土曜のレイトショーで『ゴジラ -1.0』を観てきました。
最高でした。
個人的に、今年最高の邦画ではないかと思ったのでここに感想を。
ネタバレ全開で書きますので、まだ観ていない方はここまでで。
もう観たよ、またはネタバレOKの方のみ先へお進みください。
まず、庵野監督の『シン・ゴジラ(以下、『シン』)』から邦画のゴジラとしては7年振りです。
監督は『三丁目の夕日』などで有名な山崎監督。
『シン』を超えられるか?的な話が公開前から言われていましたが、はっきり言います、超えてます。
最初に、映画全体の作りから2作を比較しましょう。
両監督で共通しているのは、「自分の好きなものを詰め込んだ」という事。
細かく言えば違うんですけど、庵野監督の場合「これまでの自分の作品を含めた好きなもの、影響を受けたものを詰め込んだ」感じ。
対して山崎監督は「自分が影響を受けた作品を自分のやりたい形で詰め込んだ」って感じじゃないでしょうか。
そして、最も違う点は『シン』は厨二臭く、『-1.0』はベタベタ展開という点。
ベタベタ展開のくせに最高とか言ってんのかよと思われるかもしれないですけど、ベタベタの映画の方が分かりやすくて、鑑賞後のカタルシスもあってヒットするんだもん。
『シン』の厨二臭さは世界的にも一般受けしません。
実際、一部でカルト的な人気を博しますが、海外での興行成績はよくない。
その一番の理由は「人間ドラマがない」ところ。
簡単に言えば、映画の中で「登場人物間でのゴタゴタからそれの解決に伴うお涙頂戴(カタルシス)」がないってこと。
これがないと海外ではヒットしません、絶対に。
それが、『-1.0』にはちゃんと描かれている。
そして何より、山崎監督はそれを見せるのがホントに上手い。
しっかりと長所を活かして作られた映画です。
更に、海外でのヒットをしっかりと狙っている事が分かる箇所があります。
それは、徹底的管理されたゴア表現。
最近のアニメでも腕が飛んだり、欠損遺体が映るなんて日常茶飯事になりました。
そんな中で、『-1.0』は一切そのようなシーンを映さないようにしている。
もちろん流血シーンや人死にはあります、怪獣映画だもん。
しかし、映される遺体は全て五体満足だし、帰還兵の中に明らかな欠損のある人が皆無。
その上、人が死ぬ瞬間を映さないカメラワーク。
完璧に徹底されているから、どんな世代にも見せられる作りになっています。
小説で息をするように残酷表現をする私だから気付いたのかもしれませんが、本当に徹底的に管理されてる。
マジで感心しました、ヒットを狙っているのをヒシヒシと感じる。
この点は本当に高得点です、マジでどの世代にも見せれます、今すぐ観て!
駄目だ、くっそ長くなるぞwww
全体の作りで評価できる点はもう一つ。
それは、「中だるみが少ない」事。
これは監督のペース配分が上手いんだと思います。
上記した通り、展開はベッタベタです。
人間ドラマのパートは大体先が読めます。
それでも観客が飽きる事のないように気を付けているのが分かります。
心理描写を映像に任せる事なく、セリフですべて言ってしまいます。
そうする事で時間を節約しているのでしょう。
ただ、そのせいでくさい台詞のオンパレードですが、それに耐えられる画面作りをしている。
それはやはり山崎監督の得意分野という事でしょう。
そのおかげで、上映開始から最後のスタッフクレジットが始まるまで、メチャクチャ密度が濃い。
ホント、鑑賞後の満足感は高いです。
『-1.0』は山崎監督の「見たいゴジラの詰め合わせ」という感じです。
「影響を受けた作品を自分のやりたい形で詰め込んだ」と私が感じたのと共通するのですが、とにかく観てて楽しいゴジラばかり。
怪獣映画で絶対に観たいと思うのは「現代兵器 vs ゴジラ」ではないでしょうか?
