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ご挨拶

 初めまして。野原杏(のはら あん)と申します。去年の暮れから、カクヨムを利用し始めました。初めての近況ノートでは、私がカクヨムに自分の物語を残そうと思った経緯について、お話したいと思います。
 カクヨムという小説サイトを知ったきっかけは、Twitterでフォローしている字書きさんが、当時こちらで連載中だったご自身の作品のURLを公開されたことです。
 私は、物心ついた時から、ノートにお話を書いていました。
 本を読むこと、想像すること、別世界に出かけること、そして物語を書くことは、呼吸と同じように自然な、私の人生の一部です。
 そうして書き溜めていた物語は、まだひらがなしか書けなかった頃から数えれば、ノート数十冊にのぼると思います。
 先日、部屋の片づけをしていた際に、それらの膨大な軌跡を発見し、とても懐かしくなり、ついで胸が疼くような気持ちに襲われました。
 このことは後日改めて近況ノートに書こうと思っているのですが、つい最近まで、私には小説を書くということが全くできない空白の期間がありました。これは全く初めての経験でした。人生に初めて襲い掛かった本当の暗闇というものに飲み込まれ、空想も創作も、現実の重みに比べれば空々しいものに見えたのです。
 明けない夜は存在しないように、少しずつ、少しずつ、闇はとり払われ、私はまた私だけの王国へ想像力の翼を広げて出かけたい、そしてそれを書き留めたいと思えるようになりました。
 けれどその時には、私は自分がどうやって書いていたのかを、忘れてしまっていました。
 自分の執筆のリズムやテンポ。馴染んだ言葉遣い。色んなお話の端々に忍び込ませた、お気に入りの修飾語や暗喩。
 それらは全て、私から離れ去っていました。
 そこからまたしばらく、書きたいのに思うように書くことのできない、もどかしい期間が続きました。
 カクヨムという小説サイトを知り、膨大なノートを自室から発掘したのは、そんな時でした。
 現在我が家は大掛かりな断捨離の最中であり、これらのノートを全て自室に置いておくのはおそらく不可能と思われます。
 それなら、お気に入りの作品を、デジタル空間にお引越しさせておこうと思い立ったのです。
 そんなわけで、このノートを書いている現時点では、私がup している作品は全て過去に書いたものになります。古いものだと、10年近く前ですね。
 表現が稚拙だったり、知識が足りない部分は手を入れましたが、ストーリーなどはほぼそのままです。
 この『お引越し』には、思いがけない贈り物がついてきました。
 過去の自分の文章をもう一度なぞることによって、長いこと失われていた私のリズム、私の表現が、少しずつ手元に戻ってきたのです。
 昔の私は、今の私ではありません。
 全く同じ物は、もう書けないでしょう。
 でも、様々な経験をして、新しい本を沢山読んだ今の私だからこそ、書きたいものがまだある。書けるものがある。
 そう感じた時、力が湧いてきました。
 カクヨムを使い始めてよかったと思います。たとえ今は過去作品の再掲でも、とても楽しいです。古い馴染みに再会するようなものですから。
 『お引越し』は、まだもう少し続くと思います。
 現在連載しているものは1作品ですが、これがとんでもなく長くて…400枚詰めの原稿用紙300枚以上ある上に、それだけでまだ第1部なんです。
 でも、キャラクターにとても思い入れのある作品ですし、実を言うと、読者さんから「好きです」「楽しみにしています」との大変嬉しい感想を一番多く頂いている作品なので、めげずに最後までupしていこうと思っています。
 私の物語は全て、私の魂の欠片です。
 少しでも、誰かの心に触れることができたら、こんなに嬉しいことはありません。
 近況ノートの方も、これからちょこちょこ書いて行こうと思います。
 各作品への想いや裏話、過去に書いていた時の思い出、読者さんとのお話などなど、書きたいことがいっぱいあります。
 たまに覗いて頂けたら、幸いです。
 これからどうぞよろしくお願いします。

                                 野原 杏

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