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神田川


 「二人で行った横丁の風呂屋、一緒に出ようねって言ったのに、いつも私が待たされた洗い髪が芯まで冷えて」

 歌謡史に残る名曲「神田川」のワンフレーズです。

 子供のころ銭湯はよく行きました。母や祖父が風呂好きだったし、昔の人からすれば銭湯=生活の一部だったしね。

 決まって長い煙突が立っている銭湯。入り口では靴を脱ぎでっかい木で出来た鍵のついている靴箱に靴を入れ、男湯のトビラを開けると番台があってお金を払って、中に入る。(もっと昔は洗髪は別料金だった !)

 更衣室のロッカーは低くて、アルミで出来た鍵をさしてゴム部分を手首に引っ掛け浴室へ行く。

 正面にはデカデカと富士山の絵があり、湯船はでかめのがデーンと2つくらいあるだけ。 洗い場は青は水で赤がお湯、グイっとおすと勢い良く出てくる。目の前は鏡。サウナや露天はもっと後になると常設している銭湯も増えてきた。

 風呂から上がると決まって、コーヒー牛乳かリンゴジュースを飲んだ。もちろんビンのやつ。

 昔は家に風呂がないというのがごくごく当たり前だったからそこかしこに銭湯はあった。

 親の世代は学生なら下宿。独立したとしても3畳4畳のトイレが共同風呂なしのアパートってのが相場だった。だから生活に当たり前に銭湯が溶け込んでいた。

 「雨が降ると仕事もせずにキャベツばかりかじってた」

 「裸電球」

 「貨物列車が通ると揺れた」

 「月に一度の贅沢だけど、お酒も呑んだ」

 「襖一枚へだてて妹が寝てる」

 「窓の下には神田川」

 当時の情景がストレートに浮かぶ歌詞たち。冒頭の神田川の歌詞は、ただの長風呂の男の話ではない。その時代に男の長髪が当たり前となっていたことを如実にあらわすフレーズだ。

 作詞の喜多条忠氏の当時の実体験をただベースにしただけだろうけど。(実際にアパートの窓を開けると下は神田川というようなところに住んでいたらしい)

 僕はすごい好きなフレーズなのです。
 

 60年代、ビートルズが髪を長髪にし、世間からバッシングをあびるようになる。いわば反体制のシンボルが長髪だったのだ。
 今でこそ長髪くらいでは誰も何も言わないが昭和40年代は、そうはいかなかったのだろう。

 僕は23歳くらいのとき神田川の近くに住んでいた。(新宿区)

 高田の馬場というところから少し離れた場所だった。その界隈は早稲田大学や有名な予備校や高校などが多い、いわゆる学生街だった。学生ローンとか質屋とかゲーセンとか目立つなーというのが第一印象だった。

 駅からすこしはなれると区画整理もされていないような町並が続いてた。

 神田川といっても見た目は普通の川なので味気はない。

 川を眺めながら歌詞の主人公気分になって神田川沿いを歩いたこともある。

 とても懐かしい街だ。

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