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リレー参加の皆様へお知らせ→『カクヨム愛がなければカブトムシをたべればいいじゃない』

『カクヨム愛がなければカブトムシをたべればいいじゃない』(17名で綴ったリレー小説)ですが。

運営様より改善依頼を受けましたので、皆様へ報告します。

要約すると、カクヨム上では、複数の人間による作品を特定の一個人に纏めるのは(おそらく権利関係でもめるのを防ぐ観点から)望ましくないとのことでした。

「~多数のユーザーから問い合わせをいただきましたので」

とのことですので、ボクとしては運営様に余計な手間をおかけするのは本意では無いので、改善したいと思います。

引き続き掲載する場合は、知的財産関連の権利を全て北乃ガラナが所有している旨(全員から許可をとって)を明記して、ボクの1人の作品としてください。とのことでした。もちろん『カブトムシ』をボク1人のものにするわけにはいかないので、一箇所に纏めた作品としては削除します。

ですので、みなさまの書かれたエピソード(部分)については、それぞれを皆様に返還しますので、保存していただければと思います。暫定措置として、近日中にこちらの近況ノートに全本文を移動させますので、そちらからも保存できるように対応します。

なお、それぞれのアカウント上で個別にリレー小説の形式をとることは問題がないとの案内もいただいています。

上記、祭りの後片付けということで、ご協力とご理解をおねがいします。

19件のコメント

  • こんばんは!
    上記の件、了解いたしました。
    なるほどそうだったんですね、という感じです。
    ということで念のためわたしのVATも下げました。
    同様にご容赦ください。

    それはそれとして、楽しかったですね!
    本当にどうもありがとうございました!
  • (💗いいね!)
  • ――おーい、そこの櫓のボルト!、外しておけよ!――

    ――焚き火の残りは、全部燃やしといてくれ!――

    遠くで職人さん達の声が響く

    万国旗が外され、紅白のダンダラ幕も畳まれていく

    ゴミを拾う係、雑巾で掃除する係、

    放置された死体を処分する係

    ワイワイ、ガヤガヤと話し声は聞こえるが

    寂しい気持ちになる

    ……そうだ、祭りは終わったのだ


    思えばアツい一週間だった、たった一週間だった

    祭りは準備している間が一番楽しい

    始まってしまえば一瞬で終わる……

    記録には残らないけれど、記憶には残る祭り

    そんな祭りが、今やっと終わったのだ……


    私はそっと手ブラをやめて

    大事にしていた佐々木希の写真集を焚き火に投じた……
  • ユーリさまが手ブラをおやめになり、
    その手を腰に当てがい、宙をご覧になっていらっしゃるわ。

    なんだかそのお背中が、寂しげに見えますのは、ナゼ?

    わたくしは焚き火に放り込んでおきましたサツマイモを取り出しますと、二つに割り、その小さいほう(大きいほうは、もちろんわたくしのよ)をユーリさまに差し出します。

    ふとその横顔の頬に伝うのは、涙?

    あら、もしかしたら大きいほうがほしかったのかしら。


    ガラナさま、色々とご迷惑をお掛けしてしまいました。
    でもあの経験は、わたくしにとっては大切な宝物♡

    お手数をおかけします。
  • みなさま、先日はご参加ありがとうございました。
    また、コメントをくださり、ありがとうございます。


    >関川さん

    VATだと、許可は取りやすいとおもうんですよ。
    ただ、16名となると、いちいちとりまとめるのも……なので。
    盛り上がりすぎた、合併症みたいなものですね(笑)


    >さつきまるさん

    (いいよ👍!)


    >相良壱 さん

    祭りは終わったので、もうここらでよか。感ですかね。

    きっと運営様も想定外の運用だったんですよ。
    高射砲で戦車を撃ち抜く的な(笑)

    それでも、ここまで盛り上がらなかったらスルーされていた
    と思うのですが、目立っちゃったから、問い合わせがきたし=対応せざるを得ないという感じでした。

    たしかに、こんご同様なのが増えると、トラブルの基になりかねないですからね。

    そして「みんなはズルい」その気持ちわかります。上手なエイプリール企画をみてしまったときの気持ち(笑)


    >ユーリ・トヨタさん

    トスンパ「あーこんなところにいたユーリちゃん。さがしたんだよー。さ、こんなところにいないで部屋にもどるよー。とっておきのステンレス布団ばさみを用意したからね。こんやは、ねむらせないから……ね」


    >高尾つばき さん

    ユーリさんは、なんか急用があるからって帰っちゃいました。
    なので、そのイモはボクがもらったああああ!!


    >夕日ゆうや さん

    いえ、問題というか「~こういう風にしてね」という感じでした。

    どこかに共有フォルダ的なのがあるといいんですが、そこまで求めるのも酷な話ですしねぇ(想定外すぎる運用)
    ご理解いただき、ありがとうございます。



    それでは、こういうシーンでのお約束台詞!


    「カブトムシは永遠に不滅です!」


    え? なんだって、イマイチ? 
    今は違う?
    じゃあどう言えば良いんだよ……。あ、なるほど、そっちね。

    わかった。


    「ボクのことは嫌いでも、カクヨムのことは嫌いにならないでください! ありがとうございました!!」
  • こちらは、コピー保管用の転載になります。
    必要な方は各人で保管をお願いします。

    なお、ずべて当時のままですので、ご理解願います。
    (絵文字やルビは非対応です)


    ■確認保管用の避難場所■(その1)


    『カクヨム愛がなければカブトムシをたべればいいじゃない』(17名で綴ったリレー小説)
    作者 北乃ガラナ

    ★45
    ミステリー 179件の応援コメント 25人のフォロワー
    残酷描写有り暴力描写有り性描写有り
    自主企画豪華カクヨムメンバーミステリーホラーデスゲームボーイズラブカオスカクヨムオンリー



    ……物語は、カクヨム作家ふたりが、とある館に侵入したところからはじまる
    北乃ガラナ


    こちらは、17人のカクヨム作家でリレーして書いた小説になります。それぞれのエピソードタイトルの後にある、括弧内の名前が書かれた作家さん名です。

    各エピソードを読んで、好みのエピソードがあったら、その作家さんの本作品を読んでくれたらうれしいなー。なんて思ったり。きっと、素晴らしい作品との出会いがあるはず。


    (以下。当時のイベント案内&参加作家紹介)

    カクヨムユーザ自主イベント。

    『カクヨム愛がなければカブトムシをたべればいいじゃない』

    一週間で終わる、終わらせる。参加したみんなのリレー小説始動!
    タイトルの意味を考えるのは、画面の前のあなただ!(投げっぱ)

    終了は2017年5月1日(23時59分)……ぐらい。

    カクヨムのカクひとが、そのままキャラクターになるっぽい。
    だれでも参加自由ダヨー。でもメリットなんで皆無ダヨー。
    でも萱草真詩雫さんがイラスト化してくれたり
    他の作家さんと交流できたりするよー

    投稿は、北乃ガラナの近況ノート

    緊急連載クエスト『カクヨム愛がなければカブトムシをたべればいいじゃない』

    までお願いしますm(_ _)m

    【参加作家様紹介】(参加順・紹介作品は最新連載か星の数で決めました)

    『さつきまる』 作品「フェアリーウェイト」

    『関川 二尋』 作品「アトランティスのつまようじ」

    『北乃ガラナ』 作品「【白と白】かえれ!震撃のグリーンブルーファンタジアへ」

    『ゆうけん』 作品「バカップルのやりとり」

    『萱草真詩雫』 作品「~綴られた想い達~」

    『壊れた人形』 作品「歌詞集」

    『振悶亭めこ』 作品「松戸さん家の優しい時間」

    『ユーリ・トヨタ』 作品「こちら藤堂忠三郎、何故か温泉に行っています。」

    『叶 良辰』 作品「ウェイトレス・ミオの異世界スポーツバー「イギーダ」繁盛記」

    『夕日ゆうや』 作品「ピッキングマイスター!」

    『橘ミコト』 作品「国立魔術大学における古生物学の日常」

    『相良壱』 作品「世界の果てで『リサイクルショップ』始めました」

    『たまご』 作品「世界は幼女に支配されました」

    『しめさば』 作品「剃り残した髭、あるいは、女子高生の制服」

    『黄間友香』 作品「ラジオ★ミッドナイト」

    『高尾つばき』 作品「猟奇なガール」

    『陽野ひまわり』 作品「わびすけのつぶやき」



    この物語はフィクションです。登場する人物・団体・性癖等は架空であり、実在のものとはいっさい関係ありません。か、関係ないんだからねっ!


    まとめとイラスト『カクヨム愛がなければカブトムシをたべればいいじゃない』(相良壱&萱草真詩雫)

    【登場人物と状況・その1】(相良壱)

    カオスが加速する『カクヨム愛がなければカブトムシをたべればいいじゃない』

    ……おそらく誰1人として、全貌を把握できている者はいないだろう。

    そんな中、このような状況を憂慮する男。その名は『相良壱さがらいち』

    ありがたすぎるので、コーナーとして設立。
    続きをカク人もヨム人も必読です!

    なお、相良壱さんの近況ノート

    https://kakuyomu.jp/users/chocolitchi/news/1177354054883033267

    25:ガラナ汁保管庫、にて会議が開かれている模様。
    気になる人はチェックしてみてね。



    『KLB』ぜんかいまでは……


    ――4月27日まとめ――

    【登場人物整理】
    ☆ガラナ邸
    【ガラナ陣営??】
    ・ガラナ⇒生贄を集めている⇒魔術師
    ・フタヒロ⇒揉んだ⇒脱いだ⇒ブラしてた⇒ガラナの手下
    ・さつきまる⇒揉んだ⇒容疑者?⇒ブラしてた(ブルマ泥棒?)⇒あられもない姿で死亡

    【イレギュラー??】
    ・死体の女(ガラナorひまわりさん?)⇒揉まれた
    ・ゆうけん⇒「ひまわりサン」「つばきサン」を疑い殺される(生きていた?)
    ・ユーリ・トヨタ(?)⇒ゆうけんさんに異物を押し込む(犯人?)

    【宴会陣営??】
    ・真詩雫⇒火事フラグをたてた⇒クワガタフェチ
    ・ウサギ⇒便乗⇒カブトムシ美味しい
    ・めこ⇒ピッキング⇒カブトムシ持ってきた

    【時間軸不明?】
    ・壊れた人形⇒幽霊に襲われている(時間軸が違う?)
    ・双子の幽霊⇒壊れた人形を襲っている

    【探偵??】
    ・夕日ゆうや⇒迷探偵⇒ガラナ邸へ合流⇒バイ

    【一般人?】
    ・橘ミコト⇒Gに襲われガラナ邸へ⇒うみ・相良に確保される

    【監視陣営??】
    ・「HIMAWARI」⇒???
    ・「TSUBAKI」⇒潜んでエクレアプレイ


    【サイバー犯罪課??】
    ・ 二階堂うみ⇒ハゲてる
    ・相良⇒煽っている

    ☆さつきまる邸
    【捜査課??】
    ・課長⇒手ぶら名人
    ・若手⇒解説係
    ・トンスパ主任⇒洗濯バサミのプロ
    ・叶⇒電話係


    【全体の流れ】
    ・カクヨム作家がガラナ邸へ集められる
    ・カクヨムアカウントが消されている
    ・コメディが始まる
    ・魔術師だったガラナの悲願を成就させるために生贄を集めていた
    ・ブルマの歴史が思ったより深い

    【謎】
    ・ガラナっぽい死体どうなった
    ・掘られていた死体は誰なのか?


    【登場人物と状況・その2】カレンダー裏版(陽野ひまわり)

    《ガラナ陣営》
    *ガラナ…禁忌魔術師の末裔。禁忌魔術復活のために、結界を張った自分の屋敷にカクヨム作家を集め、生贄にしようとしている。
    なぜか、さつきまる邸に秘匿されていたブルマーを手に入れようとしている。

    *フタヒロ…ガラナの手下。無駄に顔が整っている。
    ブレスで冷凍死体を解凍するなど、人間とは思えない。
    「ガラナがカクヨム問題作家を集めている」と屋敷に集まった人物達に伝え、ガラナ陣営にいることを隠している。

    *イチヒロ…フタヒロの双子の兄。ガラナの命でさつきまる邸にブルマーを盗みにいった。変装の名人?で、上半身カブトムシの着ぐるみ、下半身に盗んだブルマーを履いている。腐ったエクレアのようにドロドロと体を溶かすスキルを持ち、ソファ傍の死体の周りになぜかゆで卵を置き始めた。しめさばに目撃され、パンチを受ける。


    《対ガラナ》
    *ひまわり…ガラナを侮蔑する魔術師。ガラナに騙され、冷蔵庫に閉じ込められ死体となった。ダイイングメッセージとして自らの姿をガラナに変えた。

    *シン・チワワ…ひまわりの体から生まれた魔獣。しめさばは冷蔵庫を開けたときにそれを目撃した。


    《何らかの関係がありそうな人物》
    *さつきまる…ガラナ邸にフタヒロと共にやってきた。
    自宅にブルマーを秘匿していたらしい。
    ガラナ邸内礼拝堂?にて磔になった死体として見つかるが、さつきまる本人との確証はない。
    壊れた人形が襲われた場所にあった死体はさつきまるが殺した?


    《巻き込まれた人々》
    *ゆうけん…フタヒロ、さつきまると共にガラナ邸に集められた一人。フタヒロとさつきまるに台所から閉め出され、ドアノブをガチャガチャと回す。
    諦めて帰ろうとしたときにユーリ・トヨタらしき人物に刺されるが…
    ユーリ・トヨタは風邪で寝込んでいるはずらしい。では誰がゆうけんを刺したのか?

    *迷探偵夕日ゆうや…とある依頼で謎の新型ロボットを探して歩き回るうちにガラナ邸に辿り着く。悲鳴を聞いて屋敷に飛び込んだところ、下半身丸出しの男の死体を発見(たまごと湿ったおっとっとを握っている)。
    同じくロボットを追いかけて屋敷に侵入した橘ミコトを犯人と間違えるも取り逃がす。ゆうやの一連の様子はガラナと思わしき人物と天井裏に潜むつばきに見られている。
    「キルヒアイスが死にました」という電話を受ける。

    *橘ミコト…なぜかロボットを追ってガラナ邸へ。イニシャルGらしき大群に襲われ、ほうほうの体で逃げ出したところをゆうやに捕まる。振りほどいて逃げたところ、さつきまるを探していた警視庁の相良とうみに捕まる。なぜか「Niagara Falls」と書かれたカードを持っていたがために、うみに重要参考人としてガラナ邸に連れ戻される。

    *しめさば…たまたまガラナ邸に空き巣に入る。ドアノブをひたすら回す人物に遭遇し、ピッキングして彼と共にガラナ邸の台所に侵入する。冷蔵庫の中のひまわりの死体とそこに生まれたシン・チワワを目撃するも、冷蔵庫のドアを閉めてしまう。ソファの陰にある死体を見つけ、逃げるイチヒロを追いかけ、パンチをくらわす。

    *黒馬くぅ…誰かに電話で「黒幕になれ。登場すればガラナの死体が見つかって大騒ぎになっているはず」とそそのかされて現場にやってきた。が、ガラナとは面識がない。名前がないので黄間さんに「黒馬くぅ」と名前をもらった


    《捜査する人々》
    *時空警察の二人…上司(石田)と部下(小早川)。目的は、さつきまるの秘匿していたブルマーの捜査。しかしさつきまる邸に侵入した時にはブルマーは見つからず。
    手ブラで戻り、トスンパ主任に洗濯バサミ(新品)のお仕置きをくらう。石田は佐々木希の結婚に相当なショックを受けていた。小早川はキルヒアイスの死に動揺していた?

    *警視庁サイバー捜査課…上司のうみ(ハゲ)と相良の二人。デスゲームを予告するメールを受け取り捜査を開始。メールがさつきまるのスマホから発信されたものとわかり、GPSの示すガラナ邸へ向かう。礼拝堂のような場所にはりつけられた死体を発見。死体の足元の花束にさつきまる名義のクレジットカードを発見。カードの裏には「Niagara Falls」の文字があった。

    *TSUBAKIとHIMAWARI…カクヨムの治安維持ロボットであったAIガラナ(初期のコードネームはナイアガラの滝)を使い、ボットを探す二人。さつきまるとフタヒロがボットではないことを確認。ゆうけんの侵入までは確認しており、彼にTSUBAKIを模したドールを与えて喜ぶ様子を監視していた。


    《謎の人々=伏線になりうるか?》

    *ましろ、うさぎ、めこ…トイレを借りにガラナ邸に侵入。カブトムシの大群をぶちまけたりとフリーダムにガラナ邸の台所をカオスに導く。

    *壊れた人形…どうやらガラナ邸の別室にいるらしい(誘拐された?)。壊れた人形が殺した双子の妹の幽霊に襲われる。逃げ惑ううちに上の三人が放った虫達におののき、双子の妹の幽霊と共になんとか逃れる。アコギで弾き語りをしながらさつきまる邸に向かう。
    双子の妹の幽霊とは別の幽霊が死体を刺したり解凍したり再冷凍させたりしているらしい。

    *つばき…天井裏から酸っぱくなったエクレアを食べながらじっと観察している謎の美女。フタヒロと思われた死体がドロドロと溶けてなくなり、その後に床下からイチヒロが出てきたところを目撃(ということは、下半身丸出しの死体はイチヒロの偽装?)。その後イチヒロがソファ傍の死体の周りにゆで卵を置くところも目撃している。外へ出たゆうやが戻ってきたところも目撃。


    《死体》

    *ひまわりの死体…ガラナが最初の生贄とするべく冷蔵庫に閉じ込めて殺害

    *さつきまるの死体(?)…ガラナ邸の礼拝堂のような場所に磔にされていた。足元には血塗られた無数の花束が。その中からさつきまる名義のクレジットカード(裏にNiagara Fallsの文字)が見つかる。

    *下半身丸出し(男)の死体…ゆうや探偵がガラナ邸にて発見。肛門から血を流していた。たまごと湿った潜水艦おっとっとを握っていた。
    ミコトを追ったゆうやが戻ってくるとなぜか死体がなくなっていて、たまごと湿ったおっとっとだけが残されていた。

    *ソファの陰の死体…男の死体。イチヒロが死体の周囲を無数のゆで卵で囲んだ(天井裏のつばきに目撃されている)。しめさば達に発見される。

    ※下半身丸出し死体=ゆで卵を置いた死体とするならば、
    ゆうや発見→ミコトを追いかけ外へ→イチヒロがゆで卵を置く→しめさばが発見→死体とゆで卵を動かす(誰が?)→ゆうや戻るが死体が消えている
    という流れになるのかと。


    【登場人物イラスト】(萱草 真詩雫)

    萱草真詩雫かやくさましろさんの描いた

    【登場人物イラスト】は、こちらで見よう

    萱草真詩雫かやくさましろさんツイッターアカウント

    https://twitter.com/soyanagatuki


    萱草真詩雫かやくさましろさんカクヨム近況ノート

    https://kakuyomu.jp/users/soya/news/1177354054883034025
  • ■確認保管用の避難場所■(その2)

    こちらは本文になります。



    『カクヨム愛がなければカブトムシをたべればいいじゃない』(北乃ガラナ)

     フタヒロとさつきまるが北乃ガラナの住むという、森の中の館を訪れた。

     ふたりを快く出迎え、宴を催す館の主だったが、アルコールがまわったのか、主はすぐに寝てしまった。暇を持て余したふたりは、館の探索をはじめる、そこでベット下の大きな引き出しにエアなドールがあるのを発見してしまう。

     余談だが、エアなドール。エアドールが一般的にどんなものなのか? は、アマ〇ンやグー〇ルで検索すると、理解していただけるだろう(※18才以上推奨)ただし、ここでは熊本県の熊をモチーフにした。誰にでも愛されるゆるキャラであったということにしておく。そんなエアドールなどはないのだが……断固そういうことにしておく。よしんば、そんなエアドールがあったとしても、仮にそんな目的で所持しているのだとしたら、むしろ通常の一般的な意味でのエアドール所持よりも罪は重く、心の闇は、より深いといえよう。


     ??


