最近『謎の天才画家 ヒエロニムス・ボス』というドキュメント映画を見つけた。
おおっ! かの『快楽の園』が結構な割合で取り上げられているじゃないですか!(あくまで個人的考えですが)
実は以前絵画教室に通っていた頃、共同制作でこの『快楽の園』の一部を鉛筆で模写したことがある、感慨深い作品なのである。
三連祭壇画といういわゆる宗教絵画よろしく、楽園・人間界・地獄の構成になっている。
とはいえ説教臭いというよりも、楽しさにおもむくまま自由闊歩してる人達。
そして謎の生物(?)達と奇妙な建物が面白い。
もう中央パネルの人間界もすでに異世界だ。
楽園らしき向かって左パネルでは、どうやら神様がアダムとイヴを初めて会わせている場面らしいのだが、アダムは待ちきれないのか、神様の衣の裾を足の指で摘まんでいる(笑)
実に気持ちに素直なアダム。色んな意味でまだまだピュアだ。
そうして言わずもがなな右パネルが地獄。
またここの悪魔というか魔物たちが、奇怪というかけったいと言うか、実に面白い!
もちろんこの作家さん独自の風刺満載なのだけど、そんな事いちいち気にせずにも楽しめる。
ところで問題なのがこの中央パネルの人間界。
みんなマッパー(真っ裸)なのはしょうがないとして――やってる事もホント自由奔放だな、おい――こんなのいたの? 人間界に? ってな異形のモノたちがまた面白い。
女性の人魚はお馴染みだけど、男性の人魚(?)は鎧タイプで、結構いっぱいいるし、左上にはグリファン飛んでる。
って、わかるの人魚とグリファンとユニコーンだけだわ。他のはボスの創作か、もしくはネーデルランド辺りにはいたのだろうか。
ただ私のはモノクロだけど、原画のような青と淡いピンクが広がる天然の風景は実在した。
なんというタイトルか思い出せないのだけど、今年にYouTubeの海外の風景で見たことがある。
巨匠もそんな情景を眺めたのだろうか。
ともかく見てる分には楽しいのだが、これが描くとなるとトンデモナイことになる。
当時その鉛筆画教室での発表会に出す共同制作作品として、これに決定した。先生の好みで。
しかも先生の方針で、模写するなら実物大。
ええ、あらためてデカいのよ、実物が。
みんなで分担して描くって言ったって、参加人数が少ないから、楽園パネルは全て先生一人。
中央パネルは四人で分割。
で、私は左上を担当。
なんで受けちゃったのかな、私。上の方ってスゲー細かいんだよ。
おまけにこの部分を、実物大までに大きく掲載した本が当時なくて……💧(あったとしても外国版のとても高い本しかない)
コピーで拡大しても細かいところが潰れちゃって、見本が足りないのにも悶々。
おまけに飽きっぽい私。義務となると途端にやる気が無くなる人のサガか、ゲームにハマったりしてどんどん製作が遅くなっていって……。
自分単独の作ならまだいいけど、右隣と下の三辺と接合部分の色合いとかを合わせなくてはならず……、その節は本当にご迷惑かけました(-_-;)
そんなこんなで、無理やり間に合わせて数日間だけお披露目した作品。
それから十数年、我が部屋の隅で布を被って寝かせておりました。
けれど今回見つけた映像で十分とは言えないけれど、我が担当部分も結構大きく見せてくれていた。
あの時、これが見れていればなあ――。
いや、もう、たら・ればを考えたら切りがない。それにこれ2016年製作映画。どっちみち発表会には間に合わなかった。
ともあれ久しぶりに絵を引っ張り出して思わず唸った。
なんというか、折り返し地点を通過したところで棄権してしまった長距離マラソンの名残りのよう。
中途半端に気持ちが籠ってて、昇華も消滅することも出来ない半端なオーラむんむんだ。
ううっ、これはやはり仕上げるしかないようだ。
おまけに布で擦れちゃってるし、修正は必須だし。
でも我ながらよくやったよ私。中途半端だけど大作が残せたよ(他人様の大作だけどな)ここまで描く事が出来たんだなあとしみじみ……。
ともかく絵は見られてなんぼ。
いつ再び着手するかは分からないが、取り敢えず今はこうして飾っておこうと思う。
ちなみに下の写真は、私の部屋でなく仏間で撮りました。
ちょっと彩光で見えづらいところは勘弁です。細部を誤魔化してますので(笑)