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語らない〈オーメン〉

言わずと知れたオカルトホラー映画の金字塔。
私ごときが何も言うことは無い…というかもともと私、〈オーメン〉シリーズには何の思い入れもなく、今回の〈オーメン ザ・ファースト〉も、ホラー映画好きの相方が履修しとくべきだと言うからついて行ったんですけども…シスターの服を見に。

映画〈オーメン〉に全く詳しくない私が、そもそも〈オーメン〉って何ぞや?という方に向けて一応説明しますと、〈オーメン〉というのは人名でも何でもなく、omen、予兆のこと。

新約聖書『ヨハネの黙示録』によれば、キリストのふりをして地上に飢饉と疫病と戦争と破壊をもたらす反(アンチ)キリスト、というのがいて、それが“悪魔の子”、この映画シリーズの主人公・ダミアン。
だからタイトルの〈オーメン〉は、そのアンチ・キリストが現れる予兆なんですよ…みたいな。

ちなみにラテン語で、nomen est omen(名は予兆なり)という言葉がありまして。〈エクソシスト〉で悪魔と戦うカラス神父の名前もダミアン。ハンセン病患者の療養に命を捧げた神父(聖ダミアン)と一緒なのはご愛敬なのか、わざとか。

で、しきりに出てくる666ってのは何なのかというと、これも黙示録に「思慮のある者は、獣の数字を解くがよい。その数字とは、人間をさすものである。その数字は666である。」のこと。
私が〈オーメン〉に思い入れがない理由の一つとして、“解くがよい”(≒考察しろ)つってんのに、まんま666の形のアザっていうのは芸がないだろ、と思っているからなんです。

一方で、この映画も途中でなぜかイタリア語と英語がちゃんぽんになるのですが、〈ヴァチカンのエクソシスト〉のようにはイタリア語に英語字幕が入らない。もちろんラテン語にも入らない。
ので、イタリア語話者でなくおまけにカトリックでもない観客(と、アメリカの孤児院から来た見習いのヒロイン)には、周囲のカトリック聖職者やシスター達が何を言っているのかわからない、というある種不気味な雰囲気を醸し出していて、そこが良い。
不親切では?と思ったものの、製作者が狙ったらしいところにはちゃんと字幕が入るので、これは演出でしょう。
昨今、「すべてをセリフ/心中モノローグで語る」式演出が流行っているようですが、「わざと説明しない」演出も、ありだわ…。

後に続く〈オーメン〉ですでにダミアンが生まれてしまっているんですからネタバレも何もないとして言ってしまいますと、“悪魔の子”ダミアンはどうして――どうやって――生まれたのか、というのを描く本作で、その理由が明かされます。

それは、信仰の衰退と教会の権威の失墜を憂いたカトリック教会の一派が、反キリストの脅威を用いて人々の信仰を取り戻すためだった…という、いわばカトリック教会のマッチポンプ的な話ですね(笑)。ホント、アメリカにおけるカトリックの扱いって…(ry

全体としてはホラーとしてはほとんど怖くなかったので、私はずーっと、ローレンス枢機卿(老齢)のピシッとしたスータン姿と、修道女の請願式での豪華な祭服姿をうっとり眺めていました(笑)。

映画内でほぼ説明がされていない(上に、やっぱりパンフレット買うつもりもない)本作ですが、考察しようと思えば、「女子修道院が、未婚の妊婦を受け入れて出産の世話をしている」慈善事業の実態って…とか、「ダミアンが“山犬の子”とされている“山犬”って、何でわざわざ“山犬”? イザヤ書に出てくる“山犬”?」とか、幻視のシーンで出てくるのはシスティーナ礼拝堂の〈最後の審判〉の絵がモチーフだ、と全部観終わった後で気付く、とかいろいろ、あるにはあるんですが…。

何か一つ怖いところでも語れ、と言われたら、私が最初から最後(正体がバレた後も)まで「ハンサムなおじいさま♥」としか思っていないローレンス枢機卿から女子修道院長まで、反キリスト創造プロジェクト(勝手に名付けた)に関わっている人達全員が「自分達のやっていることは正しい」と思っていて、その範疇ではみんなすごく優しい、いい人だという点なんですよね。それが信じられる(=同じ信仰をもてる)人間には幸せかもしれませんが…そうでない人間には不気味にしかならん、というところでしょうか。

2件のコメント

  • こんばんは。面白かったです。
    タイトルはダミアンが生まれて~の2と3しか知りません。個人的に2は見終えてJUNEと思った学生時代でした。3はいまいち嵌まれなかったな~くらいです。まだ「ローズマリーの赤ちゃん」の方が好きでしたね。
     それでは、お邪魔しました。
  • 七生さま

    面白い…ありがとうございます(笑)
    2も3もとは、私よりご覧になっているじゃないですか😅(どれだけ思い入れないんだ…)
    私も〈ローズマリーの赤ちゃん〉の観せ方の方が好きです。隠しておいた方が恐ろしさをかき立てるという、オカルトホラーの名作ですよね!
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