    「せっかくだ、他の部屋も確認しよう」
    「そうしようフタヒロ。せっかくだしな」

    エアなドールを確認した二人は、寝室のドアをそっ閉じして、小腹が空いたので台所にむかった。そこには扉があり、めずらしいことに鍵がかかっていた。しかし、こういうことの得意なさつきまるは、難なくそれを解錠してみせた。

    「さすがだなさつきまる。さすがだ」
    フタヒロはその鮮やかな手口に感心した。

    中に入った二人は、そこで冷蔵庫を空け、シュワシュワした液体の入った缶を手にとり、プルタブを起こす。プシュと心地よい音が耳にはいる。

    「うまいな」
    「ああうまいな」
    「タダだと余計にうまい」
    「そのとおりだ。さつきまる。盗み飲みは最高だよな」

    そうして、ひとごごちつく二人の視界に入ったのは、台所の隅にあった家庭用には似つかわしくない大型の冷蔵庫だった。優に人が入れそうなサイズだ。

    「なぁ? あれはなんだ?」
    「ガラナの奴は店でもやっているのか? 肉でも熟成させてるのかも」
    「と、すれば。旨いものにありつけるかもしれない、空けよう」
    「そうだな空けよう。そうしよう」

    さつきまるが大型の冷蔵庫の扉を勢いよく開けると――

    「!?」
    「おわああああああ!」

    逃れる冷気とともに、大きな質量が、おおい被さるようにさつきまるに倒れ込んだ。とっさに身を避けるさつきまる。

    ドシャ。と床に倒れ込んだ先にあったのは……。

    「これは……」
    「どうみても……」

    ふたりは顔を見合わせた。

    そこにあったのは――

    死体だった。

    大人の男性の遺体。

    「……おい、これをみろ」
    さつきまるが手にしたのは、遺体が倒れたときに、側に落ちた財布だ。そこには免許証がはいっていた。その氏名欄をみて二人は驚愕した。


    「「北乃……ガラナ……」」


    どうやら、この遺体の人物が北乃ガラナらしい。
    と、すれば。いままでの北乃ガラナは誰なのだ。
    先ほど就寝した彼はいったい……。

    そのとき、台所の扉のノブがうごいた。

    がちゃり。……ゆっくりとノブがうごいた。


    この殺人事件のミステリーを解き明かすのだよ(関川二尋)

    ??

    フタヒロとさつきまるは、同時にドアを振り返った。
    ゆっくりとノブが回っていく。
    「さつきまる、とりあえずドアにカギを!」
    「え?」
    「ボサッとするなっ!とにかくカギだ!」
    さつきまるは素早くドアに走りよると、ガチリと鍵をかけた。ドアノブが静かに回っているが入っては来れない。
    「フタヒロ、これはいったい?ドアの向こう、誰かいるんですよ、不法侵入しているのはわたしたちです!」

    ??

    「ふぅこれでとりあえず一安心だ。ちょっと状況が込み入って来たので、ドアの向こうの誰かには一時退場してもらおう」
    そう言ってる間にもドアノブはクルクルと回り、執拗に入ってこようとする誰かの意思を伝えてくる。
    「あの、いいんですか?」
    「ああ、こういう時はお互い顔を見ない方がいい、そう言うこともあるんだよ」
    さつきまるは心配そうにフタヒロを見つめたが、やがて外人のように軽やかに肩をすくめた。ケセラセラ、なるようになる。
    「それより驚いたな」
    フタヒロはガラナの免許証を指先でピッとつまんでいる。
    「なにがです?」

    ??

    「名前だよ、ペンネームと思っていたが、本名だとはな」
    「あ。ホントだ!ガラナは香羅奈って書くんですね」
    「ちょっと綺麗な女性を連想させるよな」
    「ですね。それより、これからどうするんです?」
    「きまっている。この殺人事件のミステリーを解き明かすのだよ。さつきまる、わたしはミステリーはとんと苦手でね、きみはどうだね?」
    フタヒロがそう聞くとさつきまるはパッと顔を輝かせた。

    ああ、残念だぜ。美味しんぼ14巻を読んだ時の気分だ(さつきまる)

    ??
    フタヒロがそう聞くとさつきまるはパッと顔を輝かせた。
    さあショータイムの始まりだ。
    思う存分、推理をすると見せかけて家探ししてやる!
    そんな、さつきまるの思いとは裏腹に事態はあらぬ方向へと進んで行く。

    「任せたまえワトソンくん。先ずはこの冷凍庫。この奥を詳しく調べてみ――フタヒロ何してるんだ?」
    「さつきまる、これを見ろ」

    凍っていた香羅奈をブレスで溶かしながら、一点を指差すフタヒロ。

    「ブレス……お前、人間じゃなかったのか」
    「いや、今それはどうでもいい問題だ。それよりココをみろ」
    「大問題だと思うが解った。こ、これは……」

    瞬間的に溶かされ、しなしなのほうれん草のようになった香羅奈には男性にあるまじき双丘があった。

    ??

    「香羅奈、女だったのか。顔はイケメンなのにな」
    「ああ、残念だぜ。美味しんぼ14巻を読んだ時の気分だ」
    「彼女には彼女なりの意地の張り方があった。それがコメディだったという訳か」
    「かも知れん。とりあえず揉んでおくか」

    フタヒロとさつきまるは、しなしなのほうれん草バストを揉みしだいた。しかし当初想像してたものより感触が悪く、コレじゃない感に襲われた。お世辞にも美乳とはいえない貧乳を揉むだけ揉み散らかして飽きた2人は香羅奈を冷凍庫に戻す事にした。
    こんな貧乳でもいつか誰かの役に立つ資源になると考えたからだ。

    ??

    「さて、じゃあ推理を再開しよう」

    何もなかったように、さつきまるが言った。

    「私達がガラナだと思っていたのは本人じゃなかった。」
    「うむ」
    「しかし本当にそうなのか? 私達は昔からガラナを知っていた訳じゃない。もしかするとあの冷凍死体はガラナではない可能性も否定できない」
    「まあ、そうだろうな。しかし、さつきまる、お前は推理しながら何をしてるんだ」

    フッ、と照れたように笑ったさつきまるは、手に持ったスナック菓子をちらつかせた。

    「まさかそれは!」
    「日本人の記憶から忘れ去られた、おっとっとの潜水艦さ」
    「それとこの殺人事件に何が関係あるんだ?」
    「フタヒロ、まだわからないのかい?私はもうこの殺人事件の犯人が解ったよ」

    そう言って潜水艦をピンと指で上に弾いて口に入れ、すぐさまペッと吐き出して台所を汚すさつきまるだった。


    館に迷い込んだフリーダムすぎる3人の若者(萱草真詩雫)

    真詩雫は親友・ウサギ・めこと散歩途中、道に迷い、ガラナの家の玄関を勝手に開け、ズカズカと土足で階段を上がり3人一斉に部屋のドアを叩いた。

    ーコンコンコンコンコンコンコンコン!!ー

    「スンマセーン!トイレ貸してくださーい!あ、タバコの火種床に落とした☆」

    「うさお腹空いたー!」

    「うさ、ちょいまち!鍵かかってる、あ…床燃えた」

    「めこ開けれるよ」

    めこがヘアピンを取りだし、慣れた手つきで部屋のドアの鍵を開けて二人に促し、真詩雫がバンッ!と扉を開ける。

    「しっけー、トイレどこー!」

    「あ、カブトムシ!!うさちっちゃい頃カブトムシなりたかったんだー!」

    「だからうさそれ、クワガタのがぜってぇ強いって!」

    「あ、美女の死体!写メ写メ」

    「フタヒロさん、さつきまるさん、ゆうけんさん、こんにちは。ベッドの下ならきっとエロ本あります。…牛だー!俺乳絞れる、うさ待ってて!」

    「カブトムシだよ!!早く乳ー!」

    「めこもー!」

    3人フリーダム。






    フ女子のみなさまお待たせしました。フタヒロとさつきまるのキャッキャウフフ回(関川二尋)

    「さすがだな、さつきまる。もう犯人がわかったとは」
    フタヒロはそう告げて、ヤレヤレと頭を振った
    「君の頭脳はすばらしい……なるほど、ヒントはコレだね?」
    フタヒロは吐き出された潜水艦のスナックを指先でつまんだ。
    まだペットリと濡れている、そして少しふやけかけている。

    「ワトソン、いやフタヒロ、今度は君が探偵かい?」
    「いやいや、僕はあくまで状況を整理したいだけだ」
    「それで潜水艦が何か?」
    「ああ、これを見て僕にもピンときたよ」
    「なんだよ、フタヒロもったいぶるなって!」
    さつきまるはフタヒロの脇をくすぐりにかかる。
    途端に笑い出してしまうフタヒロ。嫌がりつつも楽しそうだ。
    「はっはっは、もうその辺でやめたまえ」

    「それで、潜水艦の話は?」
    「おお、そうだった。まずは北乃ガラナと思われる死体が一つここにある」
    二人は今一度巨大な冷蔵庫をみつめる。
    今、あの中で北乃ガラナと思われる死体が冷凍されつつある。

    「犯人は、おそらく彼に恨みを持つ者の仕業だ」
    「うん。それで潜水艦は?」
    「その犯人は深く潜っているのだ」
    「それだけ?」
    「まぁ待て、深くというのは『ノート』のことだ。
     君も知っているように彼はつい最近まで『VAT』という小説を熱心に書いていた」

    「なんか強引な筋立てになってる気がするな」
    さつきまるはまたくすぐりにかかる。
    フタヒロは身もだえしながらまた馬鹿みたいに笑った。
    「ごめんごめん、もうダメ、許して」
    「それで?」
    「何の話か忘れ、いや、思い出した。容疑者はその小説に絡んでいた人物ではないかと思うのだ」
    「ということは、ひまわりサン、とか、つばきサンとか?」
    「ああ、それから名を残さないが読んでいた人たちも含まれる」
    「その中に犯人が?」
    「おそらくね。君の答えもそうじゃないかい?」

    と、再びガチャガチャとドアノブを回す音が響いたが、二人はまた無視した。



    もうひとつの扉の向こう側で(ゆうけん)

    ゆうけんは扉の前で思考する。もし、もしだ。このドアノブをガチャガチャ回したら……呑まれるであろう。大口を開けた物語の闇に。
    その物語は暗く何処までも続くか解からない無限の闇。
    「わ、私はこの扉を開く事が出来るのか…」
    小さく、とても小さく呟いた。

    手はドアノブの前で止まっていた。困惑の中、扉越しにフタヒロとさつきまるの声が聞こえた。うまく聞き取れないが、突然笑い出したりと尋常ではない事だけは伺える。

    そして、私は聴き覚えのある名前を耳にしたのだ。
    「ひまわりサン」「つばきサン」
    な、なんて事だ。この豪華メンバーに加えてあの二人が参上する可能性もあるのか!?

    私が踵を返そうと体勢を捻った瞬間であった。
    腹の中に冷たい異物が押し込まれる。痛みは感じなかった。感じる余裕も無かったと言える。目の前にいる人物はユーリ・トヨタ。彼が私の中にアレを付き立てたというのか? 冷たいものを伝って真っ赤な液体が流れた。意志とは関係なく膝を落とすと同時に意識が遠のいた。

    あ、あれは…彼は…ユーリ・トヨタではない…
    なぜならば…彼は今、風邪で寝込んでいるはず…なのだ…。




    蘇った怪物。 解き放たれてはいけないこの世の闇。(さつきまる)

    ゴトリ……

    「さつきまる、何か扉の外で音がしなかったか?」
    「フタヒロ、アトランティスの事を考えすぎて幻聴が聞こえたのか」
    「いや、たしかに今、音が……」
    「そこまで言うのなら仕方がないね。推理の途中だけど扉の外を見てみよう。このままだとアレみたいになるしね、アレみたいに」
    「そうだな、ああなってはもうどうしようもないからな。冥……なんだっけ?」
    「もうそのドラゴンの話はいいよ。中居と香取の共演でスマステの視聴率が8・3%になったぐらいどうでもいいよ」

    ??

    それは静かに眠っていた。

    何時迄も夢の世界をさまよえる。

    そう思っていた。

    しかし誰かが静寂を破ってしまった。

    凍結され、長い眠りに就いていたそれは、少しずつ、だが確実に覚醒へと近付いていた。

    冷凍庫を開け閉めしすぎたせいで蘇った怪物。
    解き放たれてはいけないこの世の闇。

    ガラナの死体の奥で眠っていたそれが、着実に再始動へのカウントダウンを始める。

    シン・チワワ――

    過去、人はそれをそう呼んで恐れた。



    またまた館の別の部屋で(壊れた人形)

    ??
    私は、目を覚めた。「大丈夫?」と声が聞こえた。私は、大丈夫と微かな声で掠れ気味に言った。
    +++
    その間、ドアが再びなった。今度こそ二人は開けた。そして、幽霊がふたりを襲った。幽霊がふたりを殴った後、冷凍死体をナイフで刺し、刺した跡が広かったのか跡は広がり、そこでお湯を入れた幽霊は冷凍の死体が解凍されるのを楽しみにした。しかし、そこに2人が入ってきて…




    室内には無数のカブトムシが飛び交った(振悶亭めこ)

    「初めまして?!あ、あの皆さん、お近づきの印にー、これをどうぞ!」
    牛から乳を直飲みする真詩雫を横目に、めこはやたらと膨れ上がったムラ◯キスポーツのショップ袋をフタヒロ、ゆうけん、さつきまるに差し出す。袋の中身は、蠢いていた。
    「さっき、うさも集めてたんだよー!貴重なタンパク源!カブトムシ!ほらやっぱりカブトムシのが強い!」
    唖然とする一同の前に、ムラ◯キスポーツのショップ袋が投げ出された。袋の紐が緩んだ瞬間、中から気持ち悪い程のカブトムシが飛び出す。
    「めこ、元気のいいコを選んでたんだー!齧られる前に、どうぞ?」
    牛の乳からいつの間にか離れていた真詩雫が、大きく息を吸う。

    「クワガタのが絶対強いってんだろう!」

    その咆哮も虚しく、室内には無数の元気過ぎるカブトムシが飛び交っていた。




    いっぽうそのころ。さつきまる邸で(ユーリ・トヨタ)

    時を同じくする頃、主人不在のさつきまる邸では二人の男が何かを物色していた。

    「残念ですが、なさそうですね……」
    「……うん、しょうがないな」

    残念そうに溜息をつく二人、どうやら上司と部下のようだった。

    「やはり、年代が違うんですよ」
    「そうかもしれないな、苦労してここまで来たんだがな」

    後ろの空間には銀色に光る半球体が静かに回転している。回るスピードは一定では無く、速くなったり遅くなったりを繰り返していた。速い時には強く、遅い時には弱く光る半球体は自分の意思を持っているようだった。

    「しかし、ここに来るまでにかなりのエネルギーを消費しましたよね、またエネルギーの無駄遣いだと時間制御部に怒られますね」
    部下の方が声をかける、その声には幾分かの自虐が込められていた。

    「そうだな、色々分析して、ここにはあると思ったんだがな。手ブラで帰ることになるとはな……、お前も覚悟しておけよ」
    上司の声にも自虐が込められていた。

    「やっぱりそうなりますか、嫌だなあ……」
    そう言う部下ではあるが、どこか嬉しそうでもあった。

    「どこで間違えたのかなあ、十分関係性を確認したんだが」
    上司は自分の分析が違っていることに不満だった。

    「年代が違えば全く思い入れも違うんですよ、多分さつきまる容疑者の頃には違う形に変わっていたんですよ、仕方ないですね。それより帰りますよ、準備して下さい」

    「何だ? 楽しくなってきたのか、しょうがないヤツだ(笑)」

    おもむろに二人はスーツの上着、シャツを脱ぎ捨て、上半身を露わにした。
    「じゃあ、帰りますよ」
    「ああ、わかった」

    二人の男は両方の手のひらで胸を隠し、半球体の中に消えていった。

    かくしてブルマー秘匿の捜査を任務とする捜査官の一日は、空振りに終わったのである。




    みせてもらおうか瓊英のエアドールとやらを(叶 良辰)

    「この二人もボットじゃないみたいね」
    コードネーム「HIMAWARI」が言った。
    「確かにボットじゃないけど、挙動不審ですこと。BANしてもよろしいのではなくて?」
    コードネーム「TSUBAKI」が答える。

    彼女たち二人はカクヨムにおける謎のボットを検証するため、AI北乃ガラナを送り込み、調査していたのだ。

    ちなみにAI北乃ガラナとは、カクヨムにおける治安維持ロボットで、開発時のコードネームは「ナイアガラの滝」だったのだが、初期不良が酷く、コンテストのダミーキャラとしてカクヨム本部から投下されたものの、結局10万字書けずにダミーとしての役割すら果たせず、廃棄処分になりかけたところを後発の二人に拾われた、という経緯がある。

    「いずれにせよ、この二人はもう用無し……」
    「まってTSUBAKI、もう一人エサにかかったみたい」
    「あらあら、こんなところにいらっしゃる変態さんが他にも? 甘い樹液に誘われる甲虫たちのようですわね」
    「えっと……ゆうけん? 聞いたことないわね? 最初にエアドールから試してみましょうか? とりあえずくまもんはハードル高すぎたので、無難に瓊英けいえいあたりで……」

    「別にわたくしのヴィジュアルを使っていただいてもかまわないですわよ? といいますか瓊英って誰かしら? えーっと検索では『水滸伝の登場人物。類まれな美少女で、武芸の達人。特に磔を得意とする』……美少女のくせに武芸の達人で磔が大好きって、変態さんですわね?」

    「それ磔(はりつけ)じゃなくて礫(つぶて)よ、TSUBAKI。とりあえず彼がどんな反応を示すか、見てみましょう」

    「固まりましたわ」
    「そのようね」

    「このヴィジュアルは彼の好みではないのかも。ここはやはりわたくしが……」
    「では扈三娘あたりで試してみるわ」


    「ってどなた? えーっと『梁山泊の女性頭領の一人で武芸も一流だが、敵を捕らえる術にも長けていた』ってHIMAWARI、水滸伝好きですわね」
    「どうかしら?」

    「怖がってますわね。やはりここはこのわたくし……」
    「じゃあ次はこれね」


    「えーっと、魯智深? 『全身に刺青がある筋骨隆々とした巨漢で、怪力の持ち主』ってこれ、男ですわよ? それもハゲ坊主!」
    「あっ! 間違えた! ちょっと待って! とり急ぎTSUBAKIに変えて……」
    「いや、ちょっとおまちくださいましっ! この方、ハゲ坊主に反応しちゃってますわっ! 顔を赤くしてモジモジと!」
    「うそっ! って今TSUBAKIに変えちゃったけど。あ、あれ? もっと喜んでるっ! いきなり鼻息荒くTSUBAKIドールに抱き着いたっ!」
    「え……っと……意味がわからないのですけど……」



    混沌の館に収束か? ついに光明な探偵登場(夕日ゆうや)

    「お前さん、名は?」
    「俺? 俺はゆうや。夕日ゆうや、さ!」
     そう。俺は迷探偵、夕日ゆうや。
     数々の事件を迷宮入りへと葬り去る謎多き探偵。
     『コルル村ストラッシュ!』という技で現場を荒らすことができるのだ。
     今日も今日とてその技を使い現場を一つ、迷宮入りにしたばかりだ。
     はっきりって本人は悪意を持ってやっている訳ではないので、なお質たちが悪いことでも有名だ。
    「さて次の事件は……」
     俺は次の事件の匂いをたどりふらふらとさまよう。


     ゆうやは探偵でも知られているが、実は大の動物好きでも知られているのだ。
     最近では特にチワワがお気に入りとのこと。
     ゆうやのアパートはペット禁止なので週に三回、ネコカフェや犬カフェを訪れるほどだ。

    「ご老人。この辺りでロボットを見かけなかったかい?」
    「はて? 見たかのう?」
     俺は秘密裏に開発されている新型のロボット。それを今、探しているのだ。
     ちなみに依頼主は恥ずかしがり屋なのか、直接会ったことはない。
     全て電話での対応だ。料金も前金という形で頂いている。
     俺は道行く人々に聞いて回る。

     この時の俺はまだ、この依頼の重さに気づいてなかったのだ……。



    台所をとびかうカブトムシ。虫嫌いにはGとおなじ(萱草真詩雫)

    「あ…カブトムシ飛んだ」

    カブトムシが部屋の中をブンブンフリーダムに飛び回るのを、めこが眺めると。

    「ギャー!ゴ?ブリィイ!!うえぇっ…!」

    虫、特にアレが大の苦手な真詩雫は発狂し、口元を押さえようとするも間に合わず吐瀉する。

    「カブトっつってんだろっ!!」

    ここでウサギが喧嘩を売り出した。

    「あんな黒光りしたもんどっちもどっちだ!!」

    真詩雫もくってかかる。

    頑固と頑固のぶつかり合い。

    「マシロさっきクワガタ強いっつった!」

    「それは喩えの話だろうがっ!!」

    「おぉ、男同士のストリップショー!」

    めこは違う意味で興奮し、さつきまるとフタヒロが脱ぎ出すのをしゃがんで顎に両手を当て、目を輝かせて見つめる。

    ゴキに似たカブトムシが飛び交い、色々悲惨な状況の中、

    ギャーギャーと騒いでいると。

    ーゾクッ…


    「……?」

    真詩雫が悪寒を感じ両腕で身体を抱き締め擦りながら、首を傾げた。


    ー…監禁ー

    真詩雫にとって、思い出したくない過去。

    けれど何処か愛した人の面影を追っていたのは此処だけの話。

    ??

