ムカデが出たーーー!!!
タソのお腹に掛けてるタオルケットの上をニョロニョロしてるーーー!!!
近いっ!
近いっ!
気持ち悪い!
気持ち悪い!
きーしょーくーわーるーいいいい!!!
タソは飛び退いてタオルケットを投げ捨て、見失わないようにアースジェットを手に取った。
「この異星生物めっ!」
「なんだとクソニンゲン!」
ぶしゅーーーーーーー!!!
「うぎゃーーー! なんだこの液体はっ! い、息が出来ない! うぐぐぐ!」
「へへへ、くたばれ虫野郎」
ムカデは精一杯ニョロニョロし、ソファの影に隠れようとした。
「あ! そっち行くな! 猫がイタズラしたら大変!」
ぶしゅーーーーーーー!!!
タソはアースジェットの噴射の勢いでムカデの動きを制限した。
「ぎゃーーー! 苦しいっ! 死にたくない!」
ムカデはタソの敷布団に噛みつき、苦しそうに体をうねらせる。
「動きがキモいんだよ!」
ぶしゅーーーーーーー!!!
「うぐ……ぐ、おのれ……ニンゲン」
ムカデはタソを呪いながら息絶えた。
タソのおうちの殺虫剤はアースジェットなのだ。
本来はハエなどの小さな虫をやっつけるものなので、ムカデほどの大きさになると、じわじわ殺しているようで罪悪感が強いのだ。
結果、ムカデは沈黙したので、ビニール袋を手に被せ、ティッシュを5枚ぐらい重ねて掴み取り、固く縛ってゴミ箱にポイしたのだ。
怖いのだ。
もう1匹いたらどうしようなのだ。
きっとさっき殺した奴の奥さんで、旦那さんを殺したタソに報復してくるに違いないのだ。
眠れないのだ。
虫嫌いなのだ。
今日はお外でカナブンにも襲われて散々なのだ。
世界中の虫が、アニメみたいにデフォルメされた可愛い見た目になればいいのに。
ちゃんとニンゲンの住処を理解して、入ったら殺されるって恐れればいいのに。
これだから夏は嫌いだ。