『シン』でも一番もえるシーンは自衛隊 vs ゴジラのシーンでしょう。
『-1.0』の場合、重巡洋艦・高雄 vs ゴジラが割りと早い段階で観れます。
しかも海上戦です。
ゴジラ作品でここまでしっかりと海上戦を繰り広げるのは珍しい。
とにかく観ていて興奮する。
高雄の艦砲射撃を喰らうゴジラ。
こんなんが観たかった!
「行けぇ!高雄ぉ!」と叫びたくなるくらいにゾクゾクしました。
まぁ、負けるって分かってるんですけどね。
だって、時間的にも前哨戦だって分かるから。
それでもね、観てて楽しい、怪獣映画の醍醐味です。
結局、高雄は海中のゴジラが放った放射熱線で大爆散します。
もうね、このシーンの見せ方もいい。
海中が突然チェレンコフ放射の青い光で輝く、「高雄逃げて!」ってなる。
最高だよ、ホント(語彙力が消失してきた)。
まだまだ行くぞ!
何より、海上戦のシーンは映画『ジョーズ』のオマージュだとすぐに分かります。
海面に現れるゴジラの巨大な背びれ。
『ジョーズ』も怖いが、ゴジラの方がメチャクチャ怖い。
最終決戦も海上なんですが、やまり『ジョーズ』のオマージュがあります。
また、銀座に上陸したゴジラの行動。
中継するアナウンサーが「あぁ!日劇ビルが!」と実況するシーンで私は吹き出しました。
会場内で吹き出したのは恐らく私一人だったと思います。
何故かと言えば、初代ゴジラも銀座に上陸しています。
その際、初代ゴジラは『大人の事情』で日劇のビルを完全にスルーして、一切傷付けていません。
他の所は木っ端微塵にしてるんですけどね?
その日劇のビルを、『-1.0』は徹底的に壊します。
最高じゃないですか?
しかもそれをわざわざアナウンサーに実況させる。
もうね、山崎監督やりたい放題、最高だよ!
そして、初めて画面に映される放射熱線の発射シーン。
ここも凄い!
発射前のシークエンスとして、ゴジラの背びれが尻尾の先から順番に隆起して青く光っていきます。
しかも、隆起して光る速さが上に向かうにつれて早くなる。
そして、全てが隆起した瞬間、ソレらが勢いよく元の位置に戻り、放射熱線が出る。
これ、日本特有の文化である「溜め」の可視化じゃないですか?
「溜め」って海外では理解されにくいんですよ。
だけど、ドラゴンボールの「かめはめ波」なんかは海外でも理解されている。
「溜め」は可視化すれば海外の人も理解出来るんですよ。
それをあえてやってる。
これ、完璧に海外での興行も視野に入れた作りです。
そして、何よりこの発射までのシークエンス、よく考えられてる。
恐らく、プルトニウムを使った爆縮型の原子爆弾を参考にしてると思います。
説明すると長くなるので省きますが、ホントよく考えてる。
発射された放射熱線は恐らく国会議事堂近くを爆心地として大爆発をします。
この映画に私がツッコミを入れたくなる箇所が2箇所あるんですが、1個目はココ。
これ、核爆発ですよね?
核反応によって放射熱線が出るのは分かります。
ソレが着弾した後に核爆発が何故起きるのか……。
ただの大爆発だよって言われたらそれまでなのですが、後に起きる現象から考えて明らかに核爆発です。
まぁ、そこはご都合という事でいいのかもしれません。
とにかく、この爆発の描写も凄い。
まず、爆発で生じた衝撃波が銀座の街に襲いかかります。
何もかもが吹き飛ぶ、もちろん人も。
その衝撃波が通り過ぎた後に襲いかかる強烈な吹き戻し。
これは核爆発の熱によって、一瞬にして爆心地の空気が膨張して上空へ上がります。
それによって爆心地付近は真空状態となり、そこに周囲の空気が一気に集中する。
このような仕組みで起きた強烈な吹き戻しは衝撃波でも辛うじて立っていた建物も文字通り粉砕します。
しっかりと描写されているのが凄い。
そして、主人公の叫びと同時に降り出す黒い雨。
もうね、圧巻。
ココでキノコ雲を完全に見せることはせず、その一部だけをゴジラの背景に写し込む。
これも配慮された画角でしょう。
ゴジラが恐ろしく、しかしこの上なくカッコよく見える。
まさに見せ場、痺れました。
まだ続くからな!
