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ノン・フィニート

 月に兎がいないと知った時、どんな気持ちでしたか?

 
 
 答えが一つに決まった瞬間、全てが馬鹿らしくなる。私はそう感じることがあります。
 考えることは世界を生むことです。

 想像≒創造

 ですが、最近は調べればすぐに答えが出ることが多すぎます。
 答えを知る前まで確かにあった平行世界が答えを知るたび消えていく。全くつまらないです。

 私は未完成が好きです。私が好きな音楽家のOrangestarさんは未完成が名前の由来だそう。(未完成→蜜柑星→Orangestar)私もそうです。
 ピカソも完成してしまうことが嫌で、未完成の作品を多く残したそうですよ。きっと一つの形態に行き着いてしまうのが嫌だったんでしょう。


 色々話しましたが小説はまさにこれです。読者に想像の余地を持たせ、一人一人に違った世界を見せる。それが芸術としての小説の特徴。
 しかしながら、私は多くの平行世界をこの手で潰してきました。解釈を狭め、私という作者の意図一つに絞り込めるように。
 
 答えが出ないと面白くないですからね。私は答えが一つに決まるつまらなさも、答えが出ないつまらなさもどちらも知っています。
 ただ今回くらいは読者の方に考えてもらおうとも思います。

 

 私はスバルという言葉が好きでした。素晴らしいという言葉と語感が似ているからでしょうか。
 なかでも私は特にこの『昴』という漢字のつくりが好きでした。

 でも、ある時、私は創作のため昴という言葉の由来を調べることになるのです。そこで、私はひどく落胆しました。期待していたものとは全く違っていたので。

 調べなきゃ良かったと後悔しました。
 アルジャーノンに花束を。知らなくていいことは世の中に沢山あるのです。

 そう。それで、月に兎がいないと知った時のことを私はそこで思い出しました。あの時も、そうだった。
 ただ、サンタがいないと知った時は別にそんな気持ちにはなりませんでした。幽霊と同じで、いないとは言い切れないし、何よりいるって言ってくれる大人がいたから。

 『昴』とは牡牛座にある六つの星からなる星団のこと。

 そして、太陽から逃げた兎のこと。

 私は昴という漢字が好きでした。
 月に兎はいないけど、太陽にはいるかもしれない。そう思えるから。

 嘘でもいいから、
「太陽には兎がいる。」
 私は誰かにそう言い切ってもらいたいのです。

 

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