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タソは悪い子


神様、タソは本当は悪い子なんです。

だから、いい子のフリをするのがとっても上手なんです。

悪い子だってバレないように。

いつもいい子のフリ。



タソの最初の悪いことは、
小学校3年生のときの『窃盗』

タソは8歳にして泥棒になりました。

当時はコンビニなんて一般的ではなかったけど、そこは今で言うコンビニのようなスーパー。

タソはこっそり「都こんぶ」をポケットに入れました。
お小遣いはちゃんと持ってて、ポテチはちゃんと店員さんにお金を払うプロのような手口。

一緒にいた2人のお友達も何か盗んだのを覚えています。

「誰にも言うなよ!」

言い出しっぺのお友達が、タソに口止めをしました。

タソは約束を守って、そのことは誰にも言いませんでした。

でも、1人のお友達が別のお友達に「悪いこと自慢」をしてしまいました。

タソはゆすられました。

「あのこと先生に言っちゃうからな!」

タソは我慢できなくて、

「いいよ! 言えばいいじゃん!」

と、反抗しました。


翌日。


「O君、M君、タソ君、ちょっと来なさい」

3人はそれぞれ別の部屋に連れられ、タソは狭い資料室に、担任の先生と2人っきりになりました。

タソは怒られるのが怖くて、まだ何も言われてないのに泣き出しました。

「ごめんなさい……! ごめんなさい……!」

担任の山口先生はとても優しくて、タソが首謀者ではないことを知った上で、

「自分がした事をわかってるならいい」

と、素直に謝ったタソを許してくれました。

首謀者のO君は、別室で何があったかわかりませんが、教室に戻ってくるなり、山口先生におもいっきりビンタされました。

「ひっ!」

タソは怖くなって、また泣き出しました。

その後、O君とM君はエリート街道を突き進み、高校生の頃には立派な暴走族になりました。

いま何してるのかな。

まだ悪いことしてるのかな。

タソも一緒の高校に行ってたら、お友達、続けられてたかな。



神様は、タソの悪いことを許してくれなくて、右腕を骨折させたり、自転車で転ばせて顔面血だらけにしたりしました。

きっと、それが『罰』だったのでしょう。



タソは、他にも悪いことをしました。

タソ知ってるんだ。

『完全犯罪』というのは、誰にも裁かれない、誰にも許されない、それ自体が究極の『罰』であるということを。

タソは、未だ誰にも知られていない『罪』を犯しました。

誰にも知られていないからこそ、誰にも裁かれず、永遠に『罪』だけを背負うのです。

不倫は蜜の味。

タソは悪魔と契約しました。

そして裏切られました。



ああ、だから成仏できないのか。

タソは後悔してるんだ。

同時に怒ってもいるんだ。

人生で唯一「愛してる」と思えたのに。

生まれ変わっても一緒にいたいと思えたのに。



タソはいつも気付くのが遅いんだ。

「愛されている」という実感を覚えずに育ったタソは、「人を愛する」ということができずに、いつも自分を愛してくれる人の「愛情」に気付かない。

本当は「裏切り」ではなく、タソを本気で愛しているからこその「別れ」であったことも、今なら少しだけわかる気がする。

「あの人」を、タソが許したとき、

タソもまた、「あの人」に赦されるのかな。



もう何年も経つ。

元気にしてるかな。


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