    無数に飛び交うカブトムシが服のなかに入ったのだろう。台所にいたさつきまるとフタヒロが脱ぎだしたのをみて、めこは熱い視線をむけるのだった。



    館にすいこまれる人生の迷子『橘ミコト』(橘ミコト)

    「で? ここはどこだ?」

    正直に言うと、俺は道に迷っていた。
    なんだか不思議なロボットを見かけて、気になって追いかけてみたのだが、気が付いたら知らない景色の中で異様な雰囲気を醸し出している家の前へと導かれる様に立っている。

    「スマホは……げ、電池切れだ」

    肝心な所で役に立たないスマホを苛立たし気に尻ポケットへねじ込むと、しょうがないので目の前の家の住人に道を聞いてみようと思い立ち、少々ビビリながらも玄関口へと近づいていった。

    「すんませーん、っていう人生の迷子なんで、ちょっと道をお聞きしたいんすけど、誰かいませんかー?」

    コンコンと玄関扉をノックするも、誰の返事も聞こえない。
    いや、正確には声は聞こえる。
    やたらハイテンションに騒いでいるのか、家の中からは罵声の様な、怒鳴り声の様な、じゃれ合っている声らしき物だ。
    あと、変な虫でも飛んでいるのか、結構な音量の羽音も聞こえる。

    「絶対、ヤバイ人だ、これ。他の家に……。あれ? 鍵が開いて? って、うおおおぉぉぉ!?」

    扉を叩いた拍子でなのか、僅かにドアが開いている事に気付いたが、それと同時に家の中から何か黒い物体が顔面めがけて飛び込んでくる。
    脊髄反射する様に顔を逸らすも、勢い余ってその黒い何かを思い切り叩き落そうと張り手をかましてしまい、ベシャっと果物が潰れる様な音が足元から聞こえた。

    「ひぃっ!? ゴ〇ブリ!? うわ、触っちゃったよ、キショッ!?」

    玄関口には黒い昆虫らしき生物がピクピクと原型が分かる位に潰れていいる光景が突如として広がる。

    しかし、今振り返ってみると、俺はここで逃げ出していればよかったのだ。

    ブーーーーーン。

    先ほど、玄関扉越しに聞こえた羽音が盛大に耳朶を揺るがすと、俺は恐怖に顔を引きつらせながらゆっくりと家の中へと視線を向ける。

    「ぎゃ……ぎゃあああぁぁぁぁ!?」

    それだけ叫ぶと、顔面に向かって飛んでくる黒い塊――イニシャルGらしきものの大群を回避する様に頭を下げ、前転しながら思いっきり家の中に飛び込んでいってしまった。




    カクヨム作家が大勢集まっている、これは異常事態(関川 二尋)

    「ハッ」
    最後の一枚を脱ぎかけたところでフタヒロは我に返った。
    「おい、さつきまる、しっかりしろ!」
    フタヒロの声にシャツのボタンをはずしていたさつきまるが我に返った。
    フタヒロの
  • カクヨム作家が大勢集まっている、これは異常事態(関川 二尋)

    「ハッ」
    最後の一枚を脱ぎかけたところでフタヒロは我に返った。
    「おい、さつきまる、しっかりしろ!」
    フタヒロの声にシャツのボタンをはずしていたさつきまるが我に返った。
    フタヒロの目はその手元にくぎ付けになった。
    「キミは……」
    そういって手のひらで目を隠す。
    でもちょっと指を広げて完全には隠していない。
    ちょっとその女性用の、胸用の下着が見えていたのだ。

    「いや、なんでもない。それよりみんな聞いてくれ!」
    フタヒロはとつぜん大きく声をかける。
    みんなが一瞬手を止めてフタヒロの言葉を待つ。
    「こんなにカクヨム作家が大勢集まっている、これは異常事態とは思わないか?」
    みんなはボケーっとフタヒロを見ている。
    フタヒロは得意げだ。

    「実はさっき、私はスマホでカクヨムをチェックしようとしたら、ログインできなくなっていた」
    「え?」
    さつきまるもあわててスマホを取り出し、チェックする。
    「ホント、わたしのも!アカウントが消されている」
    「どうもSF的な流れになってきておかしいと思ったんだ」
    さぁどうだ!と言わんばかりのフタヒロ。
    やはりみんなはボケーっと口を開けて次の言葉を待っている。

    「分からないか?我々は北乃ガラナに集められたんだよ」
    「え?何のために?」
    「彼は問題作家を集めているんだ!たぶん彼はカクヨムの運営側の人間なんだ!」
    この発言にみんながざわめく。
    そしてさつきまるがみんなの疑問を口にした。
    「いったい何のために?」
    「それはだね……」




    壊れた人形というカクヨム作家の闘い(壊れた人形)

    一方、壊れた人形は理解出来なかった。そして、同時に震えてもいた。その他の部屋と密接的に繋がった部屋にいた壊れた人形は、隣の部屋から色々な声が聞こえて、自分は誘拐的なことをされて、逃げなきゃいけないと察し、逃亡を開始した。

    +++

    しかし、幽霊が襲ってきたのだ。壊れた人形とその幽霊は顔が似ており、壊れた人形はその幽霊が双子の妹だと分かった。前、冷凍死体か壊れた人形に殺されたのだ。しかし、壊れた人形が殺したことに違いない。

    +++

    幽霊は恨みや姉に会えた嬉しさなどが混じった複雑な感情を抱いていた。しかし、今は憎しみの方が勝っている。そして、会話しているうち、幽霊と壊れた人形の後ろに大量の蟲が襲ってきた。双子のどちらもそれが嫌いで、必死に逃げ回った。壊れた人形は倒れかけるも、必死に幽霊の声で意識を取り戻した。
    一方、別の部屋では…



    「さぁ……コメディをはじめよう」『カクヨム館』のナイトメアモード(北乃ガラナ)

     館の台所でカブトムシの大群に襲われ、さつきまるとフタヒロ。マシロを含めた若者三人が阿鼻叫喚の最中。

    ――同時刻。

    屋敷の外にひろがる広大な森の中。老人に指さされた先を進む、探偵『夕日ゆうや』の姿があった。

     こんかい、彼に寄せられた依頼である、『秘密裏に開発されている新型のロボット』を探していたところ、近くの村の老人から重大なヒントが得られた。曰く「不気味な機械人形が屋敷の中に入っていくのをみたのじゃ」と。それを聞いた、探偵の足取りは軽い。

    「匂う……事件の香りがしやがる」

     そう、彼は探偵にありがちな特有スキル『事件の現場になぜか居合わせる』スキルを有していた探偵だった。

     そんな彼が屋敷の前に立った。多くのカクヨム作家が吸い寄せられている謎の館。

    「……ここか? 館の中からプンプンと匂う」

     夕日ゆうやが眺めた、その屋敷は、屋敷というにはあまりにも巨大で異様なものだった。全貌は森に阻まれ、うかがい知ることはできない。

     異様と言えば、そのデザインがなにより異様だった。

     無秩序に建て増しされたと思われるツギハギのような部屋の数々。
     逆さの扉やゆがんだ窓枠。斜めにそびえ立った、突き刺さる無数の塔に煙突。全体的に童話の絵本の挿絵を思わせるような不自然にカラフルな色彩。

     ……そう、まるで米国にあるというウィンチェスター・ミステリーハウスを想起させる。この世ならざる異様な屋敷だった。

     常人ならば、その屋敷の外観だけで尻込みし、いま来た道を真っ直ぐもどるだろう。しかし彼は『夕陽ゆうや』は、ちがった。

    「ぎゃ……ぎゃあああぁぁぁぁ!?」という悲鳴が、森に響き渡った。

     空気を伝わる振動に刺激され、ガァーガァーと無数のカラスが飛び立つ。

    「これは事件だ事件だ事件だ事件だ事件だ事件だ」

     気づくと夕日ゆうやは、屋敷の中に走り込んでいた。
     眼をらんらんと輝かせ、頬を上気させて……。


    ??


     屋敷の窓のどこからか、たたずむ影。
     その様子を眺める主。

    「かかった。また……ひとり」

     口の端が異様なほどにつり上がっている。

    「さぁ……コメディをはじめよう」

     屋敷の中の主はそんなことをつぶやいた。

    「……最高のコメディを、ボクに」

     その肌は白く、男性とも女性とも思えない相貌をしている。しかし、その瞳はどこまでも仄暗く……周りの暗闇と同化して、溶け込んでいた……。



    くり返す殺戮の自動人形(壊れた人形)

    一方、刺された死体は、幽霊によって凍らされた。それは、さっきの幽霊ではない謎の存在だった。
    +++
    大群から逃れられた2人は、ゼェゼェと深呼吸を繰り返した。気持ち悪い感覚に襲われながらむせた壊れた人形に、幽霊は背中をさすった。幽霊は、壊れた人形を殺すはずがその感情が消えたのだ。そして、2人は呟いた主を見て、気絶しかけた。
    +++
    なんとか目覚めた2人は、さっきから息の合った会話を恐れていた。その怖さをごまかすかのように壊れた人形はアコギを持って、弾き語りをした。幽霊は、それを微かに微笑んだ。そして、さつきまるの部屋に向かった。
    +++
    一方、ほとんどのメンバーは死体が行方不明になったのに疑問を感じた。しかし、さつきまるは「幽霊が襲ったんじゃないですか?壊れた人形さんを襲った幽霊とは別の幽霊に。」と言った。そして、壊れた人形が到着した。ハァハァ、ゼェゼェ。そうまた疲れたのか息を繰り返した。しかし、残りの体力を絞り「さつきまるさん、早くあなたの家に帰りましょう」と言って倒れた。否、倒れかけた。壊れた人形は、妹である双子の幽霊を見ながら目をつぶりかけた。
    +++
    一方、さつきまる邸。二人の捜査官がいた。ある目的があった捜査官は、企み笑いをしながらあることを呟いた。「さつきまるは犯人だ。」と。
    +++
    しかし、さつきまるの死体は誰かがなりすましていた。厳密に言うとその可能性が濃厚だからだ。だって、さつきまるがガラナ邸にいたからだ。




    サイバー犯罪課刑事。相良・うみ・叶がついに登場(相良壱) 

    とある邸宅に集められた者達――
    そして、宣言する北乃ガラナ。
    まさに蟲毒が如きデスゲームが火蓋を切って落とされた。



    ??



    その一方――
    警察庁サイバー犯罪課にある一通のメールが送られてきた。

    『今からデスゲームを始めます。僕は人をいっぱい殺します。でも、警察ってのは事件が起こってからしか動けないんですよね? 全く滑稽です。でもね、僕は殺しますよ! 全員殺してみせます。それでも……人が死ぬってわかってても警察ってのは事件が起こってからしか動けないんですよね? 人が沢山死ぬとわかっていてもなにも出来ないんですよねwwwww 僕は沢山殺します殺します殺します……殺してやんよ!! いっぱい殺していっぱい気持ちよくなっちゃいますよ!! あー、たのちい!! いっぱい逝っちゃいそう!!』

    全く……ふざけた奴がいたもんだ。
    どうして技術は進歩しても人間ってのはこうも進歩しないのか?
    私はメールの内容を見てうんざりしていた。

    「どう思う? 相良」

    脂ぎった中年のハゲ親父だった。

    彼の名前は二階堂 うみ。
    ベテランの刑事でサイバー犯罪を専門にやりたい放題やってるハゲ。
    こんなクソみたいなメールを私に見せてきた張本人である。

    「うみさん……これはギャグでやってるんじゃないでしょうかね? いるんですよ、定期的にこういったバカなことをする奴が……」


    その言葉にうみはハゲた面持ちで話し始める。

    「いやな……俺はなんとなく、こいつが助けてくれって言ってるように感じられたんだ。だから、お前にこうやって相談してるんだが……」

    うみさんは私の上司だが、事あるごとに相談してきやがる。
    それは別に嫌な感じはしなかったし、仕事だからって割り切ってるから問題はないのだが……。

    助けてくれって言ってるような感じ――

    ハゲたおっさんが真面目な顔して何を言ってるんだか……。
    私はそのギラつかせたハゲ頭と真剣な表情にミスマッチな言葉を聞いて、ぷはっ! と思わず吹き出す。

    「うみさん。それはないですよ。こいつは愉快犯気取りの真性構ってちゃんに決まってます。それに、こんなメールをいちいち気にしてたら身が持ちませんよぉ」
    「だがな……」

    うみさんのハゲ頭に険しいものが浮かびあがる。

    事実、サイバー犯罪課ではこういった愉快犯的なメールなんてのは日常的に来ていた。だから、さほど気にすることではない。

    例えば、

    『今から人をぶっ殺す!』
    『警察は腐ってる! だから正義の雷をお前達に落とす』
    『ふんもおおおおおおおおおおおおおおお!!』

    などなど……。
    そんなメールを送ったところで実際に犯罪を犯すわけがない。うみさんだってわかっているはずだ。こんなことに一々、構っていたら身が持たないってことを……。

    だから、私はうみさんに言ってやることにした。

    「うみさん……悪いんだけど、これは事件になる感じじゃないよ。今までもそうだったじゃないか」
    「わかってるよ! 確かにそうなんだが、俺は何となく嫌な予感がするんだ」
    「全く……うみさんは神経質だなぁ。だからハゲるんだよ」
    「うおい!! いい加減にしろよ! 相良!」
    「はい。サーセン!」
    「お前ってやつは本当に……」

    ドスン――
    肩に重い一撃が入る。

    「いてて……うみさんはすぐ殴る! 暴力反対!」
    「うるせえ!」

    いつもとなんら変わりない日常になるはずだったんだ……。
    けれども、それを変えたのは一本の電話だった。

    「うみさん、内線来てますよ。捜査課からです」
    「いい加減にしろよ、相良! お前が電話を取れよ。それがお前の仕事だろう!」
    「はいはい……わかりましたよ。そんなに熱くならないで下さい」

    さしずめ……茹でタコみたいですよ?

    本当のことだが胸の中にしまって置こう。だって、殴られるのも嫌だったしね。それでも私はうみさんのパワハラ寸前の命令によって鳴り響く電話の受話器をとって対応することにした。仕方がない。こんなハゲでも一応私の上司なのだ。

    「はい。こちらサイバー犯罪課」
    『おっ? 相良か? 捜査課の叶だ。実はな……探してもらいたい奴がいるんだが?』
    「捜してもらいたい奴……ですか?」
    『ああ……』

    捜査課からの電話の内容はこんな感じ。

    下着泥棒さつきまる――
    こいつの行方が消えた。
    逮捕する寸前に姿形を残さずに消えたとのことだった。

    「つまり、その変態の行方を捜して欲しいってことですね?」
    『そうだ。お前達はそういうの得意なんだろう?』
    「はい。わかりましたよっと……ちょっと待って下さいね」

    私はパソコンでさつきまるが持ち得るデバイスのあらゆる情報をちょちょいと調べる。


    すると――

    愕然とすることになる。

    アホな殺人予告をした愉快犯から送られてきたメールはさつきまるのスマートフォンから送られてきたものだったのだ。

    「ほらな? 俺の勘が当たっただろう?」

    横から私の会話を盗みぎ聞きしていたうみさんだった。あろうことかパソコンから出た結果を覗いて、勝ち誇ったかのようにニヤニヤしながら言いやがったのだ!

    クソッ……!!

    悔しいが……うみさんの勘に間違いはなかった。
    そうだ……今までもそうだった。

    そして、
    そうなると決まって――

    「おい……相良行くぞ」

    ハゲがコートを纏った。

    「えっ……? もしかして、うみさん……行くつもり?」
    「もちろんだ。それにお前も一緒にだ、相良! こんな面白そうな事件をほっておけって言うのかよ!」
    「こんなの捜査班に任せておけばいいじゃないですかー。いやだああああああああああああ!!」

    私はいやいやうみさんに引きずられながら、下着泥棒さつきまるのスマートフォンのGPSが示した場所へ向かうことになる。

    そして、事件は起こってしまう。

    そう……。
    事件は現場で起こっているわけではない。
    事件は現場に行っちまうから起こるのである。




    物言わぬ器と化した『さつきまる』の亡骸(さつきまる)

    ??

    「こんなこったろうと思ったぜ」

    相良とうみはGPSを辿り、物的証拠となるスマートフォンが『安置』されている場所へ行き着いた。

    「うみさん、一体これは……」

    相良は予想だにしなかった目の前の光景に驚愕を隠しきれない。
    ポタリ、ポタリと禿頭に落ちてはツルッと流れる液体を拭きながら、うみは無言でビニール手袋をはめる。

    そして血塗られた花束に差し込まれていたスマートフォンを抜き取ると証拠品保管袋へと収めた。

    ??

    彼等が辿り着いたのは、とある森の館。
    壊れていた扉を開けて進んだその先にはキリスト教の礼拝堂を模した空間があった。

    但し通常十字架が掲げられているべき場所にそれは無く、それを補完するかの如く一人の人間が張りつけられていた。

    喉、右胸、両の掌、そして臍。

    トレースすると寸分たがわぬ正確さで直角に交わる『杭』の配置にこの惨状を産み出した犯人の猟奇性を窺い知ることが出来た。

    そしてご丁寧にも、死体の足元……流血の位置を正しく計算して置かれた無数の花束。

    元々は白い装花であっただろうそれらの色は、相良とうみをあざ笑うかのように今も尚、ドス黒い朱へと染まり続けている。

    「ん、これは?」

    そして装花の隙間、スマートフォンが挿されていた花束の下には一枚のクレジットカード。

    「MARU SASTUKI……さつきまるだとっ」

    物言わぬ器と化した さつきまるの亡骸。
    悍ましくも美しく飾られたそれは、正しく犯人からの挑戦状に他ならない。
    その証拠にクレジットカードの裏には犯人の署名らしきものがあった。

    『Niagara Falls』

    「チッ、こんなこったろうと思ったぜ」

    うみが再度そう口にするが、その口調には先程とは違う激昂が含まれていた。

    ??



    迷推理スキル発動!『コルル村ストラッシュ!』(たまご)

     一方、叫び声を聞いて館へと駆け出した迷探偵――夕日ゆうや。

     彼は森林の中、生い茂る草木を必死にかき分け、不気味に灯りが点いている館へと一人走っていた。
     ようやく館の玄関にたどり着いた彼が、軋む音のする扉を開けるとそこには――。

    「な、なんて事だ……っ!」

     目の前に映る光景に戦慄し、思わず後ずさってしまう。
     館の入り口では、一人の男が下半身を丸出しにして倒れていたのだ!

     だが、これは偶然ではない。
     夕日ゆうやが『事件の現場になぜか居合わせる』スキルを常時発動させているせいだ。

     彼は尻を出して倒れている男の姿を、手がかりを探るように観察する。そして、衝撃の事実を目にした。

    「ケツの穴から血が出てるっ!」

     が、不審な点はそれだけではない。

    「……彼は一体、何を握っているんだ……?」

     ケツをさらけ出した男は、なぜか右手に「たまご」を持ち、左手には何かを護るように、力強く握られていた。

     夕日ゆうやは、その左手を強引に開く。
     すると――左の手の平には「しめった潜水艦のおっとっと」が握られていた。

     正直、意味がわからない。
     夕日ゆうやは叫んだ。

    『コルル村ストラッシュ!』

     彼がそう叫んだ――刹那。
     夕日ゆうやの思考回路が歯車が噛み合ったかのように回転し始める。

     迷探偵、夕日ゆうやは『コルル村ストラッシュ!』と叫ぶと、目の前の状況を冷静に分析し、何が起きたのか迷推理する事が出来る。

     彼は目の前の手がかりを見て、呟きながら推理を始める。

    「ケツの穴から出血、右手にたまご、しめった潜水艦のおっとっと、チワワ、週に三回、ネコカフェ、犬カフェ……」

     今、彼の脳内はフル回転し、アドレナリンが全身を駆け巡っていた。
     その脳内では、常人では到底計り知れない演算がされている。

    「ケツの穴から出血、右手にたまご、しめった潜水艦のおっとっと、チワワ、週に三回、ネコカフェ、犬カフェ……」

     まだだ。まだ足りない。
     決定的な何かを掴むには……もっと推理する必要がある。

    「ケツの穴から出血、右手にたまご、しめった潜水艦のおっとっと、チワワ、週に三回、ネコカフェ、犬カフェ……」

     夕日ゆうやは何度もそう呟いた後――突然、カッと目を見開いた。

    「なるほど――そういう事か! この男は、犯人にケツを掘られている!」
  • ふたたび館へ……。逃れ得ぬ魔の運命(橘ミコト)

    「ひぃ、ひぃ、ひいぃぃぃ!?」

     入口で頭文字イニシャルGを回避したと思ったら家の中はやつらの巣窟と化していた。俺はまんまとおびき寄せられたみたい、泣きそう。
     体感では数時間にも及ぶ逃走劇を繰り広げ――実際は数分だろう――俺は「外に出ればいんじゃね?」という事に今更ながら思い至る。
     周りの確認などしていなかったがなんとか入口までたどり着くと、そこには1人の男が、

    「なるほど――そういう事か! この男は、犯人にケツを掘られている!」

     とか訳の分からない事を叫んでいた。

    「邪魔だあぁぁぁ! どけぇぇぇ!!」

     とにかく魔の手から逃げ延びたかった俺は、そんな事などお構いなしに彼を突き飛ばそうとするが、すれ違い様にガッチリと腕をホールドされてしまう。

    「おい! 待て! さては君、ホモだな!?」
    「唐突に何でホモ認定されてんの!?」
    「しかも体に犬の毛が付着している。……チワワを家で飼っているだろう!」
    「飼ってるけど、だから何!? って、それどころじゃないんだよ!」
    「もしや……君もホモに襲われそうになっていたのか!?」
    「思考をホモから離しませんか!? 何、あなたホモなの!?」
    「失敬な! 僕はバイだ!」
    「知りたくもなかったよ!!――あ」
    「ん?」

     家の中をかけずり回る事で、からくも”名前を言ったら30匹くらい出てきそうなアレ”を撒いていたが、遂に補足されたらしい。
     
     目視できるほどに近づかれたやつらの頭部からは触覚の様な角が生え—―ん?
     なんかちょっとGとは違う気がするけど、あれだけの量がいたらどちらにしろ気持ち悪い。逃げの一手は変わらないから気にする事を放棄した。

    「なんだ……あれは……?」
    「もはや何でもいいよ! とにかく手を放すか、ここから一緒に逃げよう!」
    「何を馬鹿な事を君は言っているんだ? 僕がここから逃げる? ハハッ! 冗談も休み休み言ってくれよ!」
    「ガチだよ!?」

     もはや一刻の猶予も無いと判断し、強引に男の手を振りほどく。
     相手も意識を飛翔する物体Gに逸らされていたせいか、案外すんなりと解放された事に安堵しつつ、俺は一目散に昆虫屋敷を逃げ出した。


     👓


     それから、どれだけ走っただろうか?

