来ていただいて、どうもありがとうございます。
読んでいただいた方、とてもうれしいです。
うかがって御礼をお伝えできずに、本当にすみません。
書籍化のあと、本当にたくさんの優しさに気付きました。
これまで感じていた感謝の気持ちでは、全然足りなかったなぁとしみじみ思っています。
せめてその優しさに心から感謝しているということだけでも、お伝えしていけたらと思うのですが、口下手のわたしはうまい言葉も出せなくて。
ただただ「ありがとうございます」を繰り返すだけ。
誰か、「ありがとう」を百万倍くらいの熱量にした言葉を、考え出してくださらないかな。
周囲の方々が温かく応援してくださり、地元の新聞や市の広報誌にもとりあげていただき、本屋さんも大きな看板(のようなもの)を作ってくださって……お世話になっている方々への御恩を万分の一でもお返し出来たらいいなと思っているのに、御恩はどんどん増えていくばかりです。
小学生のころに書いた作文で、ひとつだけ今でも覚えているものがあります。
たしか一年生か二年生だったと思うのですが。
遠足で行った小さな動物園にタヌキがいて、わたしはそのタヌキが化けると信じてずっと待っていた……という作文です。
本気で信じていた、あのときの気持ちも覚えています。
「化けるわけないじゃない」誰かに言われて、魔法がとけたみたいに、あぁ本当のタヌキは化けないんだと思いました。
でも、もしかしたら、もう少し見ていたら。
そうしたらタヌキは化けたかもしれない。
小学生のわたしは、しばらくはそう思って少しだけ悔やんでいました。
信じるということは、とても勇気がいることだと大人になって感じるようになりました。
小学生のころにタヌキが化けると信じ切ったあの心は、今のわたしにはすごく眩しいです。
でも今のわたしは、存在するのかどうか自分ではわからないものでも、信じることで存在させることができるかもしれない、とも思います。
タヌキも信じる気持ちが化けさせるかもしれない。
冬の長いわたしの街もすっかり春。
賑やかな子どもたちの声と、わくわくとふくらむ蕾たちに力をかりて、タヌキを信じてあげようと思います。……なんて。