初めて、空を飛んだ人。
初めて、宇宙に行った人。
初めて、他の星にたどり着いた人。
SFではおなじみの「初めて」に、私も昔から憧れてきました。
この作品の下敷きになったのは、学生時代に書いた短編小説で、その時の主人公は「初めての宇宙飛行士」になった寡黙な男性でした。レイ・ブラッドベリの短編「イカルス・モンゴルフィエ・ライト」に――初めての宇宙飛行士を描いた美しい物語に――感動して、ああいう詩的なお話を描きたい! と思ったのを今でも覚えています。
タイトルもシンプルに、「空へ」。
空を飛びたいと願い、宇宙への夢を持ち続ける…… 「空へ その向こう側へ」も、その時の物語の筋は変えていません。
ただ、あれから少しばかり大人になって、「夢を叶える人」のそばには必ず「その夢を共有する人」「夢の実現を支える人」がいることを知り、そういう人たちへの共感が強くなってきたのかも知れません。
このお話の主人公は、変わり者で、目立たないけど芯は強く、自分なりのやり方で夢を持ち続ける、そんな女性二人になりました。
大きな夢は、たくさんの出来事に振り回され、消えていくこともあります。荒れ狂う波の様な運命に翻弄される中でも、静かに、決してあきらめることなく、機会を待つのはどんな人だろう……? と考えた時、初めての宇宙飛行士になる『彼女』と、初めての宇宙通信士になる『私』の姿が浮かんでいました。
夢を共有することは、恋愛に近い感情を呼び起こすことがあります。時には、本物の恋になることもあったりして……。
初めて宇宙に行った人から、初めての声を受け取る。そんな夢も、また素敵だと思いませんか?
2024.10.29 黒川 亜季
(in 魔法のiらんど 2018.9.26)