ストーリーを追いながら書いたら終わりませんので、最終決戦の話へ。
主人公が乗るのは幻の戦闘機といわれる『局地戦闘機・震電』。
レシプロ機としては珍しいプッシャー型のいわゆるエンテ機です。
元々、超高高度を飛行するB-29を撃墜するために開発された戦闘機で、空気密度が薄い高高度でも飛べるようにプロペラは6枚になっています。
戦闘機好きの方はすぐに分かるでしょう。
ちなみに、この撮影に使われた震電、今は福岡の大刀洗平和記念館に展示されているようです。
みんな福岡に来てw
さて、もう少し震電の話を。
戦闘機にとって、機体バランスというのは非常に重要です。
皆さんがよく目にするレシプロ機は、トレーラー型といってエンジンが前側でしょう。
そうすると機体の前方に重心が来る。
そこに機銃などの装備をつけると、余計に機体前方が重くなります。
対して、エンテ機はエンジンが機体後方にあるため、機首側にトレーラー型よりも重い、強力な機銃を載せるが出来ます。
なので、最終的にゴジラの上顎を完全に吹き飛ばすことが出来るだけの量の爆弾を積むことが出来たわけです。
機雷1個で顔の4分の1くらいしかダメージなかったんだから、単純に機雷4個分は載せないとね。
そして、ワダツミ作戦の第二フェーズ。
深海に沈めたゴジラを、今で言うエアバックで海面まで上昇させ、急激な減圧でダメージを与えるシーン。
個人的に、浮袋を腰に巻かれたゴジラが可愛いwww
うわーん!みたいなゴジラが愛らしくてホント好きwww
最後、震電での特攻も分かっていたけど、もう見せ方が上手い!
放射熱線の「溜め」を始めるゴジラ。
発射される!と思った瞬間の無音。
そこからフェードインしてくる震電のエンジン音。
もうゾクゾクが止まりません。
予想できる展開なのに、ここまでゾクゾクさせられるのは本当に凄い!
沈んでゆくゴジラを元軍人達が敬礼で送る。
私がツッコミ入れたくなった2箇所目はココ。
海上戦ですよ?みんな元帝国海軍ですよ?
なんで全員が全員陸軍式の敬礼なの!?
陸軍と海軍では敬礼の仕方が違います。
陸軍は肘を張るのに対して、海軍は脇を締めます。
つまり、一人がとる横幅が海軍のほうが狭いんです。
それなのに、全員が肘張ってるからおいおいと……。
まぁ、分かりやすいからいいんだろうし、ここにツッコむのってミリオタくらいでしょうから、普通の人はスルーで。
そんでもって、ラスト。
亡くなったと思われたヒロインの生存。
ここでも五体満足。
とは言っても、これは作中のゴア表現に関係なく五体満足だった筈。
なぜなら、ヒロインはゴジラ因子を持ってしまったという描写がされているからです。
これ、めっちゃいい!俺は好き!
アレを見せることで、実際は銀座で肉片になったかもしれないが、そこから再生したのかもしれないという憶測が出来る。
その上、この先彼女は不死身。
それをネタに続編を作ることも可能になってる。
「続き、作っていいよ」という山崎監督の粋な計らいに思えます。
もちろん、海底に沈みゆくゴジラの死体もまた脈動している。
これも続編を作れるようにしているんです。
いや、最高かよwww
この部分は『シン』からのオマージュかなとも思ってたり。
長くなりましたね、申し訳ない。
こんなに長くなるとは自分でも思ってなかったwww
けど、それだけ面白かった!
マジでどの世代でも楽しめる映画になってると思います!
銀座で暴れるシーンはジュラシックパークの恐竜映画のようなシーンも多く、怪獣ものという大枠の中にしっかりとホラー的な要素も散りばめられており、満足度は本当に高いです!
まだ観てない人にはぜひ観て欲しい!
ツッコミどころが2箇所ありましたが、それは無視してもいいレベルなのでホント、今すぐ観て!
てな感じで、べた褒めの感想でした。