     とりあえず屋敷の前に伸びていた一本道をまっすぐ走ってきたのだが、かと言って見知った道にたどり着けた訳でもない。端的に言って、迷子から転職できなかった様だ。

     本当に人生何が起こるか分からないな!

    「うーん、本当に何がなんだか分からん……。って、何か持ってる?」

     先ほどまで必死になりすぎていて全く気付いていなかったが、いつのまにか何かを握りしめていた事に自分でもビックリする。
     家の中で勢いを殺さずに角を曲がったりする際に、壁際の物を何か掴んでドリフトの様な事をやっていたが、その時にでも掴んだか?

     あんな家で拾った物など気色悪いと顔を顰めながら恐る恐る手を開いてみると、そこには握り潰したせいでクシャクシャになっている一枚のカードがあった。
     カードなど何故掴んでいるのか疑問に思いながらも広げてみると、そこには『Niagara Falls』と書いてある。正直、意味が分からない。
     不審に思いながらもカードを捨てようとしたその時、

    「おい、貴様! そこで何をやっている!」

     突然の怒声に驚き思わず直立不動の姿勢になってしまった。
     その一瞬の内に、二人の警官らしき人物が自分をガッチリと拘束される。

     今日は厄日だ。

     絶対にそうだ。

     もうやだ……お家帰りたい……。

    「怪しい奴だな……。ここで何をしていた?」

     着古してくたびれ切ったワイシャツを着こみ、脂ぎった頭をテカテカと光らせながら中年のハゲ親父が俺へとすかさず詰問してくる。
     見た目は冴えないおっさんだが目には凄味が宿っており、そのギャップとこの状況にすっかり混乱してしまった俺は、

    「に、逃げてました……」

     素直というよりも阿保みたいな言葉しか口にできなかった。

     すると、俺を逃がさない様にしていた二人の目が一気に真剣味を帯び、さらなる地雷を踏んでしまった事を悟る。

    「……現場が気になって戻ってきたという訳か。少子抜けする程あっさりゲロったな」
    「本当ですね。私もビックリですよ」

     二人とも心底驚いたといった様子で目を見開いているが、俺の方が驚いてると思うよ?
     ”アレ”から逃げるのが罪なら、全人類犯罪者だよ。
     犯罪発生率とか考えるのがバカらしくなるからやめよ?

    「あの、何が何やら……」
    「「ん?」」

     流石に可笑しいと思ったのか、警官は俺の話に耳を傾けてくれるようだ。よかった、思ったよりもいい人たちっぽい。

    「じ、実は――」


     👓


    「なるほど。そりゃ大変だったな」
    「まあ、気の毒っちゃ気の毒ですね」
    「え? 俺の責任もある感じですか?」
    「責任というか……言っちゃあ何だけど、それ一応不法侵入だし」

     確かに!

    「ああ、悪い、俺はこういうもんだ」
    「私はこういう者です」

     そう言っておもむろに取り出された手帳には「うみ」、「相良」とそれぞれ書かれていた。どうやら本当に刑事さんらしい。別に疑ってたりはしていなかったが。

    「じゃあ、大きな道まで連れてってやるよ――相良が」
    「ええ!? 無理矢理現場に連れてきた上にそんな事まで押し付けるんですか!?」
    「うるせえ!」

     結構な威力のありそうなパンチが相良さんの肩口に入る。
     うわぁ、これがパワハラかぁ……。

    「わ、分かりましたよ!」
    「おう、じゃあ坊主はこいつに付いていきな。もう迷子になんてなるんじゃないぞ」
    「そこまで子供扱いされると逆に新鮮ですわ」
    「それだけの軽口叩けるなら――って、お前、何を握りしめているんだ?」
    「あ、これはさっき話した家で拾ったと言うか、いつの間にか握っていたと言うか……」
    「窃盗ですか」
    「違います! 不幸な事故です!!」
    「まあ、とにかく、一応こっちで預かっとくから渡しな」
    「はい、よろしくお願いします」
    「ああ。……お前、ちょっと待て」
    「はい?」

     面倒くさそうに俺を案内しようとしてくれている相良さんの後についてその場を離れようとした時、うみさんに突然呼び止められた。



     何だか分からないが物凄く嫌な予感がする。

     こういう時の俺の勘って案外当たるんだ、残念な事に。



    「急遽、お前は重要参考人になった。一緒にその屋敷とまで向かってもらう」

     絶望してもはや感情の抜け落ちてしまった様な顔をしている俺に、うみさんは『Niagara Falls』と書かれている紙をピラピラと振りながらそう宣言した。



    禁忌魔術と恐怖の魔力源(相良壱)

    北乃ガラナの正体は魔術師である。
    彼の根幹は魔術の本場であるイギリス。
    とある魔術を研究していた子孫にあたる。

    とある魔術とは禁忌であった。

    ガラナの先祖は禁忌の魔術(やばいレーティング)に手を出してしまった。

    よって、仲間の魔術師から迫害を受け、東の果てである日本へと何とか逃げ込むことになる。そこで影のようにひっそりと身を隠し、子孫と秘術を密かに残していった。

    そのためガラナの容姿は白人の血が少々混じっており無駄に容姿端麗であった。

    さて、彼の目的は禁忌の魔術を完成させて一族の悲願を成就させること。

    そのために饗宴の“生贄”を用意したに過ぎない。
    即ち、館にホイホイ釣られてきた者達こそがそれである。

    全ては彼が仕組んだこと――
    ならば、これはガラナにとってのコメディ以外の何物でもあるまい。
    ならば、コメディに欠かせない道化とは一体誰なのか?

    ふと、過ったのは生贄の誰でもなく自身の美しい姿だった。

    「ふっ……存外、僕自身なのかもしれないな」

    皮肉とナルシストっぽいセリフが石に囲まれた部屋に反響することなく沈んでいく。

    魔術で屋敷の者を監視しながら、片手に芋焼酎のロック割に沈めた氷をカランカランと鳴らし、今宵の恐怖の味を楽しむ。

    その恐怖こそが、ガラナにとっての魔力の源であるのだから……。



    《手ブラ》(ユーリ・トヨタ)

     一方その頃、銀色に光る半球体でさつきまる容疑者の邸宅を去った二人は、未だ上半身裸の手ブラであった。

    「課長、捜査が手ぶらの時は手ブラで帰るしきたりって、いつ頃から始まったんですか?」
     若い捜査官は疑問を口にする。

    「実は俺もよく知らないんだが、遥か昔の先輩が手ぶらの時に手ブラで帰ったら意外にウケたらしいんだ。まったく余計なことをしてくれたもんだな」
     課長と呼ばれた男はため息混じりに応えた。

     この男たちの捜査対象はブルマーを秘匿している容疑者の摘発である。ブルマーと言えば西暦でいうところの1960年代から90年代初頭の僅か30年の間、東洋の島国で流行した性的刺激物であった。現在は非合法なものとされ、その摘発と捜査は麻薬撲滅と並んで連邦政府の重要課題とされている。

    「僕は手ブラで帰るのは三回目なんですよ……、少し慣れてきましたけど、やっぱり課長には敵いませんね」
     羨望の眼差しを向けられた課長は苦笑いをした。

    「この技術も習得するのに結構かかるからな、手ブラの状態で少しだけ指を広げて色の変わった部分を見せる、これが簡単なようで難しいんだ」
     課長はその場で実践してみせた。

    「そうなんですよね。モロに見せると興ざめですし、幅が狭いと影で見えませんからね。やっぱり課長の手ブラは名人芸ですね」
     若い捜査官は課長の真似をするが、指の隙間を広げるとどうしても突起の部分が見えてしまうため難儀していた。

    「それはそうと、今日のお仕置き担当は誰だったかな?」
    「たしかトスンパ主任だったと思いますよ」

    「あいつか……、あいつの洗濯バサミは本気だからな……」
     苦い顔の課長は痛みに耐える表情をしてみせた。

    「……本気なんですか? トスンパさん……」
    「ああ、普通はそれ専用のバラエティ洗濯バサミか、バネの弱った古いものを使うんだが……、あいつはな……」
     それを聞いた若い捜査官の顔がますます曇った。お仕置きされる突起物のあたりを不安そうに撫でている。

    「新品の強力なやつを使うっていうウワサ、本当だったんですね……」
    「そうなんだよ。いくらバネ定数の強さに従って報告書の枚数を減らして貰えると言っても、限度があるからなあ」

     課長の言葉が終わる頃、半球体が目的地に到着した旨のアナウンスが流れた。何の音もなく半球体の一部が開き、外部から眩しい光が差し込む。

     二人の男は手ブラのまま外へと消えていった。



    フタヒロは整った顔を苦痛にゆがませた。その整った顔を(関川 二尋)

    👓
    屋敷の玄関で騒動が持ち上がった時、
    ツバキは屋根裏からその様子をうかがっていた。
    彼女の手元には賞味期限を過ぎドロドロになったエクレアがあった。
    彼女はそれをためらいもなく口に入れ、嬉しそうにつぶやいた。
    「ウン♡スッパイ♬」
    が、次の瞬間、彼女の切れ長の二重が大きく見開かれた。
    「あ!大きなエクレア!」

    そうつぶやいた彼女が見ていたのはフタヒロの死体であった。
    探偵「夕日ゆうや」が推理を働かせている間だった。
    その死体がドロドロに溶けだしていた。
    かつてフタヒロだったそれは粘液を出しながら、手元のエクレアそっくりに形をなくしていく。
    だがそこに乱入したもう一人の男の騒動により、その様子はツバキ以外に気付く者はいなかった。
    そして騒動が収まった時には、かつてフタヒロだったドロドロは床に溶けるようにその姿を消していた。

    👿

    「ガラナさま、手筈通りに……」
    無駄に容姿のいいガラナが、芝居気たっぷりに振り返る。
    そこにいたのは膝を折り、首を垂れているフタヒロであった。
    彼はいつの間にか人間の容姿を取り戻していた。
    「フタヒロ、さすがに手際がいいな」
    「ハッ。もったいないお言葉です」
    「そういうな、さすがはオレの片腕、よくもまぁこれだけの生け贄を集めてくれた」
    「ああいう手合いを騙すのは簡単です。ですがさつきまるを取り逃がしました」
    フタヒロは整った顔を苦痛にゆがませた。
    「アレか、あれはいつも予想外の行動をする、だがまぁそれも一興」
    ガラナはグラスの液体を飲み干し、再び窓の外に目をやった。
    「……いいのだよ、アレはいつも私を笑わせくれるからな……」



    「盗んだのは貴方の心です」系の大泥棒『しめさば』登場(しめさば)

    🐟

    外から間取りを見て、直感した。
    この家は、ちょろい。
    侵入してくれと言わんばかりに無防備で、扉も窓も、そのすべてが開放されていると彼は錯覚した。
    もちろん、どの扉や窓にも鍵はかかっているのだろう。
    しかし、そんなことは彼にとってはさして問題ではなかった。

    「台所だ」

    彼は、一人ごちた。

    侵入するなら台所だと思った。まず、窓の外から中の様子を確認するのだ。こんな時間に台所を覗いて、人の気配を感じなければ、侵入は容易い。もしどこかの部屋で家主と出くわしたとしても、眠らせるなり殺すなりして、脱出することができる自信が彼にはあった。

    特に緊張する様子もなく、彼はその家の間取りを外から判断し、「台所であろう」窓から中を覗いた。そして、すぐに顔をしかめた。

    先客がいるようだった。

    性別は、窓の外からでは判断できなかった。中世的な顔立ちの人物が、台所からどこかの部屋につながるドアノブをガチャガチャと回している。
    三流だな、と彼はそれを観察した。
    ピッキング時にあんなに音を立てては、家の中に人がいたら即刻足がついてしまう。と、心中でその人物の失態を痛々しく見守っていると、あることに気が付いた。

    あれは、ピッキングをしているわけではない。
    ただ、ドアノブを回しているだけだ。
    その人物は、ひたすらにドアノブを回していた。
    それが生まれた理由だと言わんばかりに、ドアノブを回していた。
    この世にドアノブがなくなったとしても新たにドアノブを作り出して、それから、ドアノブを回し続けるのではないかと錯覚するほどの熱意で、ドアノブを回していた。

    「なんだ、あれは」

    彼はその人物に少し興味が湧いた。
    手早く台所の窓の鍵を針金で外から開錠し、台所に侵入すると、ドアノブを回していた人物はぎょっとしたように彼を見た。

    「待ってくれ、違うんだ」

    ドアノブを回しながらそう言ったその人物に、台所に入ったばかりの彼は、首を横に振って返した。

    「別に、お前を捕まえようとか、そういうことではないんだ。気にせず続けてくれ」
    「違うんだ」

    彼の言葉を聞いてなお、ドアノブを回し続けながら、その人物は言った。「違うんだ」

    「何が、違うんだ?」
    「私は、黒幕なんだ」
    「……なんて?」

    ドアノブを回すその人物の言葉の意味が分からず、彼は首を傾げた。

    「君はこの物語の登場人物ではないようだから言ってしまうが」

    ガチャガチャガチャ……

    「この物語の黒幕は私なんだ。まぎれもなく、私が黒幕なんだよ」

    ガチャガチャガチャガチャ……

    「だが、私が黒幕だと宣言する前に、なんか閉じ込められちゃってさ」
    「お前以外に黒幕がいるってことなんじゃないのか」
    「そんなはずはない! 全部私の仕業なのだから!」
    「そのドアが開かないのも、お前の仕業?」

    彼がドアノブを指さすと、黒幕を名乗る人物も、一瞬ドアノブを回すのをやめた。
    人生を中断させたような気分になって、彼は少しバツが悪くなった。

    「これは違う。多分、さつきまるって奴のしわざだ。あいつ、黒幕の私に無許可で鍵を閉めやがった。しかも、タチが悪いことに、開けてくれない」
    「閉じ込められたんだろ」
    「私を閉じ込めたって? なんてやつだ、まるで悪役だ」
    「悪役は、お前だろ」

    見ていられなくなって、彼は黒幕の隣まで歩いて移動した。

    「ほら、どけ」
    「なんだよ。私は一刻も早くドアを開けないといけないんだ。邪魔しないでくれ」
    「そうやってガチャガチャ回していても永遠に開かないぞ」
    「何を偉そうに、私は黒幕だぞ」
    「いいか、よく聞け」

    彼は黒幕の胸に人差し指を突き立ててはっきりと言った。

    「黒幕がこんなところでドアノブをがちゃがちゃしている間にも、物語は進行するんだよ」
    「馬鹿な、黒幕が不在で物語が進行するものか」
    「出てこなきゃいないのと一緒だ。今頃お前じゃない誰かが黒幕になってるだろうな」
    「それは困る!」

    黒幕は大声を上げて、目の前の彼のシャツの裾を掴んだ。

    「なんとかしてくれ」
    「私はこの物語には関係ない人物なんだが?」
    「もう私と関わった時点で登場人物になったってことだろ! いいからこのドアを開けてくれ。私は黒幕じゃないと嫌だ!」

    駄々をこねる子供のようにそう泣きついた黒幕の弱弱しい様子に、彼は肩をすくめた。

    「名前だ」
    「うん?」
    「名前を寄越せ。私はただ通りかかっただけの空き巣なんだ。名前がないと、物語に出演できないじゃないか」

    彼がそう言うので、黒幕はううん、と首を捻った。

    「なんでもいいのか?」
    「なんでもいい」

    黒幕は、名前を考えるのが大の苦手だった。いつだったかに飼っていた金魚にも『キンギョ』という名前をつけた。
    ふと、つい先日居酒屋で日本酒と一緒に食べたつまみを思い出す。

    「しめさば、にしよう」
    「しめさばか。いいだろう」

    人物の名としてはあんまりな命名だったが、しめさばは嫌な顔をするでもなく頷いた。

    「それじゃあ、行くか。ドアは私が開けてやる。あとは好きにしろ」

    しめさばは投げやりにそう言って、台所のドアの鍵穴に針金を差し込んで、それを開錠した。

    黒幕は、精一杯の悪人面を作り、わくわくとした心境で、台所の扉を、くぐった。



    本来黒幕だった男の没落。小娘に『黒馬くぅ』と名付けられる(黄間友香)

    が。

    「誰もいない」

    しめさばってやつに出してもらったんだけど。登場人物になったんだけど。誰もいない!そして誰もいなくなった!あ、そういえば久しぶりの読みたいなぁアガサクリスティ。

    って違う違う。

    やっぱ名前がないからかなぁ。黒幕って名前だから?

    「しめさばくん、私も名前が欲しいよ。」

    しめさばくんは、思いっきり顔をしかめた。

    「私が今さっき頼んだことを忘れたのか。名前をつけるのは苦手なんだよ。」

    「そういわずにさぁ。なんか。なんかつけてよ。黒幕って名刺に書いてあったらどうする?名を刺すものの前に私が刺されるよ。」

    「えぇ……。」

    完全に困っている。だが私だって困っている。

    「なんとかしてくれ!君が頼りなんだ」

    「仕方ないなぁ。」

    そういってしめさばくんは携帯で誰かに電話をし始めた。

    「もしもし、あ黄間さん?しめさばです。」

    相手は黄間というらしい。電話が繋がったところでしめさばはスピーカーフォンにしてくれた。

    「はいはーい、あらいつもしめさばさんお世話になってます。すみませんねなんか無駄にダル絡みしてー。どうしたんですかー?」

    電話の相手はちょっとテンションの高い女だった。ふむ、こんな奴が知り合いとは。しめさばは黄間という奴に向かって

    「すみません、今黒幕と居るんですけど、なんか黒幕っぽい、いい名前つけてもらえませんか?」

    といった。

    「おーもちろんですよ。ってええ、黒幕ってラスボスみたいなやつですよね。しめさばさん大丈夫なんですか?」
    黄間というやつは少し驚きつつもそのまま会話を続ける。変なやつだ。もっと心配すればいいのに。

    「ああ、はい。ピッキングして今助け出したところです。」

    「ラスボスを?」

    「はい、黒幕ですが。で、黄間さん。なんかいいのありません?」
    しめさばくんもしめさばくんで落ち着き払っている。あれ、私ちゃんと黒幕だよな。悪いやつだよな。

    「うーむ、とりあえず、黒井カバレリー、ブラックヒーロー、黒馬くぅ、ラスボス。とかどうでしょう。」

    最後はネタが尽きたのかそのままだぞ。と突っ込みたくなったが黙っておく。しめさばくんはちらりとこちらを見て、どうしますか?と言った。

    「じゃ、黒馬くぅで。」

    とりあえず、名刺を差し出した瞬間に殺られることはなさそうだ。
  • カオスガソリンスタンド「カオス満タンで!」そのころ屋根裏では(高尾つばき)

    わたくしは床下にひそむおかたに、もはや液状と化したエクレアをなんとか召し上がっていただこうと、思案しておりました。

    ゴトッ……

    あら?
    何の音かしら?

    再び天井裏から部屋を覗きます。

    なんと床の一部がはずされ、ひそんでいたかたが顔を出されています。

    ああっ、あのおかたは!

    度々近況ノート・ジャックと称され、我が屋敷においでになるフタヒロさまよ。

    ただご様子が変なのです。

    多分ご自身でお作りになられたと思われる、着ぐるみ? しかも上半身だけ。
    ゴ、ゴキブリの着ぐるみ?
    いえ、ようよう切れ長二重の目を凝らして見ますと、どうやらご本人はカブトムシのおつもり。

    フタヒロさま、カブトムシはそんなに長い触覚はございませんわよ。
    しかも、ツノが短すぎます。

    それよりも、なにゆえ下半身はブルマなのかしら……ご趣味?

