柑月渚乃

　小さな頃から超超インドアの私は家周辺の地理が全くわかりません。
　どこにコンビニがあるとか公園がある、よその小学校はあっち、公民館は……これら全てわかりません。

　私がその目で見て、匂いを嗅いで、触れて、知っている世界はずっと学校の通学路、その道と学校の中しかなくて。
　ただ、本や映像が好きだった私は、誰よりも世界を知っている自信がありました。

　でも、小学生の自信なんて当てにならないものらしく。
　そんな私は小学4年生のとある日、レンタルビデオ屋さんで見つけた、ある一つの映画の存在に衝撃を受けることになります。

　それが『トゥルーマン・ショー』
　その映画の自分の今まで見ていた世界全てが、自分のドキュメンタリードラマを撮るために作られたものだった、という設定が私は物凄く怖かったんです。
　世界を知っているようで私も作られた世界で誰かの水槽の中で生かされているだけなんじゃないかって。

　ホラー映画やお化け屋敷なんかより、私は断然その映画が怖くて。皆んなに裏切られた感覚がしました。
　そのパッケージの裏だけ見て、私は今でもその映画のオチを知りません。


　
　超超インドアの私からすると列車は“橋”です。
　駅という離島と離島を繋ぐ橋。

　そして色んな景色を見せてくれるその橋が私は大好きです。
　たまに分かりやすい理由付けをして遅れるのが気になりますが。
　
　もしかしたら誰かがつくったセットとセットを繋ぐ時間稼ぎをしているのかもしれません。

　トゥルーマンさんはどう自分のドラマを終わらせたんでしょう。
　そんな事をずっと考えています。きっと観ない限りその結論は出ません。

　超超インドアな私はいつの日か橋が脱線するのを夢見て、生きています。
　きっとその日、私のドラマが終わり、映画が始まるから。