類なのだから。
-----改変例ここまで-----
<10話>
最大の問題児。この回があったからこそ、小生は★を投げる事を躊躇しました。
>「そういう事…だね。なるべく戦わせないようにするけど…人数的に…もしかしたら…」
⇒2人いればどうにかなる戦力差なんでしょうか。
せめて"異世界から来た人は例外なくめっちゃ強い"みたいな前フリを入れてくれませんと。
>正直2人は急展開過ぎて驚いていたが、対人戦は向こうの世界ではやった事が無く少しだけワクワクしていた。
⇒なんでワクワクするんでしょうか。戦争でしょ? しかも相手はモンスターとかじゃなくて人間でしょ?
せめて異世界に来てゲーム脳全開になってテンション上がってるとかの描写が事前にあれば、まだしも納得できなくもないんですが。
<11話>
>剣がキラリと光る。瑛斗は謎のワクワク感が湧いてきた。
⇒これから対人で戦争やるっていう時にワクワクされると読者的には共感しづらいです。
-----改変例ここから-----
剣の刃がキラリと光る。
磨き抜かれ一点の曇りもない刃は、芸術品のように美しく、それでいて武器としての力強い鋭さを感じさせる。
――格好いい。
ゲームの画面の中の、ある種の憧れだった武器が、手の中にある。その事実に、瑛斗は密かな興奮を抱いていた。
人を傷つけるためにそれを手に取っているのだ、という事も一瞬忘れてしまうほどに。
-----改変例ここまで-----
>葵は露出の多めの防具を選んだ。
⇒なんでそこでもっと克明に描写しないんですか!!!!!!!!!!
これヒロイン可愛いえろいやったーが一番の見どころな作品ですよね!?
>「葵…そんな装備で大丈夫?」
>「うん。大丈夫!問題ないよ」
>人は某ゲームに出て来る某、人たちのようなやり取りをしていた。
⇒必然性なく版権作品のネタを入れるのは、一次創作としてのアイデンティティを危うくするのでやめましょう。
※小生も拙作でスラムダンクの名言を引用してたりするので、若干ブーメランな部分ありますが……
>3人は数時間、アリスの指導を受けた。
⇒この書き方だと指導を受ける人数が3人になってしまいます。
<15話~18話>
瑛斗がわりとすんなり人を殺してるのが何と言いますか、9話までのノリと落差が大きすぎて少々受け入れづらい所です。
せめてモンスターか何かだったら、まだしも忌避感は小さかった気がするんですが。
さらに言うと彼、「サバゲーちょっとやってた」「アリスに剣の指導を少々受けた」程度にも関わらず
自分より多数の兵士を相手に勝利できてしまっているのが、説得力の欠如に繋がっています。
相手は名無しのモブとはいえ、兵士、つまり戦争のプロですよ?