    わたくしは何が始まるのか、ワクワクドキドキしながら観察を続けます。
    乱歩先生の不朽の名作、「屋根裏の散歩者」の主人公の気持ちが手に取るようにわかります。

    フタヒロさまは床下から這い出られると、ニタニタと不気味な笑みを浮かべて部屋の中を徘徊しております。

    ソファの近くまで歩かれ、そのまま止まられました。

    は!
    わたくしは今になって気づきました。

    ソファの陰に、うつ伏せになったままピクリとも動かぬ殿方が!

    フタヒロさまはゴキブ、いえ、カブトムシの頭を左右に向け、辺りを伺っておられます。

    そしてゆっくりとしゃがみこみ、横たわった殿方のお背中にまたがられたのです。

    ふところから取り出されたのは、白く丸いボール。
    いえ、あれは、ゆで卵?

    フタヒロさまは次々とゆで卵を取り出され、殿方の周囲を取り囲むように置かれていきます。

    いったい、何個お持ちなの?
    いえ、それよりも何をしようとされているの?

    わたくしは、ちょっぴりスッパいエクレアを舐めながら、さらに観察を続けました。



    冷蔵庫の遺体。冷蔵庫に咲く美しき太陽の花(相良壱)

    夜更かしは美容の敵――
    早起きは三文の徳――

    太古からそのように伝えられてますが……どうして、両方とも時間を軸にしているのに、前者は“美”、後者は“お金”といった全く違うベクトルの答えになるのかしら?

    私はそんな疑問を頭に抱えていましたの……。

    それにも理由がありました。

    それは――
    巷でナウでヤングな小説投稿サイト。

    『カクヨム』

    私はここのところ……。
    それに没頭していたことで寝不足。
    お肌がボロボロになって困っていたのです。

    「あらら……これはいけないわね」

    私は鏡を見てお肌チェックをして絶望しかけてました。

    「何かいい方法はないかしら……」

    すると、その時でした。
    タイミングよく電話が鳴りましたの。

    「はい。もしもし――どなた様?」
    「もしもし、ボク……ボクだけど」

    電話の相手は北乃ガラナさん。
    特に面識はなかったけれども、彼は魔術業界ではちょっとした有名人。

    そんな彼は不躾にも受話器越しにこうおっしゃったのです。

    「実は新たな美容液と新種のチワワが完成したんだけど、うちに来ませんか?」

    美容液と新種のチワワですって……。

    「あら、まぁ……」

    丁度、どちらも欲しかった頃でしたのよ。


    🌻


    私――
    陽野 ひまわりは魅力的な電話に釣られてほいほいガラナ邸へ遊びに行くことになりました。

    ガラナ邸までは自宅から歩いて3分。
    私の貴重な3分……。
    全く……遠くて嫌になっちゃいますわ。

    そもそも、私を召喚するだなんて身の程知らずもいいところ。でも、良くってよ。美容液と新種のチワワが手に入ればいいの。それさえ、手に入れば、あとはどうでも良かったのだから……。

    そこで私はガラナ邸の重厚な扉をエレガントに叩きましたのよ。

    ズゴン!! ドゴン!! ガシャーン!!

    「うおらぁ!! 出て来いや! ガラナァ!!」

    すると……。

    ギギギッ――
    重たい扉がゆっくりと開かれれ、先に現れたのは無駄にイケメンなガラナさん。

    「ひまわりさん。よくぞいらっしゃって下さいました」
    「おほほ……雑種風情が私を呼ぶなんて、たわけたことをやってくれましたね」
    「申し訳ありません」

    ぺこりと頭を下げたガラナさん。
    全く無駄にイケメンで困っちゃうわ。

    このガラナさん――
    禁忌の魔術に手を出した一族の末裔。
    言い換えれば下賤なる魔術師もどきの◎※×。

    それに対して私は歴史ある一流魔術師の末裔。
    カクヨム八大元素のうち、その七つ(ラブコメ・恋愛・SF・現代ドラマ・現代ファンタジー・エッセイ・創作論)を自在に操ることが出来る魔術師の中の魔術師なのです。つまり、ガラナさんとは魔術師としての格が違うってこと。比べるのもアホみたいね。

    おほほほ……。

    ……それでも私は下賤な彼が生み出したとおっしゃる美容液と新種のチワワにぐっとやられちゃったの。

    「わかればいいのよ。雑種……それで件の物は用意していらっしゃって?」
    「はい。件の物は奥にしまっています……どうぞお入りになって下さい」

    こうして、ガラナさんにエスコートされた私は大きな冷蔵庫が置いてある台所のような場所に到着するのだけれども……。

    それにしても不気味な家……。
    構造的に霊的なものを閉じ込めるような感じが見受けられましたの。
    恐らく、結界かしらね。

    そこで私は確認することにしたのです。

    「ガラナさん? こんな場所に本当に私が求めているものがあるのかしら?」
    「あー、そうでしたね、ひまわりさん。美容液は冷蔵庫の中に保管しています。そうしないと効果が落ちてしまうので……」
    「あら……中途半端な魔術師らしい言い訳ね」
    「ははは……これは手厳しい。ですが、効果は本物ですよ」

    言葉と共にガラナは部屋にある業務用の大きな冷蔵庫に向かって、その扉を開けました。まるで業務用のような冷蔵庫はお肉でも熟成させるのかしら? とも思うほどに……とても……大きいです……。

    でも――

    「あら……? ガラナさん。これはどういうわけ?」

    冷蔵庫の中を確認してみると、そこには何も入っていなかったじゃない。

    これはどういうことかしら?

    確認しようと思った刹那でした――

    「きゃっ!」

    私の背中に強い衝撃が走り、冷蔵庫の中へと足を崩しお嬢様座りをするの……。
    いいえ、そうせざるを得なかったの。

    そこで私は「何しやがるんだ!」と、振り返ることにしましたのよ。

    すると――
    咄嗟に振り返った視線の先にはほくそ笑むガラナと……。

    「フ、フタヒロさん……?」



    そう……。
    私を押したのは普段から仲良くしていたフタヒロさんでした……。

    いるならいるって言って欲しいものですわ!

    ぷんぷん!

    ともかく、冷蔵庫の中へと突き押された私はプルプルと震えるチワワのように二人を睨みつけることにしましたのよ。

    ですが――

    「ふははははははははは……!! 上手く騙されやがったな!! このひまわりめ!!」
    「ひゃっ! ひゃっ!! 本当に騙されてほいほい現れやがったよ!! さすがですよガラナ様。さがすですガラナ様!!」

    こ、これはどういうこと!?

    ガラナさんが続ける。

    「ひまわりさん……いいや、ひまわりぃ!! お前はボクの魔術の最初の生贄になって貰うぞぉ!! 否、それ以下だ。お前は餌だ! 生贄を呼ぶ餌になるんだよ!!」

    生贄……?
    餌……?
    ヌードモデル?
    イソギンチャク?

    ひ、酷いわ!!
    沢山、人を呼んで私に卑猥なことをするつもりだったのねっ!!

    「酷いわ!? ガラナさんっ! 私を騙したのね!」
    「酷い? 笑わせんなよ! バーカ! うひゃうひゃうひゃひゃひゃ……ぐほっ……えほっ……うおえ……」
    「ガラナ様……調子ぶっこきすぎです。これを……」

    優しくハンケチーフを渡すフタヒロ。
    なに? この二人? ホモップルみたいじゃない!

    いやいや、そんなことを考えている場合じゃないのよ!

    「わ、私になにをするつもり!?」
    「死んでからのお楽しみだぜ? ひまわり」

    死んでからってことは……!!
    ネクロフェリア……?

    「えっ!? やめて!! ふざけないで!! 死んだら楽しめないじゃないの!?」
    「アディオス……ひまわり。冷蔵庫に咲く美しき太陽の花よ」

    捨て台詞のようにダサイ言葉を残してガラナさんは私を冷蔵庫に閉じ込めたじゃない……!

    「いやだっ!! 寒い!! 暗い!! 誰かっ……誰か助けて!! 私は閉所恐怖症なのよっ!!」



    🌻



    あれから……どのくらいの時間……ここに……いるの…だろう…か……。
    私の……必死の抵抗も虚しく……凍える中で……身を小さく縮め……意識を……なんとか……振り絞り……。
    精一杯の反抗で……せめて……私をこうした奴を……誰かに伝えるために……魔術でガラナの姿へ……。

    でも、もう……らめぇ……。
    私は……薄れいく……意識の……中で悟る……ことになる……。

    早起きは……三文の徳に……なんて……ならない……じゃない……の。
    これは……酷い詐欺……だわ……。
    絶対に訴えて……やるん……だから……ねっ。

    うん……りょ……お……。



    🌻

    ひまわりはこうしてキンキンに冷えた冷蔵庫に閉じ込められて一部がしなびたほうれん草のようになった。

    しかし、ガラナはわかっていなかった。
    ひまわりは死ぬ直前に自身の姿をガラナに変えたことを……。
    そして、臓腑の中に憎悪の獣を宿していたことを……!!

    シン・チワワ――

    皮肉なことに冷蔵庫に閉じ込められたひまわりは永遠の美と、自身に宿した魔獣を完成させたのだ。

    これが冷蔵庫に保管されていた偽ガラナの死体とシン・チワワの誕生秘話である。
  • 「課長……、ショックを受けないで下さい。実は……〇〇〇〇が結婚したらしいです……」(ユーリ・トヨタ)

     一方その頃、光る半球体から足を踏み出した二人の手ブラ捜査官は首を傾げていた。いつもであれば時間制御部のスタッフが待ち受け、帰着した捜査官のメディカルチェックをするのが規則だったからである。

     手ブラのまま10分以上待機室で待つ二人。誰も来ない状況に二人の感情は困惑から焦りへ、そして怒りへと発展していった。たまりかねた若い捜査官は、事務所を確認してきますと言い残し規則を破って待機室を出ていった。残された課長は一人で手ブラをするのもバカらしくなったようで、手を解き胸毛の延びた部分を抜いて時間を潰していた。

     更に10分が経った頃であろうか……、若い捜査官が帰ってきた。青い顔をして憔悴しきったようである。勿論手ブラなどしておらず、胸毛の少ない若々しい肉体をさらけ出していた。

    「課長……、我々が捜査に出ている間に歴史上で大変なことが起こったようです」
     彼の目は課長を直視していなかった。課長の心中を思うと直視できなかったのである。

    「なんだ、何があった? よくないことか?」
     課長の声は強張っていた。メディカルチェックが飛ばされる程の異常事態、一体何があったというのか。

    「課長……、ショックを受けないで下さい。実は……佐々木希が結婚したらしいです……」
    「……!」

     その時課長と呼ばれた男は課長では無くなっていた、片膝をつきうなだれる一人の中年男に成り下がっていた。二人しかいない待機室に中年男の嗚咽が漏れる、先程まで手ブラをしていた手を顔に当て、溢れる涙を受け止めていた。

    「……まさか、……まさか、希ちゃんだけは俺のところに来てくれると信じていたのに……」
    「……課長、それからまだご報告することがあります」
     若い捜査官は優しく課長の肩に触れながら言った。

    「……何だ、これ以上の報告なんて無いだろ!」
     課長の眦は切れんばかりに見開いていた。これ以上のショックな報告など聞きたくない、その悲痛な叫びは若い捜査官にも届いていた。

    「実は……、関ヶ原の戦いは……、東軍が勝ちました……」
    「なに! 何故だ! どうしてあの布陣で東軍が勝つのだ! 言ってみろ、どうして東軍が勝ったのだ!」
     課長は狼狽して手を震わせていた、若い捜査官は課長から目をそむけ涙を流した。

    「……、内通者がいたようです、小早川秀秋も吉川広家も、最初から裏切るつもりだったと……」
     ボロボロと涙を流しながら報告する部下を見て、課長は怒りに震えた。
    「あの小早川秀秋か! 太閤殿下の血縁で養子にまでなったというのに、その御恩を忘れたか! 何という鬼畜の所業!!」

    「課長、まだあるんです……」
    「何だ! まだあるというのか? もういい聞きたくない!」
     さっきまで手ブラをしていた手で、課長は耳を塞いだ。

    「課長……、キルヒアイスが死にました……」
    「な……に……」
     今までで最大の衝撃を課長は受けていた。顔面は蒼白になり両膝を床に着けてしまった。

    「キルヒアイスーーーーーーーーーー!」

    課長の慟哭は狭い準備室にこだますることはなかった。


    「そして、最後のご報告なのですが……、残念ながら、さつきまる容疑者の死亡が確認されたようです」

     課長の目は再びカッと開かれ、若い捜査官を呪わんばかりに睨みつけた。

    「さつきまる? それ誰?」



    兄『イチヒロ』が、穿いてないなどとは……断言できない(関川 二尋)

    👿

    「……ところで、フタヒロよ」
    ガラナは窓から離れ、豪華なソファに身を沈めた。
    「なんでしょう?ガラナ様?」
    フタヒロは服従の姿勢を崩さず、頭を垂れたまま。
    このガラナ邸には夕暮れが迫ろうとしており、どぎついまでのオレンジ色が部屋を染めている。
    「アレの準備はできているのであろうな?」
    「アレ、とは例のアレでございますね」
    そういってフタヒロは口の端をゆがめ、禍禍しい笑みが浮かべた。

    「ああ……あれだよ、我々の切り札のことだ」
    ガラナもまた目をすがめ、うっすらと笑みを浮かべた。
    「もちろん。抜かりはありません。『世谷田自然食品』のパンフ……」
    そう言いかけた時、いきなりガラナが立ち上がり、フタヒロを殴りつけた。
    フタヒロは鼻から血の糸を垂らしながら、驚きと怯えに満ちた目を向けた。
    「ガラナ様、いきなり何を……」
    「アレのわけなでしょっ!もう、馬鹿ヒロの馬鹿!」
    激昂したガラナは性格まで変わっていた。
    仮面がはがれ、サディスト本性をむき出しにし、再び微笑みながらフタヒロの顔を殴った。
    「整った顔が台無しでちゅねー、でもアレの事言った罰だよー!」
    さらに大きく足を振り上げ、フタヒロの整った体を蹴った。

    👿

    やがてガラナの息が切れると、お仕置きの時間も終わった。
    フタヒロは絨毯の上、体をくの字にして倒れていた。
    そのままぐったりとして動かない。だがその目だけはまだガラナを見つめていた。
    そしてガラナもまた最後に大きく息を吐くと、再びソファに沈み込んだ。

    「俺が言ったアレは、さつきまるの家に保管されていたアレのことだ」
    「……アレのことでしたか……」
    フタヒロはゆっくりと体をおこし、なんとか座った。
    だが立ち上がることまではできなかった。
    「ああ。たしかお前の双子の兄『イチヒロ』に盗みに行かせたはずだが」
    「……それでしたら、そろそろ屋敷に到着する頃ですが」
    「そうか、ではもうすぐ手に入るな。だがもう少し早くほしかったな、
     屋敷に人が集まりすぎている。もしアレが見つかりでもしたらせっかくの罠が台無しだ」

    「……それでしたら、ご安心を。わが兄『イチヒロ』は変装・擬態の天才です。それこそ他人になりすますのも、お望みでしたら虫にだって変装できます」
    「……それだがな、俺はどうもあの男の変装センスが信用できんのだ」
    「ガラナ様、なにをおっしゃいますか!」
    「……前に見た時もひどかった。あー、なんとなく嫌な予感がしてきた。まさかとは思うが……アレ、穿いたりしてないだろうな」
    「……穿いてなど、と、断言はできませぬが……」

    二人の間に無言の「……」がテレパシーのように通ったのだった。



    「エクレアが腐ったような匂いとキルヒアイスと」(夕日 ゆうや)

    「くそっ!」
     夕日ゆうやは悔しさを吐き出すように叫ぶ。
     さきほどの容疑者と思われる人物――ホモ男(疑惑)を取り逃がしてしまったのだ。

     犯人は必ず現場に戻ってくる。
     夕日ゆうやはそんなあいまいな理由を元に容疑者を特定したのだ。

     ホモ男(疑惑)はどこかへと走り去っていったのだ。
     慌てて追いかけたものの見失ってしまった。
     なんという不覚。なんというミス。

    「あぁ……、ぅぅ……」
     そう喚いた後、思考を切り替える。
     そうだ。まずは現場検証だ。
     もっと確かな証拠が欲しい。
     それにあの死体には謎も多い。

     夕日ゆうやは急いで死体のもとに向かって走り出す。
    「なん……だと……」
     夕日ゆうやは驚きのあまり言葉を失った。
     なんと、さきほどまで存在していたはずの死体がどこにもないのだ。

    「もしかして、あれはトリックアートだった? いや、幻か?」
     夕日ゆうやは自分の頬をつねる。
    「痛い」
     どうやら寝惚けている訳ではないようだ。

     じゃあ、死体はどこへ?
    「んー。ん?」
     夕日ゆうやは何かに気がついた。そこにあるものに。
    「こ、これは……しめった潜水艦のおっとっと。それにたまご、じゃないか!」
     これはさきほど、死体が握りしめていたものじゃないか。
     だが、死体を引きづった後もなければ、血痕の一つもない。
    「とりあえず……この『潜水艦のおっとっと』と『たまご』は保管しておくか」
     夕日ゆうやはコンビニのビニール袋を取り出し証拠品を納める。

    「さて、俺の第六感――〇ックスセンスが正しければ、死体と犯人はこの屋敷にいる!」
     夕日ゆうやは自信満々に、頬を赤らめながら屋敷の中へ不法侵入を開始する。

     ちなみに夕日ゆうや自身は探偵なら勝手に入っても問題だろ、と思っているのだ。

     ギィと音を立てて閉まる玄関。
     夕日ゆうやは屋敷の中へと消えていく。

     その近くのしげみからは睨むような双眸が怪しくうごめいているのであった。


    「そういえば、屋根裏が臭いな……天井が腐っているのか? 落ちてこないでくれよ」
     屋敷に入った夕日ゆうやの最初の一言はそれだった。
    「まるでエクレアが腐ったような匂いだ」

     その時、夕日ゆうやのスマホが鳴る。
    「電話か」
     通話をオンにする。
    「もしもし?」
    「キルヒアイスが……死にました」
     そう言われた、ゆうやの様子は普段と変わりがない。しかしガラナは見逃さなかった。ゆうやの瞳になんらかの光が宿ったのを……。


    ――――――
    とりあえず、探偵を屋敷内に。
    ついでに色々と絡まってくることを期待して。
    おかしなところがありましたら訂正もしくは削除で、お願いします。

    たまごさんは探偵の懐の中です。申し訳ありません。
    人肌で孵化するもよし。他の人に渡すもよし。



    カブトムシブルマとの攻防(しめさば)

    🐟

    「おかしい」

    黒馬が呟いた。しめさばは眉を寄せ、首を傾げた。

    「何がだ」
    「私が扉を開ける頃には、冷凍庫の中のガラナの死体が見つかって大騒ぎになっているはずなんだ。だというのに、誰もいない。これはおかしい」
    「待て、ガラナっていうのは誰だ?」

    しめさばが問うと、黒馬は一瞬きょとんとしてから、首を横に振った。

    「いや、知らないが……」
    「お前が殺したんじゃないのか」
    「まさか。なんで私が知らない人間を殺さないといけないんだ」
    「……おかしいな。お前は黒幕なんじゃないのか? どうも話がかみ合わない」

    しめさばが黒馬の胸に人差し指を立てて問い詰めると、黒馬は両手を上げて手を横に振った。

    「私は、電話で、知らない奴に『お前が黒幕になるんだ』と言われただけなんだよ!」
    「は? 知らない奴に?」
    「そう! この台所から現れて、高笑いをすればいいって、そうすれば物語の中心に立つことができるって言われたんだ」
    「電話番号を見せろ。今からかけなおすんだよ、そいつに」
    「……非通知だったんだ」

    しめさばは、あからさまな溜め息をついて、黒馬を睨んだ。

    「お前な、それはお前が黒幕なんじゃない。本当の黒幕に担がれたんだよ。黒幕の汚名を着せられて喜ぶ馬鹿がいるか」
    「え、なんでだよ! 黒幕ってかっこいいだろ! メインキャラクターじゃないか」

    ムキになる黒馬を横目に見て、しめさばはやれやれと息を吐いた。
    それよりも、さきほど黒馬が口にした『冷凍庫』というのが気になった。しめさばは部屋の中を見回して、すぐにそれらしきものを見つけた。
    やいやいと騒ぎ立てる黒馬を無視して、早足で冷凍庫に向かう。

    「おい、聞いているのかしめさば!」
    「お前の泣き言はどうでもいい。それより、冷凍庫の中の死体が今どうなっているのか確認すべきだろう」

    そう言って、思い切り冷凍庫の扉を開けるしめさば。その双眸が一瞬見開かれ、すぐに扉を閉じた。

    「おい、なんだよ。なんで閉めた?」
    「いや、なんでもない」
    「なんでもなくないだろ。明らかに『驚いて閉めました』って感じの挙動だったぞ、今」
    「本当になんでもない」

