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思い出はホットケーキの香りと共に。


子供の頃僕は足立区の外れの都営住宅(団地)に住んでいたのだけど、当時は子供の数も多かったので棟ごとに「ソフトボールチーム」を作りトーナメント戦を毎年夏休みにやるという自治会のイベントが小学校校庭で開催されていた。

出場年齢は4年生からで僕は4年生から出てましたが、1回戦負けが続いた。
やっぱり6年生が多い所は強かった。

そして僕らが6年になった年は6年5年が多かったこともあり、順当に勝ち進み準決勝まで行った。
しかしそこで負けてしまい、3位決定戦と、決勝戦は昼を挟み午後に行われるので、子供たちは一旦帰宅し昼食となる。

当時、うちは母がお弁当屋で働いていたので、そんな時間に家にいることはまず、なかった。

それは僕も弟も慣れていたので、いつも適当に冷蔵庫漁ったり、カップラーメンがあれば作ったり、お金があれば商店街で買ってきたり、出前取ったりとやってたのだが、その日は、テンションが上がってたのか、弟と2人で団地の前でキャッチボールをやっていた(笑)


勿論皆は家で昼食中なのだから団地の前には誰もいなかった。


そしたら、たまたま同じ棟の斉藤くんのお父さんが通り、

状況を察してくれたのか、
「あれ、お母さんいないの?」と聞かれ、はい、と答えると、

「3号棟のエースがはらぺこじゃ勝てないな、うちに来なさい」と、諸々、家庭事情、ソフトボール大会、などを認識してくれてる上で、昼御飯に呼んでくれたんだと思う。

そんなわけで、僕らは同じ棟の斉藤くんの家でご飯をご馳走になった。

つか、斉藤くんは、僕より一個上なのでその時は中1だったし、さらにお兄ちゃんは5くらい上だったので、そもそも普段もそうそう関わりもなく、親間の付き合いも無かったし、斉藤くんとも彼が小学生の頃は団地の前で遊んだりはしてたが、同級生ではないのでそんなに付き合いもあったわけじゃない。

まあ所詮、団地の前で無邪気に鬼ごっこ、缶けり、野球サッカー等と遊んだりするのも「小学生」までで、中学に上がると途端に先輩後輩みたいな関係になるから、ほとんど口も聞かなくなるみたいな、そんな感じだったよね。


なので、僕らは緊張しながらも、はらぺこだったからか、ご飯を食べさせてもらい、さて帰るか、みたいなタイミングで、斉藤くんのお母さんが、

「今、ホットケーキ作ってるから食べていきな」と言う。

そして、ほんのり甘い匂いが漂ってくる。

ホットケーキミックスの粉を卵と牛乳でかき混ぜて作る、普通に今でもあるあのホットケーキなんだけど、多分その時初めて「手作りホットケーキ」なるものを食べたんだと思う。

あの味は、ホント衝撃的だった。
美味しかったなあ。

そして僕らはご馳走さまでした!とちゃんと言って帰りました(笑)

午後、3位決定戦は、同級生の沼田くんの劇的なサヨナラスリーランホームランによって勝ち(マジの話)、僕らは3位の盾をもらい帰りました。

斉藤くんのお父さんのおかげですね(笑)

今でもホットケーキの味や作るときの香りがすると、大袈裟でもなんでもなくあの時の事を思い出します。


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