こちらは、小説家になろうのほうで、「和語り企画」という、和もの縛りの企画に参加させていただいた作品になります。
日本昔話みたいな世界が書きたくて、一度は書いてみたかった異類婚姻譚をプラスした物語に仕上げてみました。
以下、
ネタバレ満載な裏話。
ご興味がある方は、スクロールでお進みください。
最初は、硬派な孤高の狼が、戯れに拾った人間の子と交流するうちにほだされる話になる予定でした。
ところがどっこい、半人前のわんこが、ひたすら頑張る話になったのは、下地にあったのが「人魚姫」だからです。
童話系の話を書く時、だいたいモチーフにするものを設定します。今回は「人魚姫」でした。
動物がヒトの言葉を喋るわけですから、そこにはなんらかの働きがあるはずです。
その時に頭に浮かんだのが「人魚姫」だったわけですね。王子様のために、足を手に入れるお姫様。
朧の場合、欲しいのは会話能力なので、人間の言葉。
喋れるようになって、コミュニケーションが成立。
しかし、躰は狼です。触ったら即バレ。
じゃあ、次は人間の身体を手に入れなくちゃ。
そんなふうに頑張る時点で、硬派で孤高な獣の王なわけがなく、半人前のひよっこわんこが、女の子のために奮闘する話になりました。
朧が狼であることを隠すためには、女の子から視覚を奪う必要があります。
現代ならともかく、過去の医療技術で視力の回復ができるとは思えないので、「目が見えない」という設定にするのはやめました。
目隠しが外れた際、朧が見たちせの瞳は、赤色だった。不吉だから目隠しされていたんだ! という展開も最初に書いたんですが、あくまでも「普通の女の子があやかしのお嫁さんになる」話が書きかかったので、それもやめました。
もふもふの狼の首を抱いて、逆プロポーズする女の子が書きたかったんです。
ヒロインの名前は、千年と千歳をかけたかっただけです。はい。
なので、タイトルは「朧とちとせ」でもよかったんですが、字面とリズムがいいので「ちせ」にしました。
朧だけが呼ぶ、特別な名前なのだと思います。
どんなふうに暮らし、どんなふうに生きたのか。
野暮なことは申しません。
御伽話は、「めでたしめでたし」で締めくくられるものなのです。