    しめさばは無表情を作りなおして、黒馬を冷凍庫から離すように突き飛ばした。
    ぶるりと、しめさばの背中を悪寒が走った。

    あれは確かに、女の死体だった。
    弾力のなさそうなしなしなな胸がそれを物語っている。
    しかし、その腹から、何やら犬のような生物が飛び出していたのを、しめさばは一瞬見てしまった。
    あれが何かは分からないが、おぞましいものであるのは確かだった。
    自分が屋敷から脱出するまでは、絶対に触れてはいけないと確信した。

    「それより、そのソファの隣」

    話題を逸らすように、しめさばはソファの後ろを指さした。黒馬もそれにつられてそちらを見る。
    ソファの端から、人間の足のようなものが覗いていた。

    「人が寝ているな」

    しめさばは目を細めて、ソファに近づいた。黒馬もそれに続いて、おそるおそるそれに近づく。

    「うわ……」
    「死体か」

    ソファの横に、人間の死体が転がっていた。うつぶせに寝転がっているその男の首に指を当てるが、やはり脈はない。

    「死んでからそれなりに経っているようだな」
    「この周りの卵はなんだよ……」

    男の死体の周りには、等間隔で白い卵が置かれていた。
    しめさばは顎に手を当てる。

    「……卵に、殺されたか?」
    「お前それ真面目に言ってんのか?」

    しめさばが死体を見つめていると、突如、ソファの横にある窓の外から、不自然な『ガサッ』という音がした。
    誰かに見られたか? 死体を冷静に分析しているところなどを見られては、自分が犯人に仕立て上げられかねないと思ったしめさばは、機敏に窓から外に飛び出す。
    そして、飛び出した先にいた人物を見て、目を丸くした。
    後から、黒馬も窓から顔を出す。そして、しめさばと同じようにぎょっとした表情をした。

    夕日に照らされて、館の庭に立っていたのは、上半身にゴキブリの着ぐるみをかぶり、下半身にブルマをはいた人物だった。

    「キッモ……」
    「怪しいな」

    黒馬としめさばが口を開くのは同時だった。

    ゴキブリブルマの人物は、どうやらしめさばたちを見つけて、彼らに補足されないうちにとんずらする予定だったようだが、姿をばっちりと見られてしまって、それを諦めたようだった。
    振り向いて、大声を上げた。

    「怪しいとはなんだ! 親しみやすいカブトムシの着ぐるみに、みんな大好きブルマを履いて登場した俺の、どこが怪しいと!?」
    「今言った全部だよォ!」

    黒馬のツッコミに、ゴキブリブルマ改め、カブトムシブルマはたじろいだ。

    「え、これ怪しい? ほんとに?」
    「ああ、ものすごく怪しい」

    しめさばが首肯すると、カブトムシブルマはがっくりと項垂れたあとに、顔をキッと上げた。

    「まあ、どのみち……俺の姿を見たからには、生きては返さねえけどなァ!」

    カブトムシブルマは不敵に微笑んで、ブルマの中から突然ナイフを取り出した。隠語ではない。本当に、ナイフを取り出したのだ。
    しめさばと黒馬は、反射で、両手を挙げた。降伏のポーズだ。黒馬は心から降伏していたし、しめさばはとりあえず降伏したフリをして、カブトムシブルマに隙ができるのを待ちたかった。
    じりじりと迫ってくるカブトムシブルマに、しめさばと黒馬は両手を挙げたまま後ずさった。

    「可哀想になぁ……こんな寂れた館で、俺にシメられちまうなんてよ」
    「待て、話し合おう。私はしめさばだ。一度〆られている。これ以上シメられてはただじゃすまない。考え直してくれないか」
    「ただじゃすませねぇって言ってんだよ!」

    しめさばの説得は逆効果だった。

    カブトムシブルマは、ナイフを持つ持ち方を変えた。右手でしっかりと握り込み、左手は右手に添えた。あれは、本気で刺す構えだ。しめさばの背筋に冷や汗が浮かぶ。

    「じゃあ、死ね!」
    「待て!! お前の知らない情報を教えてやる! それを聞いてから私たちを殺しても遅くはないだろう!」

    カブトムシブルマがしめさばを突き刺そうとした瞬間、しめさばが叫んだ。カブトムシの動きが止まる。

    「なんだ。言ってみろ。つまらんことだったらすぐに殺すからな」

    ひとまずの時間を稼ぐことに成功して、しめさばは安堵した。
    そして、たっぷりと間を取った後に、言い放った。

    「佐々木希が、結婚した」

    「……えっ」

    カブトムシブルマは脱力して、ナイフを地面に落とした。

    「……マジ?」
    「マジ……だッ!!」
    「ぐはぁッ!」

    カブトムシブルマがナイフを落とした瞬間、しめさばは強引にカブトムシとの距離を詰めて、その鳩尾に全力でパンチを叩き込んだ。

    「……んぬふ……」

    カブトムシブルマは、生まれたての小鹿のように足をぶるぶると震わせて、そのまま地面に倒れ込み、そして気絶した。

    「ふぅ……」

    しめさばはようやく気を緩めて、溜め息をついた。
    こんなところで殺されてはかなわない。彼は、思い付きでこの館に空き巣に入っただけなのだ。

    「危機一髪だったな」

    しめさばが振り返って黒馬に目をやると、黒馬は失意の表情でそこに突っ立っていた。

    「……どうした」

    しめさばが眉を寄せて訊ねると、黒馬は力の入らない声で、言った。

    「…………佐々木希、結婚したの?」
  • ブルマー秘匿手ブラ捜査官「課長と部下」(北乃ガラナ)

    「さつきまる? それ誰?」

     泣きはらした顔を、若い捜査官にむける中年課長。その涙の理由の8割が「佐々木希が結婚した」という報告からだった。

     残り2割が「太閤殿下の御恩」と「キルヒアイス」。

    「ブルマーを盗んでた容疑者です」

    「ブルマーなんかどうでもいいよ」

    「は? 課長いまなんと」

    「……ブルマーなんてどうでもいい」

    「どういうことですか課長! 課長は自ら志願して、数千倍の倍率をくぐり抜けて時空警察官になったのではないのですか!」

    「就職先としてカッコいいからテキトーにえらんだ。わし、生まれつき賢子だからさー。試験なんて余裕で」

    「それじゃあブルマー捜査課に配属されたのは……ブルマーが好きなのでは……」

    「……仕事が楽そうだから。いや、べつに興味ないしブルマー。そりゃさーちょいエロいかなーとは思うけどさ。べつにどーでもよくね?」

     若い捜査官はわなわなと震えた。なんということだ。目の前のこの男は、ブルマーに愛など持ってはいなかった。自分が、いや全男性があたりまえにもっているであろうブルマーに対する愛・羨望・探究心。それらを欠片も興味も熱意も、もってはいなかった。

    (……こんな男だったとは)

     こんな男が栄えある「時空警察ブルマー捜査官」の課長を長年勤めてきたというのか……。そんなこと、若い捜査官は聞きたくは無かった。もし叶うのならば、聞く前の自分、すこし過去の自分に戻りたかった。
     ――「佐々木希が結婚した」と聞く前に。


     😈


     若い捜査官は、とある決意をした。目の前の課長。ブルマーを穢したこの男を、すこし苦しめてやろうと思った。

    「課長……。折り入って話があるのですが……さっきの話なんですが」

    「話……ああ、キルヒアイスは残念だったな」

    「残念でした。とても残念なことでした。でも僕はしらないんですよキルヒアイス。そもそも原作みたことないですし」

    「ッ――なっ!? キミそれはマジかね。……あの名作を……。信じられない。それでは話を膨らませられないな」

    「ただ機会がなかっただけなんですがね、って課長。その話じゃ無くて――」

    「希ちゃんか……」

     中年課長の表情が見る間に曇った。『佐々木希』の件は、それだけ彼の心に暗い影をおとしてしまっているのだろう。
     その影はとても濃く深いものにみえた。きっと仕事上がりにビールジョッキをかたむければ、晴れるぐらいには……。


    「いえ、佐々木希が結婚した話でもありません」

    「それじゃあ、なんだねキミ。はっきりしたまえ」

    「関ヶ原の戦いですよ」

    「あー関ヶ原か……あの、おもいだすのも忌々しい関ヶ原」

    「そういえば課長の名字、石田ですよね」

    「なにをいまさら。胸のIDを見ればわかるだろ」

    「知っての通り、僕たちのいる『時空警察』は天界にあります」

    「それがどうか?」

    「そして天界にいる天界人は、もと地上の人間ですよね? 僕は見てしまったんです。課長の『地上履歴書』」

    「なに、おまえ! それはトップシークレットの天界個人情報だぞ! そんなことをして」

    「だって、自分の上司の素性ぐらい知りたいじゃないですか。……基本的に天界では非公開な『地上履歴書』。そりゃあそうです。そんなのが皆にしれわたれば、やりにくくて仕方が無い。天界でのもめ事の種にしかならないし、悪用される恐れもある。でも、警察捜査などでは、その閲覧が例外として認められる場合もある。もちろん天界裁判所の許可が必要ですが……」

    「それが解っていて、何故。きさま……」

    「僕の名字、小早川なんですよ」

     にい――と、若い捜査官『小早川』の口がゆがんだ。

    「まさか……おまえ……」

    「よ。久しぶり。治部」

    「小早川、貴様!!」

    「その節は、たいへんなことになったねえ」

    「まさか秀秋!? そうなんだな小早川! よくもこのワシのまえにのこのこと!! この裏切り者! この鬼畜めが!」

     若い捜査官小早川の首をぐいぐい締め上げる石田課長。

    「ちょ、仕方が無かったんですよお。だってあのときの『治部おまえ』人望皆無だし。チョームカつくやつだったからさあ」

    「……そんな理由で。貴様! 太閤殿下の御恩はどうなるのだ!」

    「ちょっと、やめましょうよ、そんな過去すぎる話。はやらないですって」

     へらへら笑う小早川。その様子に怒りが爆発する課長。

    「やっぱ死ね! 殺すぜったい殺す! 死んでるけど、また死ね! いまこそ太閤殿下の御恩に報いるときだ!!」

     そんなとき――ブィーン。と2人がいる部屋の扉が開いた。

    「なーにやってんの?」

     声の主は、年端もゆかぬといった、ツインお団子なピンク髪の美少女。おおきな瞳をまばたかせ、揉めている2人に視線をおくる。

    「「!?、トスンパ主任」」

    「もー、いくら待っても2人がこないから。こっちから、きちゃったよお」

    「いま、向かうところでした」「……すいません」

    「……ま、いいけどさ。さーオシオキだからね。じゃーん。今日も新しい洗濯バサミよういしたよ」

    「クッ……やはり」「……あたらしいヤツなのか」

    「きおつけ!」

     ピシッと横に並ぶ、2人の天界警察官。石田課長と部下小早川。

    「それじゃあいくよー」

     たのしそうに、洗濯バサミのカラーをえらぶトスンパ主任。
     その主任の胸にあるID。
     
     そこには、


     ――『トスンパ・太閤』とかかれていた。



    禁忌魔術師を追うHIMAWARI&TSUBAKI(陽野ひまわり)

    「……ガラ……、ナ……」

    呼びかける女の声がする。

    「ナイアガラ……起きなさい」

    別の女の声でも呼ばれ、AIガラナ、コードネーム「ナイアガラの滝」は声紋認証で再起動した。

    「まさかあんな大事な場面で充電切れを起こすなんて。スマホ並みの持続時間の短さね」
    コードネームHIMAWARIが呆れたように嘆息する。
    「そのおかげで夕日ゆうやとかいう探偵とミコトとかいう男の追跡を免れたんですもの。彼ら、私が置いたダミーのエアドールを死体と間違えて動揺してらしたわ。これで当分このロボットの追跡は中断されるはずですわ」
    オホホホ、とコードネームTSUBAKIが高らかに笑う。

    「けれどもおかしなことだらけね。元々私たちはカクヨム内に蔓延る不正の黒幕を暴こうと、人気作家のフタヒロとさつきまるに疑いをかけてこのボットを投入したはず。それなのに、私は本物のガラナに殺されかけるし、まるでおびき寄せられたかのようにカクヨム作家が集まってくるし、やはり黒幕に私たちの行動が読まれているとしか思えない」
    「そうですわね。それにしましても、ゆうけんに空振りした扈三娘こさんじょうのエアドールが役に立つなんて、思いもしませんでしたわ」
    「ええ。間一髪だったわ。冷蔵庫に閉じ込められる直前に身代わりの魔術で脱出できたのですもの。ただ……」

    HIMAWARIが顔を顰めて悔しげに呟く。
    「私たちの最終兵器、シン・チワワを冷蔵庫に置いてきてしまったのが悔やまれて……」

    「そうね。アレがないと、伝説のブルマーに太刀打ちできませんわね。
    ガラナ側があのブルマーをすでに手に入れたとなると、対抗するにはあともう一つ。時空の狭間に漂っているはずの……」
    切れ長二重の瞳をキラリと光らせるTSUBAKIに呼応して、HIMAWARIが頷く。
    「ええ。わかってるわ。伝説の白サイハイね。
    それについては時空警察の知り合いに捜索を頼んであるから大丈夫」

    「では、HIMAWARIちゃんはこの“ナイアガラの滝”を匿いつつ、白サイハイの入手に尽力してくださいませね。
    ワタクシは引き続きガラナ陣営の監視をしつつ、シン・チワワ奪還のタイミングを図ってまいります」

    そう言うが早いが、真紅のレザースーツに身を包んだTSUBAKIは軽々と跳躍し、天井に姿を隠した。

    「TSUBAKIちゃん、相手は腐っても禁忌魔術師と無駄に顔の整った手下よ? 変態チックな偽装をする双子の兄にも気をつけて! それと……」

    姿の見えないTSUBAKIに向かって、HIMAWARIが言いにくそうに言葉を向けた。

    「TSUBAKIちゃん、さっきから酸っぱい臭いがプンプンするわ。身を隠してる意味がなくなるから、口臭ケアを忘れずにね!」


    TSUBAKIからの返答はない。
    しかし、洗面所の方向へと移動していく気配を察知して、HIMAWARIはほっと息をつき、フタヒロ達が残していった酒のつまみをこっそりと食べだした。



    あかされた『カクヨム』の真実と……(関川二尋&北乃ガラナ)

     再びガラナの部屋
    薄暗い部屋の中は青い光でぼんやりと輝いている。

    「いよいよ満願成就の夜が来た!」

     ガラナはこの日のために用意した黒いマントを羽織っている。
    雰囲気を出すために裏地には光沢のある真っ赤なシルクを張ってある。

    「はっ、いよいよこの時が来たのですね……」
    フタヒロは整った顔をガラナに向けた。

    (こいつ……会う度に顔が整ってきているな……まさかな)

     ガラナはそんなことを思うが、話をすすめる。

    「思えば長い月日だった……この計画のために死体を用意し、思わせぶりな館を建設し、ミステリーを匂わせた企画まで用意した。そう、彼らが好みそうな舞台をつくりあげた」

    「実に困難な道のりでした……」

     憂いに満ちたフタヒロの横顔はその苦難の日々を如実に物語っていた。
     ちなみに少し額にかかる前髪がまた美しい。 

    「だが、この困難な道のりもまた、すべてはボクの野望のため!」
    「ハッ。ガラナ様の目論見どおり、たくさんの作家が集まってまいりました。カクヨム愛にあふれた作家たちが……」
    「そう、愛にあふれた作家たちがな、クックックッ」

     ガラナは含み笑いを漏らした。だが、彼の笑いは口の中に納まるものではなかった。それはすぐに高笑いへと変わっていった。

    「ハァーハッハッ! 笑いがとまらんわっ!」

     ガラナが指をパチンとならすと、壁面の一角が上下に開いた。
    そこから、まばゆいばかりの青い光が部屋にあふれだす。

     ガラナはゆっくりと光の元へと歩みを進め、フタヒロがそれにつづいた。

     ――巨大な空間だった。なにかの研究所のようであり、上から眺めれば、地下式のミサイルサイロのようにも見えただろう。

     その空間の中央に、その空間に相応しいサイズのフラスコが設置されていた。青白い光は、そのフラスコに満たされた液体のようなものからだった……。

     靴音を響かせ、ガラナとフタヒロが歩みを進める。
     空間の中央部分、フラスコが設置されている根元部分にビューローと呼ばれる、古めかしい机があった。その背後は太いパイプや管が幾重にも繋がれ、それぞれがフラスコへと向かっている。机上には、場違いなノートパソコンが置かれ、見慣れた小説投稿サイトの。ホーム画面が映り出されている。

    「彼らは勘違いをしている。カクヨムがただの小説サイトだと」

    「ふふ、これこそ『禁忌の魔術』そのもの、なのですがね、魔術師たるガラナ様の最高傑作」
    「そうだ。これこそ……」


    「「禁じられた魔力炉『カ・クヨム』!!」」


    「人のもつエネルギーのなかで、もっとも高貴で強いエネルギー。……幾多の生物群を出し抜き、我々人類を覇者へと押し上げた、おそるべき『力』を吸収する魔力炉」

    「その『力』とは……」


    「「創造力!!」」


    「『カ・クヨム』は、書き込んだ者の創造力を、すこしずつ吸収し、結晶化することができる」

    「そうです。ときとして、彼らが指を動かした以上の疲労感を得てしまうのは、そのためなんですがね……」

     フタヒロの整った顔に、不気味な笑顔がかさなる……。

    「『カ・クヨム』に書き込む者達は、文字という、現代においては乏しく貧しいとされる表現手法のみで、日々物語を紡ぎだす者達だ。その物語には、……ほんらい、画も、音も、光も、匂いもあるわけはない……。しかし、ときとして、それらを感じさせてくれる。現実に無いものを、有るものと感じさせてくれる」

    「……錯覚ですよ。そんなの」

     フタヒロは整った顔には似つかわしくない様子で、吐き捨てるようにつぶやいた。
     
    「否。それは錯覚ではないのだ。錯覚などではない。読む人の心がそこに有る限り、感じた人の心がそこに有る限り……そこに拡がる世界もまた現実。ボクは常々思う。彼らは神なのだ。現世における『小さき神』であると。世界を創造する、途方も無い『創造力』をもつ、えらばれた者達であると……」

    「そんな『小さき神』達の力を、吸収する……」

     フタヒロの整った顔に青い光が当たり、その美しい顔に陰影を添えている。

    「そうだ。そうしてつくりあげた結晶を用いれば、どんな奇跡も起こせる。そう、まさに本来の意味での『神』に匹敵する力を得ることさえ……」

    「……しかし、それには時間がかかりますよね。……毎日すこしずつでは」

    「彼らの活動に影響を与えない程度ずつだからな、そこは仕方がない……」

     フラスコの光を愛おしく眺めるガラナ。そのまなざしは優しく、なにを想うのか。

    「……仕方がなくは……ないですよ」

     そういって、ガラナの背後に忍び寄るフタヒロ。その手には、透明な鉛筆のようなものが握りしめられていた。実際はもう少し太さがある。鉛筆と長ネギの間くらいの太さだ。
     フタヒロはこれを【アトランティスの魔術師殺し】と呼んでいた。



    整った顔に隠されたフタヒロの野望(北乃ガラナ)

    「……仕方がなくは……ないですよ」

    「ああ、そうだったなフタヒロ。キミのアイディア。リレー小説企画は素晴らしかった」

     ガラナが振り返ると、整った顔のフタヒロは、握り込んだ透明な鉛筆をポケットにしまい込んだ。
     いまは、まだ……そのときではない。

    「この自主企画に参加した作家の『力』は、他の『カ・クヨム』を利用する者たちより、高効率かつ高純度で吸収することができます。なにせ、そのキャラクター達はカクヨム作家本人たちですから。そのため、いつもよりも強い疲労感を感じていることでしょう」

    「そうだな、強い疲労感を感じていることだろう」
    「強い疲労感を感じていることでしょうね」

    「だから一週間で終わらせるわけだ」
    「ええ……今回のは、実験データを取るための先行試験ですから……」

    「こんごは、疲労感をほぼ感じないレベルまで改良することができる。そうだったな」

    「……………………はい」

    「コンテストなどと併用すれば、この魔力炉のエネルギーは、あっという間に溜まるだろうな」ペタペタとフラスコの表面に触れるガラナ。

    「そのとおりですとも。……そういえば、ガラナ様は、溜めたエネルギーをどうするつもりですか?」

    「え、決まっているだろ『世界平和』」

     フラスコにはキラッキラした笑顔をうかべるガラナが映り込んでいる。

    「(このクソが……)」

    「ボクの願いはそれしかないよ『世界平和』(キリッ」

    「(きったねぇぞコイツ)」

    「ボクは生まれてこのかた、初詣でも『世界平和』しか願ったことはないよ。これって、人としてフツーのことだよね」

    「(フツーときたよコイツ)」

     いきなり『じつはいい人』ぶりを発揮する目の前の人物に、ふつふつと怒りが沸き起こるフタヒロ。目の前の唾棄すべき存在北乃ガラナに対して、最大限に侮蔑の表情をうかべたのだが……。気取られないように、すぐに表情をもどす。
     
