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 危機のときはたいていそうであるように、「アンドロメダ病原体」をめぐる出来事は先見の明と愚かさ、無心と無知がまじり合って起きた。それに巻き込まれた者のほとんどが、このうえなく輝かしい時を経験し、同時に途方もなく愚かしい時をも経験した。従って、この出来事について何か書けば、かならず関係者の誰かを傷つけることになる。
 それにもかかわらず、この話は語られなければならないと思う。わが国は人類史上最大の科学機関を維持している。絶えず新しい発見がなされ、それらの発見の多くが重要な政治的・社会的含みをもつ。近い将来、われわれは「アンドロメダ」と同種のもっと大きな危機に見舞われるかもしれない。このようなわけで、科学的危機が生じる過程とそれへの対応を一般の人びとに知ってもらうことは無駄ではないと信じる。
――マイケル・クライトン『アンドロメダ病原体』

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