拙作「ロージナの風」を書くきっかけの元となった妄想は、セシル・スコット・フォレスターのホーンブロワーシリーズを読んだことに始まる。
老後の楽しみにと思っていたシリーズだが、どうも絶版の気配濃厚でついつい手を付けてしまった。
ノリと勢いでジュリアン・ストックウィンのトマス・キッドシリーズにものめり込み、帆船がお気に入りの妄想用ガジェットになった。
やがて子供の頃、J.メイスフィールドの「ニワトリ号一番のり」が大好きだった事を思い出し、吉祥寺のティークリッパーやカティサークの緑の瓶までが脳裏に浮かぶようになった。
帆船はちょっとしたマイブームとなり、ついには重い腰をあげて横浜へ足を向け、日本丸と会いに出かけるところまでいった。
妄想は物語にメタモルし、趣味の時間が充実をみて今日に至る。
残念なのは四方を海に囲まれた島国なのに、日本では海洋冒険小説がジャンルとして成立していない事。
司馬遼太郎の「菜の花の沖」は北前船を扱っていて、日本の代表的な帆船小説と言えなくも無いが中々他に思い付く作品がない。
そう言えばトマス・キッドシリーズは続巻の発刊が滞って久しい。
早川書房さん、どうかシリーズ継続をお願いします。