    「(だいたい、屋敷内に何人の死体を転がしてるんだよオマエ……。今さらいい人ぶっても、キャラクターブレブレだろが……。たしかに、そういうマンガとか多いけどさ……。さんざん人を殺めて悪行を働いておいて、仲間になったとたんいい人で幸福展開とかって、それ人格破綻者だから。被害者の家族の事とか、かんがえたことあんの? 私の物語ではぜったいにそんなヤツは……)」

    「フタヒロもそうなんだろ?」

     そんなことを想うフタヒロの心を知らず。同意を求めるガラナ。

    「はっ……はい。そのとおりですともカスが死ね」

    「よし、そろそろみんなを集めて、感謝の言葉を伝えるとしよう。企画はお終いだ」
  • 『カクヨム』スッカス作家その名は→(北乃ガラナ)

    😈

     それからフタヒロが動いた。

     色々とあって、参加者全員を魔力炉の空間に集めた。
     最短で、無理矢理エンディングへの流れをつくるためだ。

    「「「(汚えぞガラナ!!)」」」

     だれかの……というか、集まった全員のそんな心の声が聞こえる。

    「色々とあったって……」
    「そこを描くのが小説だろうに……」
    「整合性とる労力を惜しんだな」

    「途中を書くの面倒になったんでしょ」
    「カクヨムWEBコンテスト中に10万文字かけよ……」
    「いや……労力というか、このばあい北乃ガラナの基本カク力不足……」

    「せっかくいい流れだったのに……」
    「カクヨムWEBコンテスト中に10万文字かけよ……」
    「『Niagara Falls』は、どうすんだよ?」

    「天界警察編の続き書いている暇あるなら、本筋をまとめろよ」
    「カクヨムWEBコンテスト中に10万文字かけよ……」
    「汚ねえぞガラナ!」


    「「「そうだ! 汚ないぞ北乃ガラナ!」」」

     その場に集められたカクヨム作家全員が、声を揃える。

    「うっさいわ! ボケ!」

     ……逆ギレだった。それはもう見事なまでの逆ギレ。

    「コメディに綺麗も汚いもあるか!! あと叶! オマエだけは表に出ろやゴルァ!」
     
     一週間とはいえ辛苦を共にした、連作リレー小説の仲間達に向かって逆ギレ……。
     大人として、やってはいけないことだった。
     ……むしろ、人として、やってはいけない事だった。

    「「「逆ギレかよ!」」」

    「黙れ小僧! お前らにこの小説の不幸が癒せるのか? おまえらが、それぞれが好き勝手投げてよこした小説が『カクヨム愛がなければカブトムシをたべればいいじゃない』だ! いくら好き勝手っていったってな! 好き勝手すぎんだろ! 限度あんだろ! まとめ読んだか? どんだけのカオスだよ! こんなん、今日中に綺麗にまとめきれるか! ミステリーになれず、ホラーにもなりきれぬ……。哀れで醜い、それでもな……こいつは、かわいい作品だ! お前らにこの作品を救えるか!?」

    「うっわ……」
    「ここで、そんなパロディ……」
    「さぶっ」

    「前々から思ってたけど……北乃ガラナって」
    「カクヨムWEBコンテスト中に10万文字かけよ……」
    「安っすいよな……」

    「あ、それ俺も思った。全作品に見事なまでに、中身ない」
    「カク人がそうなんでしょ。仕方が無いよ、そこは(笑)」
    「プッ……スッカスカ(笑)」

    「「「スッカスカ! スッカスカ! スッカスカ! 北乃ガラナはスッカスカ!!」」」

     全員の「スッカスカ!」コールが魔力炉空間に響き渡る。

    「ク……ッ……」

     その場で崩れ落ちる北乃ガラナ。しかし彼はよろよろと立ち上がり、ふりしぼるような声でうめいた。

    「……せっかく、これからボクが、全員ひとりひとりに感謝の言葉を述べて、これからもカクヨムを盛り上げていこうぜ、これからもお互いがんばろうぜ的な、いい感じに感動のラストにしようとしてたのに……」

    「「「スッカスカ! スッカスカ! スッカスカ! 北乃ガラナは頭がスッカスカ!!」」」

     なおも鳴り止まぬ「スッカスカ!」コール。このことは北乃ガラナの心を痛めた。ひどく痛めつけた。

    「スッカス作家!!」

    「「「wwwwww」」」

     誰かが、ダブルミーニングなうまいことをいうと、どっと笑いが起きる。

    「……スッカス作家とまでいう。……ああ、そうさ。ボクはスッカス作家だ……。だからそんなボクが、とっておきのスッカスカなオチを投下してやる。おまえらの一週間を台無しにしてやる……フタヒロ!」

    「……(プッ)」

    「いま、キミまで笑っていなかったか? ……フタヒロ」

    「いえ……そんなことは。けっして」

    「……まぁ、いい。フタヒロ『例』のやつを『例』のオチを」

    「『身体の節々』ですか? それとも『眼精疲労』? ここはやはり定番の『膝の痛み』でしょうか? 私の近況ノートで匂わせていた、最新版の『腹筋がバッチリ割れる』にしますか?」

    「そうさな……」



    禁忌魔術「Feti/RERO」の末裔兄弟(陽野ひまわり)

    「ちょっと待ったぁーっ!!」

    魔力炉の空間に声が響いた。
    全員の視線がその声の主に注がれる。

    とあるヘンタ……いや、変装した一人の男が入ってきた。

    そう。上半身がカブトムシ、下半身がブルマーといういで立ちの男、フタヒロの双子の兄であるイチヒロである。

    メイン武器がナイフのみという、RPG初期装備以下のフタヒロの双子の兄、イチヒロである。

    泥棒である『しめさば』にワンパンでKOされた、フタヒロの双子の兄、イチヒロである。

    「ほ、ほっとけ!」

    イチヒロが天にむかって、ツッ込みを入れる。

    「あっ! やっぱりお前履いちゃったな!? そのブルマー」

    ガラナがわなわなと震える指をイチヒロに向けると、イチヒロはにまりと不敵な笑みを浮かべた。

    「ええ。もちろん。なぜならこの伝説のブルマーは対禁忌魔術師のためにあるのですからね。そう……。禁忌魔術の別の一派である、この私のために」

    フタヒロと同じ整った顔を、面白そうに歪めるイチヒロに、ガラナは憎悪の炎を燃やした。

    「なんだって……!? お前が、禁忌魔術「Feti/RERO」の遣い手の末裔だと……!?……ということは、まさか」

    「そうです。私が変なおじさんです」

    ドタタッ。と、その場の全員が倒れ込む。

    その中でも大きくリアクションをとってみせたのが、北乃ガラナだ。
    コメディを愛する彼は、その愛故に、その場の誰よりも大きくて完璧なリアクションをキメてみせた。本吉新喜劇でも座長になれる逸材だ。
    ――しかし、その全力リアクションが命取りとなる。
    大きな隙ができた。

    「兄さんよくやった!」

    ガラナの背後で、だっふんだぁ! のキメ顔をしたフタヒロの瞳が大きく見開かれた。【アトランティスの魔術師殺し】を、ガラナめがけて振りかざす

    「死ねガラナ!!」

    きらり。と水晶体。

    「お前に付き従うフリをしていたのは、すべてはこの魔力炉のエネルギーを手に入れるためッ! このエネルギーは我が兄弟「Feti/RERO」が使わせてもらううぅぅッ!!」

    長ネギの先端を尖らせたような、透明鋭利な物体をガラナの背中に突き刺した。



    サイハイソックスブルマーの攻防(陽野ひまわり&北乃ガラナ)

    ぷつり。と、ガラナの皮膚を突き破る感触が【アトランティスの魔術師殺し】を通じ、フタヒロの手に伝わった刹那。

    「ちょっと待ったぁーっ!!」

    魔力炉の空間に声が反響する。
    そこにいた全員の視線が、ふたたび釘付けになる。
    走り込む男。その名は『相良』。

    彼は警視庁サイバー捜査課警部であり、身分を隠してはいたが石田や小早川同様、時空警察のメンバーである。出向という形で、天界から派遣されてきている彼の本来の任務は――天界をも滅ぼしかねない『禁忌魔術』を地上から消し去ること。しかし彼は地上でサイハイソックスに出会い、魂を売ってしまっていた。魂を売ってしまっていた。

    そんな彼が、その手に高々と掲げているのは、一足の白いサイハイソックス。

    「イチヒロ! フタヒロ! 禁忌魔術「Feti/RERO」の完成のためには、ブルマーのほかにもう一つ、この白サイハイがなければならないんだっ!」

    「「そのとおりよ!」」

    天井からスルリとロープが垂らされ、そこから滑るように二人の美しい女性が姿を現す。それぞれが、赤と黄色のレザースーツに身を包んでいる。TSUBAKIとHIMAWARIだ。

    「ようやくここに伝説のブルマーと白サイハイ、二つが揃ったわ。」
    「これで私たちカクヨム作家の悲願が達成される!!」

    そんな二人をスルーして、フタヒロは相良に向き合う。

    「で、なんでおまえ相良は、白サイハイを手に持ってるんだ!?」
    「え?」
    「ここはイチヒロみたいに、履いて登場するのがお約束だろ!?」
    「やれやれだぜ」白サイハイを掲げたままの相良は口角を上げる「フタヒロ! お前はなにもわかっていない! やれやれだぜ」

    「は?  それは、どういうこ――」

    「俺にとっての白サイハイはこの世の至宝! 神器! 聖遺物! 神が与えたもうたこの清らかなレッグウェアは、完璧な曲線美を誇る女性の脚にこそ履かれるものなのだッ! 俺のようなおっさんが、興味本位で身につけてよいものではない! 見た目一発の乾いた笑いをひとつ取るためだけに、断じて汚すべきではないッ!!」

    「(……うっわ、めんどくせえ)」うんざりといった表情をうかべるフタヒロ「……じゃあ、そのサイハイはどうする? ヒラヒラと手に持ったままじゃ「Feti/RERO」は発動しないんじゃ……。……あ」

    「気がついてくれたようだな兄弟。いかにも左様」

    そう言う相良とフタヒロの視線が、同じ方向に向けられた。
    その目はらんらんと輝いている。

    「「え!? ……と、 私たちにこれを履けと?」」

    「(コクコクコク)」二人の首が高速で縦に振られる。

    「もちろん、どちらかで構わない」
    「……そうだな。ブルマーとサイハイ両方を身につけないと、意味が無いからな」

    ……セクハラだった。
    リレー小説という場を利用しての、立派なセクハラだった。

    「「「(さすがだ。さすがだよ相良君。フタヒロ君)」」」

    その場の男性陣全員の親指に力のこもった、心中サムズアップ。
    期待感で胸が高まる。熱気が部屋を覆う。
    声に出さずとも誰もが解る。解り合えている。

    「……う」「そんな目であたしたちを見ないで……」

    全身ぴっちりのレザースーツをまとったTSUBAKIとHIMAWARIが後ずさる。

    「しかたないよ……だって、相良が女にしか履かせられないって言うし」
    「しかたないよ。ブラの目撃情報があっても、さつきまるが結局男か女かについては誰も明かしてなかったし」
    「……そもそも、さつきまるはいない」

    男性全員がチラチラと二人に視線を送る。

    「あー誰か穿いてくれないかな」
    「誰か女性が履いてくれないかなー」
    「誰か履ける者女性はおらぬのか!」

    その場の空気に、いたたまれなくなった女性二人は白サイハイを互いになすりつけ始めた。

    「HIMAWARIちゃんが履いたらどうかしら?」
    「でっ、でも、このサイハイを履くにはこの全身スーツを脱がなきゃじゃない。私、この下はノーブ……コホン」
    「それはあたしも同じですわ……」
    「つ、TSUBAKIちゃんは! レオタードタイプのレザースーツなんだから! ブーツさえ脱げば手軽に履けるんじゃ」
    「こういうのはHIMAWARIちゃんの方が、似合うと思いますわよ……」

    「「「(そういうのいいから、さっさと履けや!)」」」

    「ボクが思うに……サイハイを履いていいのは十代、頑張ってもU25だ。お前達はどう見てもその資格がないだ――」
    「邪魔をするな。ガラナ」フタヒロは【アトランティスの魔術師殺し】を、その頭に突き立てた。ドシャと。血だまりプールに沈むガラナ。

    そんな中、イチヒロが動いた。
    「……よかったら、コレも」イチヒロは、自らが穿いていたブルマーを、サイハイで揉めている二人に差し出す。その表情は、なまら凜々しい。


    ――下半身はモザイク処理が施されている。


    ブルマー直穿きな彼イチヒロだったから。脱げば、このことは当然だった。

    「「うぎゃああああああ!!」」

    二人の嬌声が響き渡る。

    ……セクハラだった。
    というか、むしろ立派な犯罪だった。

    でも彼が、取り締まるべき警官だった。



    大雑把に言うとカブトムシには栄養があった(関川二尋&北乃ガラナ)

    そしてほぼ同時に……

    「ちょっと待ったぁーっ!!」

    魔力炉の空間に声が響き渡った。
    そこにいた全員の視線が、みたび釘付けになる。
    もっと他に登場パターンあるだろ……。と思いながら釘付けになる。

    稲妻のごとく現れたのは、さつきまるだった。

    「あ。間にあわんかった」
    さつきまるはそう言って、つまらなそうにガラナの体を蹴とばした。
    ガラナはうつ伏せで、脳天には【アトランティスの魔術師殺し】がグッサリと、それはもう救いようもないくらいグッサリと刺さっている。

    「さ、さつきまる! お前殺されたはずじゃ……」
    サイバー犯罪課の相良が、驚きに指を震わせながらさつきまるを指さす。
    「そ、そうだ、確かに磔になっていた!」
    相良の同僚のうみはワナワナと震えていた。
    忘れているだろうが、二人は捜査の過程でさつきまるの死を目の当たりにしている。

    「あ、アレですか、ミツヒロですよ。変装上手のね。もう一人、都合のいい弟がいましてね。三つ子なのですよ」

    イチヒロはニヤリと笑った。

     ――その下半身はモザイク処理が施されている。

    「マジで、都合よすぎだな」
    「……なんという捨てキャラ」
    「……なんていう、ご都合主義。あとお前イチヒロ……いいかげん、何か穿けよ」

    「そんなことはどうでもいい!」

    イチヒロが吼えた。

    ――その下半身はモザイク処理が施されている。

    「「「ぜんぜんよくない! とくに下半身!」」」

    「フッ、些末なことだ……」この場にいる全員の声を、無視するイチヒロ。
    その様子はあいかわらず凜々しく、迷いや戸惑いと言った感情は皆無。

    そしてなんかTSUBAKI&HIMAWARIとの距離が、近くなっていた。
    先ほどから、レザースーツの美女二人が、そのことに気づいて離れては、イチヒロがじりじりと近ずく。そのようなことがくり返されていた。

    それは……セクハラというには、あまりにも堂々としすぎていた。
    イチヒロのは大きく、重く、ぶ厚く、そして大雑把すぎた。
    これはまさに、リレー小説という場を利用しての、犯罪だった。

    「それより、今こいつに死なれちゃ困るんだ!」
    そう言ったのは黒馬くぅ。

    「……せっかく締め出しておいたのにノコノコと再登場してくるとは」
    「まだいたのかよモブ」「名前もらったからって調子こくなよ」
    誰かの声が漏れる。

    「いや、オレだって黒幕として、オレの役割が何だったか知りたいんだ!
     オレは何のために生まれたのか、オレの本当の使命はなんなのか!」

    「いや、それを言うならオレも知りたい」と、橘ミコト
    「ああ、オレもこの物語でどういう役割りを果たしたのか知りたい」
    しめさばも不満顔だ。
    「自分もだ。結局なんの事件だったのかもわからん」
    夕日ゆうやも腕を組んで困り顔だ。

    そんな混沌の中……虫の息だがガラナはかろうじて意識を保っていた。
    彼は幸せだった。
    こんなにも人が集まり、楽しく自分なりの物語を残してくれた。
    それをまともな作品に仕上げられないのが心残りだった。

    「ああ、ボクにもっと、カクヨム愛があれば……」

    ガラナがそうつぶやいた時だった。

    「あ! それだ!」真詩雫が叫んだ。
    「ウサギ! めこ! アレ持ってきてよ!」「あれってなに?」「カブトムシよ! タイトル回収よ! カクヨム愛が足りない時はカブトムシを食べさせればいいのよ!」

    「……えっ!?」
    ガラナのつぶやきは、誰の耳にも届かなかった。

    「よーしっ! いってみよう!」
    虫の息のガラナの口にカブトムシが詰め込まれた。トップバッターは真詩雫だった。とうぜん自力で噛めないので、ガラナの頭と顎を掴んで強制的にカミカミさせた。

    「まだまだいけそう! どんどん持ってきて!」

    その声が合図となった。
    その場にいるカクヨム作家全員が、カブトムシを手にガラナに群がった。

    みんなで一匹ずつ、ガラナの口にカブトムシを押し込んでゆく。

    「ガラナ、帰ってこい」
    「お前はこんなところで死ぬ奴じゃない……」
    「ガラナ! 元気になれ!」

    二匹、三匹……。

    わしわし動く甲虫をガラナの歯で砕きながら、奥へ奥へと充填する。
    台詞だけが妙に熱いのだが、どの人物も、表情は怜悧そのものだった。『こんなことに巻き込みやがって』という、怒りや憤りがそうさせているのだろうか?

    「みんなお前のコメディが大好きなんだよ」
    「……ああ、こいつの小説を読んでいると安心できる」
    「こんなスッカスカな内容でも、公開していいんだと安心できるからな」

    五匹……七匹……九匹。とカブトムシが、ガラナの口に詰め込まれていく。

    「こいつのに比べれば、自分の小説はマシだ……」
    「あ……みんなもそうなんだ。私もそう思った」
    「カクヨムWEBコンテスト中に10万文字かけよ……」

    十匹……十五匹。

    みんなの想いが一つに重なった瞬間だった。


    ――そしてガラナは一命をとりとめた。

    カブトムシがそうさせたのか?
    それとも、これがカクヨム愛なのか。
    もしくは、これが『ふしぎな力』なのか……。

    とにかく奇跡が起こり、北乃ガラナは蘇った。

    「……おまえら全員。ブッ殺す」


    フ女子のみなさまお待たせしました2。フタヒロとさつきまるのキャッキャウフフ越え(北乃ガラナ)

    全員の注目が、ガラナにカブトムシを詰め込むことに注がれている間に、その場を脱した人物がいた。北乃ガラナを裏切り、魔力炉『カ・クヨム』を手中にせんとする真の悪。悪の中の悪。すくいようのない悪。整った顔をもつフタヒロだ。

    フタヒロは、館の司令室へとすべりこみ、パネルを操作していた。
    多くのモニター画面には、魔力炉の様子や、集められたカクヨム作家達が映し出されている。

    「……いよいよ仕上げだ」モニターの光が、フタヒロの整った顔を照らしあげ、暗い部屋の壁に大きな影をのばす「……全員には、ここで死んで貰おう」

    「フタヒロさん。ついにアレを使うんですね?」声の主は、中性的な顔立ちをもつ男。さつきまるだ。彼もまた、魔力炉の部屋を脱していた。

    「いま使わずしていつ使う?」
    「……そうですね。いよいよです」

    「ただ死んで貰うのはもったいないからな。無駄に創造力をもつ『小さき神』達の力を、命ごと絞らせてもらおう……ククッ」
    「全員いきたまま粉砕……絞り出しやすくして。ですね……」
    そういい、フタヒロの背中にしなだれかかるさつきまる。

    「君のアイディアには感嘆したよ。さすがだよ、君は……」
    整った顔の男はそういうと、さつきまるのしなやかな手をとって、その甲にくちづけをした。
    「これぞ……最高のショー……」

    「どんな表情を見せてくれるのかな彼らは。どんな悲鳴を、奏でてくれるのだろう……愉しめそうだ」
    「んっ……最初から、こうすればよかったんですよ」
    いつもそうしているように、さつきまるは、フタヒロの首筋に舌を這わせた。

    脱ぎ捨てられた着衣が床にすべる。

    「小説なんかを介して……まいにち『力』を」
    「すこしずつ、吸い取るなんて」

    「「……まどろっこしい」」

    かさなる言葉とともに、ふたりの影もかさなった。


    ――モニターの画面の中では、ちょうど北乃ガラナが蘇ったところが映し出されている。音声が漏れた。

    「……おまえら全員。ブッ殺す」と。



    なんの為に生まれたのか?役割や使命など他者に問うものではない(北乃ガラナ)

    「……おまえら全員。ブッ殺す。フタヒロ! ……って、あ。そういえば裏切られたんだった」

    「フタヒロは、さっきからいないよ」
    「そういえば、さつきまるもいない……」

    「どういうことだフタヒロ! 出てこい! どこいった!」

    その様子をモニター越しに眺めるフタヒロとさつきまる。

    「ほほう……『ブッ殺す』そうだ」
    「へえ。じゃあやってもらいましょう」

    「おい! イチヒロ。茶番は終わりだ。何人かテキトーに……殺れ」
    魔力炉の空間にフタヒロの声が響いた。
    「バラバラにして、魔力炉にちょくせつ溶かし込もう!」と、さつきまる。