せめて瑛斗専用の魔法の剣を与えるとかなんとか、こじつけでも説得力を与えてあげてください。
<20話>
>朝ごはんを終え、アリスと葵は部屋を離れ瑛斗は部屋に1人きりになってしまった。その間に「向こうの世界では何が起こっているのだろう」、そんな事を考えていた。実際のところ、瑛斗たちのいた世界では2人が行方不明となり捜索等を進めていたが見つからず、結局捜索は中止となってしまっていたのだった。そう思うと、両親にかなりの迷惑をかけてしまっているがもう戻れないのだから、仕方のない事だった。
⇒地の文の視点ブレ。
と言うか、「瑛斗の考え」と「瑛斗が知り得ないはずの元の世界の客観的事実」がごちゃごちゃになってます。
-----改変例ここから-----
朝食を終え、アリスと葵は部屋を離れ、瑛斗は部屋に1人きりになってしまった。
――向こうの世界では何が起こっているのだろう。ふと、そんな事を考えた。
行方不明扱いなっているかもしれない。もしそうなら、両親は警察に捜索願いも出すだろう。
けど、見つかるわけがない。
その世界に自分たちはいないのだから。
そう思うと、両親にかなりの迷惑をかけてしまっている。
でも、もう戻れないのだから仕方がないのだ。瑛斗は自分を納得させるように考え、元の世界の事を頭から追い払った。
-----改変例ここまで-----
<24話>
>「磨く事が得意なフレンズなんだね…」
⇒必然性なく版権作品のネタを入れるのは(略)
<28話>
>「わかったわ。向こうのボスは…来てるの?」
⇒「ボス」はゲーム的表現、もしくはマフィア的表現です。
少なくとも一国の王女が、敵国の国家元首または将軍を指して言う表現としては適切ではありません。
<32話>
戦争している状況下で、敵の「国」へ侵入しているはずなのに、
敵軍に遭遇する事もなく国境を越え、ノーヒントでサタナキアのいる建物を特定しているのはご都合主義すぎます。
15~18話の展開も含めて、やはり「戦争」ではなく「モンスター退治」という事にしておいた方が
「ボスモンスターのいる洞窟に乗り込む」という感じの、この話のスケール感にマッチしたのでは。
<35話>
>「エイト!さ、サタナキアの背中に赤い石があるでしょ!それ、コアだからそれを壊したら…!」
⇒唐突な上、アリスも知ってるなら最初から言ってくれという感じで、後付け設定感が否めません。
そもそも、せっかく直前のエピソードで瑛斗の覚醒シーンあるんですから、弱点の後付け設定に頼らず真っ向勝負の正攻法で倒させた方が格好良かったかと。
<39話>
一国の王女の結婚相手になる以上、もうちょっとこうなんか。
サタナキアを倒した事で戦争を終わらせ、瑛斗が英雄になりました……的な描写を前フリに入れるとかは欲しかったです。
<エロス描写全般>
ぼくはえっちなのはかけません。ので、この部分に関してはノーコメントで。
<その他、細かいけど気になった部分>
・段落のアタマはスペース1個入れてインデントかけましょう。
いやま、WEB小説だと必ずしも入れなくていいんですけど、作者様は1段落がわりと長めの人なので、インデント入れといた方が間違いなく読みやすくなると思います。
・「ベット」⇔「ベッド」表記揺れが多数。
■すげえ野暮なツッコミ
これ異世界に行く必要ありました?
異世界に行ったとしても、バトル要素とか入れる必要なかったんでは?
ぶっちゃけた話、バトル要素とかいらなかった気がします。
むしろその展開に持っていったばかりに説得力が欠如してしまった、そんな印象。
作品の本質はヒロイン2人とのイチャラブなのですから。
いや、異世界転生or転移にしとけばPV稼げるってのはあるんでしょうけれども……
■総括
「手探りで書いた結果、ごった煮になった」的な印象を受けます。
繰り返しますが、イチャラブ部分はそれなりに快適に読めますし、面白くなるポテンシャルはあった作品だと思っています。
ですが、戦争の要素を持ち出し、国家・軍隊・戦争が上手く描けていなかったゆえに世界観に説得力の欠如を生んでしまい、
さらには戦争に参加する事への忌避感の薄さから、主要キャラクターたちの魅力も損ねてしまった印象が強い作品でした。
本当に勿体無い。
このキャラたちで「異国のお姫様が現代日本にやってきたほのエロラブコメ」をやっていたなら、より高い評価になったのではないかという気がします。
■2017/5/23追記
読み返してみるとなんだか思った以上に辛口になってしまいましたが、
当記事で言いたいのは、この作品はダメだって事ではないです。
少なくとも9話までは決して悪くないです。
作者さんはファンタジーや戦闘・戦争よりもラブコメ・エロコメの方が得意だねって事を伝えたかっただけです。
その上で得意分野を伸ばすか、苦手を補うか、今後の参考にしてくださいという意図でした。
最初に言っとくべきでしたね。申し訳ない。