    「やれやれ……愉しかったんですがねぇ。コレ」
    上半身カブトムシ下半身モザイクのイチヒロが答える。

    「え?」
    「イチヒロ!?」

    次の瞬間。イチヒロが動く。

    どば。と血液の間欠泉。倒れ込む4人の身体。

    真詩雫・ウサギ・めこ。フリーダムな若者達の頭部が、サッカーボールのようにイチヒロの小脇に抱えられていた。
    いや、物語を書く者の頭部だから、このばあいは『作家ボール』か。
    「よっ、と」
    それらをつまらなそうに蹴飛ばすイチヒロ。
    それぞれが弧を描き飛んで、液体で満たされたプールに沈む。

    「あいつらは、仕方ないな……」
    「あんなフリーダムな登場の仕方じゃあな……」
    「土足であがって、床にタバコの火をおとしてカブトムシだらけにした……」

    「序盤に殺してください。って、いっているようなもんだよな」
    「むしろ長生きしたほうじゃね?」
    「それはみんな、ホラ。優しかったから……」

    酷い死に様のフリーダムな若者たちに、あんまりなリアクションのカクヨム作家達。

    「あー、なんか、リアクション薄くね?」
    「もの書くヤツなんて、こんなやつらばっかりだよ」
    「はは、違いない」

    「な……なんてことを……」

    しかし、心ないリアクションの人でなし共の中にあって、悲しみに打ち震え、フリーダムな若者達の死に寄り添う者の姿があった。
    涙を袖で拭う者。その名は北乃ガラナ。

    「な……なんてことだ」

    彼は、彼だけは、フリーダムな若者達の死に寄り添っていた。
    心ないリアクションの、人でなし共の中にあって彼だけが……。

    「前途ある若者達の命を……こんな形で散らすなんて」

    「え?」
    「ガラナ……おまえ」
    「なにを言って……」

    「ゆるさない……ボクは許さないぞ! フタヒロ!!」

    拳のグーに力をこめ、天に突き出す北乃ガラナ。
    そうしながらも横目でチラと周りに視線をむけるのを忘れない。
    そうすると、何人かと目があった。

    「ボクが! このボクが! 君達の敵をとる!(キリッ」


    「「「(こいつ北乃ガラナマジできったねえええええ!)」」」


    この場にいる全員が、汚物をみる視線を北乃ガラナにとばした。

    「お前達も、お前達だ! 仲間が……たいせつな仲間である真詩雫たちが……無残に殺されたのに……某フォーマーズの1話モブヒロインばりに惨殺されたのに! その揃いも揃って、へらへらしたリアクションは何だ! 人のこころはあるのか? おかしいんじゃないのか!?」

    「(おかしいのは、お前北乃ガラナだ!!!!)」

    全員の心がひとつになった。


    余談だが、誰も気がつかないが、イチヒロの蹴った首は4個あった。
    ひとしれず死んだ男。黒馬くぅ。
    彼はなんのために生まれ出でたのか? 役割を、使命を知らずに、その生を終えた。


    勝者の退場と混濁を極めた意識をもつ殺戮人形(壊れた人形&北乃ガラナ)


    「さてと……お次は……しめさば。おまえだ! さっきは『佐々木希』のせいで、遅れをとったが、今回はそうはいかねえ」

    カブトムシブルマならぬ、いまやカブトムシモザイクのイチヒロがそういい、しめさばとの距離を詰める。

    「可哀想になぁ……こんどこそ俺にシメられちまうなんてよ」

    「さきほども言ったが、私はしめさば。一度酢で〆られている。これ以上シメられてはただじゃすまない。そうそう、確かめたいことがあるのだが、貴方はしっかり派かい? それともあっさり派? 私はどちらかというと、あっさり派でね。身が白くなったシメ具合よりかは刺身のような――」

    「そうさな……俺は……ぶふぉ」

    イチヒロの注意をたくみに逸らした隙に、しめさばの拳がイチヒロの顔面を捉えた。
    そのまま後ろに吹き飛び、魔力炉のプールに身を落とす。
    だが、彼イチヒロは色々と大満足だった。
    あるいは彼こそが、このリレー小説の勝者であったかもしれない。
    親指を立ててサムズアップしながら、イチヒロは炉に沈んだ。

    「しめさばくん。さすがですっ!」黄色い声援がとぶ。黄間友香だ。

    「しめさばさん……アイツ女性の敵を駆除してくれて」
    「ありがとう。ほんとうにありがとう!」

    駈け寄って手をとるのはTSUBAKI&HIMAWARI。
    いろいろと鬱憤が溜まっていたのだろう。二人の表情はスッキリ明るい。

    「ちょっと、わたしのしめさばくんに馴れ馴れしくしないでよ」黄間がわりこんだ。

    「し
  • 勝者の退場と混濁を極めた意識をもつ殺戮人形(壊れた人形&北乃ガラナ)


    「さてと……お次は……しめさば。おまえだ! さっきは『佐々木希』のせいで、遅れをとったが、今回はそうはいかねえ」

    カブトムシブルマならぬ、いまやカブトムシモザイクのイチヒロがそういい、しめさばとの距離を詰める。

    「可哀想になぁ……こんどこそ俺にシメられちまうなんてよ」

    「さきほども言ったが、私はしめさば。一度酢で〆られている。これ以上シメられてはただじゃすまない。そうそう、確かめたいことがあるのだが、貴方はしっかり派かい? それともあっさり派? 私はどちらかというと、あっさり派でね。身が白くなったシメ具合よりかは刺身のような――」

    「そうさな……俺は……ぶふぉ」

    イチヒロの注意をたくみに逸らした隙に、しめさばの拳がイチヒロの顔面を捉えた。
    そのまま後ろに吹き飛び、魔力炉のプールに身を落とす。
    だが、彼イチヒロは色々と大満足だった。
    あるいは彼こそが、このリレー小説の勝者であったかもしれない。
    親指を立ててサムズアップしながら、イチヒロは炉に沈んだ。

    「しめさばくん。さすがですっ!」黄色い声援がとぶ。黄間友香だ。

    「しめさばさん……アイツ女性の敵を駆除してくれて」
    「ありがとう。ほんとうにありがとう!」

    駈け寄って手をとるのはTSUBAKI&HIMAWARI。
    いろいろと鬱憤が溜まっていたのだろう。二人の表情はスッキリ明るい。

    「ちょっと、わたしのしめさばくんに馴れ馴れしくしないでよ」黄間がわりこんだ。

    「しめさばさん」
    「あなたって一体……」

    「私は、ただの空き巣さ……」

    「しめさばくん! わたしのココロを盗んで! キャー」


    「いや……あの、ゴメン。しめさばさん!? ボクの出番……。真詩雫たちの敵が……」敵を失って所在なさげにガラナがつぶやいた。「おい! フタヒロ! なんとかしろ! 敵! オーダー! もっと強そうなヤツ! このままじゃ見せ場がない!」

    「……しょうがないな、ガラナは」
    「フタヒロさん……あいつのことは、もう忘れて……」
    怒気をはらんだ声でさつきまる。両腕でフタヒロの整った顔をじぶんに向かせた。
    「わ、わかっているって……。ガラナ! もう馴れ馴れしく呼ぶな! お前を裏切ったんだからな! おまえとは縁切りだからな! おまえはここで死ぬんだからな!」マイクにむかってそう叫ぶ。

    フタヒロは、とあるボタンを押す。
    魔力炉の空間にサイレンが鳴り響く。

    「フタヒロナイス!」
    「いってる場合か!」
    「なんだ……これ……」

    魔力炉のプールがせり上がり、水槽が内側より割れた。
    現れたのは、歯車がむき出しの巨大な機械人形。
    右腕には電信柱サイズの【アトランティスの魔術師殺し】左腕にチェーンソーを装備した、みるからにな殺戮マシーン。

    「ふはは見ろ! これこそが私が開発した、対魔術師兵器【アトランティス2】だ!」

    頭部には、似つかわしくないモニターが設置されている。
    その部分に次々とうかびあがる苦悶の表情。
    真詩雫・ウサギ・めこ・イチヒロ。ほかにも知らない顔が浮かんでは消える。
    それは、意識を取り込まれたカクヨム作家達のものだった。


    +++
    一方、刺された死体は、幽霊によって凍らされた。それは、さっきの幽霊ではない謎の存在だった。
    +++
    大群から逃れられた2人は、ゼェゼェと深呼吸を繰り返した。気持ち悪い感覚に襲われながらむせた壊れた人形に、幽霊は背中をさすった。幽霊は、壊れた人形を殺すはずがその感情が消えたのだ。そして、2人は呟いた主を見て、気絶しかけた。
    +++
    なんとか目覚めた2人は、さっきから息の合った会話を恐れていた。その怖さをごまかすかのように壊れた人形はアコギを持って、弾き語りをした。幽霊は、それを微かに微笑んだ。そして、さつきまるの部屋に向かった。
    +++
    一方、ほとんどのメンバーは死体が行方不明になったのに疑問を感じた。しかし、さつきまるは「幽霊が襲ったんじゃないですか?壊れた人形さんを襲った幽霊とは別の幽霊に。」と言った。そして、壊れた人形が到着した。ハァハァ、ゼェゼェ。そうまた疲れたのか息を繰り返した。しかし、残りの体力を絞り「さつきまるさん、早くあなたの家に帰りましょう」と言って倒れた。否、倒れかけた。壊れた人形は、妹である双子の幽霊を見ながら目をつぶりかけた。
    +++
    一方、さつきまる邸。二人の捜査官がいた。ある目的があった捜査官は、企み笑いをしながらあることを呟いた。「さつきまるは犯人だ。」と。
    +++
    しかし、さつきまるの死体は誰かがなりすましていた。厳密に言うとその可能性が濃厚だからだ。だって、さつきまるがガラナ邸にいたからだ。
    +++
    一方、ほとんどのメンバーは死体が行方不明になったのに疑問を感じた。しかし、さつきまるは「幽霊が襲ったんじゃないですか?壊れた人形さんを襲った幽霊とは別の幽霊に。」と言った。そして、壊れた人形が到着した。ハァハァ、ゼェゼェ。そうまた疲れたのか息を繰り返した。しかし、残りの体力を絞り「さつきまるさん、早くあなたの家に帰りましょう」と言って倒れた。否、倒れかけた。壊れた人形は、妹である双子の幽霊を見ながら目をつぶりかけた。
    +++
    一方、さつきまる邸。二人の捜査官がいた。ある目的があった捜査官は、企み笑いをしながらあることを呟いた。「さつきまるは犯人だ。」と。
    しかし、さつきまるの死体は誰かがなりすましていた。厳密に言うとその可能性が濃厚だからだ。だって、さつきまるがガラナ邸にいたからだ。
    +++


    「コイツ……」
    「な、なにをいっているんだ」
    「……わけがわからない」
    「でも、とりあえず」
    「逃げた方がよさそうだ」

    混濁を極めた意識をもつ殺戮人形。
    生まれ出でてもつのは、この世への恨み。
    無理矢理に動力源とされた、憐れな者達の思念。

    歯車がきしむ音を響かせながら、カクヨム作家達ににじりよる。

    「……役割……オレ。サイハイ。何のため……生まれた……? シリタイ。オレの本当の使命!!シメイ!使命!使命!使命!シメイシメイシネ!!」

    まさに『壊れた人形』そのものだった。



    カクヨム自主企画。17名で綴ったリレー小説エンディング『笑顔でサムズアップ』(北乃ガラナ)

    「おっし、見せ場きた! みんな下がってくれ」

     片髪で隠された紅眼の披露ポーズをキメる北乃ガラナ。つよく漂う『じぶんダイスキ』臭。彼の脳内では、超必エンディングの流れ。

    「……ボクが真詩雫達のカタキを。え……!? あれ……」急に視界が反転する【アトランティス2壊れた人形】が背後に寄り、ガラナを掴みおもいっきり投げ捨てた。

    「あ……がッ」壁にめり込む北乃ガラナ。

     【アトランティス2】の攻撃は止まらない。
     痙攣するガラナを壁から引き剥がすと、そのままマウントをとった。右腕の電信柱サイズ【アトランティスの魔術師殺し】が、パイルドライバばりに打ち付けられる。もう公共事業ですか? 大型ビルの基礎工事ですか? ばりにスコーンスコーンと打ち付けられる。
     もはや……原型をとどめてないんじゃないかというぐらい、ボッコボコ。
     「ちょっ……まてってオイ! やめろって空気よめ!」北乃ガラナの抗議をよそに、くるったようにスコーンスコーンする【アトランティス2】「シメイ!シメイ!……」「……あーもうしょうがない! わかった……もういいよバカ!」「シメイ!シメイ!シメイ!……」

    「みんな今だ! 迷うな! ボクごと【アトランティス2】倒すんだ!」

     北乃ガラナが叫ぶ。

    「え?」
    「そういう流れ?」
    「……そうか」

    「じゃあ遠慮無く」
    「でも、ここは彼だよ」
    「そうだな……彼夕日ゆうやの出番だ」

     彼、夕日ゆうやは突然の事に歓喜した。ずっと忘れ去られていたのだ。
    本来なら、主人公としての役割に相応しい『探偵』という職業の彼。それがこの扱い。こんかいのリレー小説の怖さを誰よりも味わった人物といって過言ではない。
     そんな彼が、満面の笑みを浮かべ――コホンと咳をひとつ「では……僭越ながら……」

    「あ、ちょっと待って!」「ハイ、これ……」

    HIMAWARI&TSUBAKIがストップをかけた。
    それぞれが手にしているのは、伝説のサイハイとブルマー。

    「うっわ……」露骨に嫌な顔をする夕日ゆうや。

    「いちおう渡さなきゃとおもって」「ありがとうゆうや君。ありがとう」

     これで自分達は忌むべきアイテムから解放される。そんな安堵感をうかべる二人。

    「コレを装備しないと」「ねー。最低限コレを装備しないと」

    「いまさらどうでもいいんじゃ、ないのかなぁ……」

     そんなことを言いながらも、いそいそと着替える夕日ゆうや。最終奥義をキメるという栄誉に抗しきれない。結論は一つしか無いのだ。

    「よし、これでいい」

     そこには――

     サイハイブルマー装備の『夕日ゆうや』があった。

     だれが、この結末を想像したであろう? 誰得展開なのだろう? くり返すが、彼こそが、こんかいのリレー小説の怖さを誰よりも味わった人物といって過言ではない。

    「では、いきます……」

    「がんばってー」「ゆうやー!」


    『コルル村ストラッシュ!!!!』


     ――ズ、ドバシュ。
    派手な斬撃音とエフェクト【アトランティス2】が真っ二つになり崩れ落ちる。貫通したダメージを受ける北乃ガラナ「そうだ……それでいい……んだ」

     普段いがみあい妬みあい足を引っ張り合っていた利己的で醜く。そう、まるで社会の縮図の汚い部分をあつめた膿のようなかれらカクヨム作家が共闘していた。

    「「「(最期の最期に、そこまでいうかよ……)」」」

     この様子を目の当たりにできただけで、北乃ガラナは満足だった。


    「みんな……。カクヨムをたのんだ……ぞ(ガクッ」


    「ガラナーーーーーーー!!」

     響いたのはフタヒロの声。のみ。気づくと、彼は館の司令室を飛び出していた。彼だけは駈け寄ってしまっていた。


     🐞


     ちょっと……というか、かなり展開が違ったが。北乃ガラナ的にこれでよかった。もう、これでよかった(断言)

     ……ほんとうは、某ードギアスの最終話とかみたく、じぶんが『全部の悪事をひきうけて死にました』的な、カッコオイシイ展開を書こうとしていたのだが、そんな展開はできなかった。そもそも、そんなカク力がなかったのだ。

     素直に、関川二尋さんにおねがいすればよかった。そしたら、うつくしいストーリー展開で誰もが納得のエンディングを迎えられるはずだった。
     だが、遅すぎた。……いや、遅すぎたという表現はこのばあい、正しくはない。北乃ガラナは『アトランティスのつまようじ』という、関川作品のファンだったのだ。ファンとして、連載中の邪魔をすることは、はばかられた。
     きっと「カブトムシのエンディングお願いシヤッス!」と、お願いすれば、心優しい関川さんは、嫌とはいわなかっただろう。……VATの時もそうだった。近況ノートに乱入して悪ふざけをする北乃ガラナを相手に、嫌な顔ひとつせずに相手してくれた。北乃ガラナの日の目を見ない作品も、読んでくれて応援コメしてくれた。そこに出てくるエルフヒロインをネタに遊んでくれた。ときどき読み返してしまうぐらい、ほんとうに楽しかった。最近になって、その作品はすこしだけ日の目を見た。そこまで書き続けられたのは関川さんのおかげが大きい。

     北乃ガラナにとって、このことは救いだったのだ。今回の自主企画。リレー小説が、このような関わりを、幸福な縁の存在を再認識させてくれた。

     常々おもう。いろんなカクヨムへの関わり方があるとおもう。いろんなスタンスがあるとおもう。カク人の背景も、置かれた環境も百人百色。想像ができないほどに様々なのだろう。うまくはいえないが、そんな中、関わってくれた方全員に、ボクは笑顔でサムズアップだ。
     


     🐞


     北乃ガラナは死んだ。

     だが、その死に顔は、あそびつかれた少年のように、すこやかなものだった。


    「「「おまえはもう、カクヨムにかえってくんな!」」」


    「まったく……とんだ目に遭ったよ」
    「時間の無駄だったな」
    「あーなんか損した気分」

     ゾロゾロと館を後にするカクヨム作家たち。

     願わくば、彼らのカクヨムライフに幸多からんことを。


     🐞


     そんな中、踵を返し館に戻る影。

     さつきまるだった。
     
     中性的な容姿にうかぶのは、倒れた戦士を労る慈しみの表情。

     彼は、横たわる北乃ガラナに歩みよると、その骸を抱え上げ、頭部を両掌でやさしく包み込んだ……。

     勇敢な戦士を死後ヴァルハラへ迎えるという戦女神がいたとするのならば、このような表情で迎えるのかもしれない。
     そのように思わせる、さつきまるの表情だった。



    饗宴終了。(北乃ガラナ)

     ――ペッ。

     さつきまるは、両掌で包み込む頭部に唾を吐きかけた。


    「おーい。さつきまる、なにしてる? いくぞー」

     雑にドシャ。と投げ捨てられる、ガラナの骸。

    「いまいくー」


     ――そして館には、誰もいなくなった。


     ……饗宴は終わった。

     転がる、ものいわぬ骸。

     その頬には、粘液がまとわりついている。

     それがつたい、床にとろりと滴った。

     そこに涙が混ざっていることに……だれも、気がつかなかった。
  • スピルバーグが大絶賛した気になり全米が鼻で笑った超大作でしたね。みなと過ごしたあの瞬間は忘れません。願わくばもう一度、夢に向かって共に進みたいものです。かけるのは夢では無くIDになりそうですが。
  • 今さらシングンマを読みました!
    ガラナさんの短編は初でしたが笑いました!
    なんともトホホな乾いた笑いが個人的に大好きです!
    しかしながら、今さら感もハンパなく、こちらでの告解にしました。
  • >さつきまるさん

    小津安二郎が「これぞ人の心のひだを丹念に拾い尽くした」と大絶賛を送った感に溢れた幻の伝説的作品という位置づけを後世の歴史家がすること違わぬ作品でした。


    >関川さん

    読んでいただき、ありがすいませんでした!

    これがボクの人生初完結作品です。そして通算3作目。

    ははは(乾いた笑い
  • 『栃木は全員皆殺し!』

    それはどうでも良いのですが、ドラ追いのヒロインってどう考えてもアステマですよね?最初から登場してるし全ての原因となったのも彼女(笑)ニケはパッと出の雰囲気なのに対してアステマ描写は非常に細やか。口ではエルフと言いながら実は悪魔っ娘を愛でる隠れキリシタン的なところ、ファンです。
  • >さつきまるさん

    そうですね、アステマがメインヒロインです。
    だって、バキッと脱いでいるでしょ?(笑)

    ドラ追いは当初2万文字程度で終わらせる予定の試作型でした。なので、ヒロインもアステマしか用意していませんでしたし、設定自体も薄いです。ニケも本来は別の役割があったんですけど、関川さんの煽りもあって、ヒロインに昇格しました。そのおかげで2回オチを廃棄しています。

    色々試してカク経験を得ようというコンセプトなので、これはこれでいいかなと……

    悪魔っ娘というか、毒ヒロインはボクのツボなので、これは大事にしていきたいですね。そんで書いて解ったのはエルフヒロインの破壊力。ざっくりと考えている新作案にエルフ特化型が2作あります(生産力的に書けないでしょうが<笑)

    あと『ない胸』は正義。色気よりかわいさがグッとくるね。くるね。
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