めぐりあい
小径のほとりで あのひとにめぐりあう
あのひとの夢は水を濁さず
ばらの花は開かなかった
驚きがわたしの魂を裂いた
かわいそうな女の顔は
涙に濡れた
さりげない口もとに
軽やかな歌があった
わたしをながめその歌は
重苦しい歌に変った
小径をながめる 見なれぬ
うつろな小径があった
陽の光まばゆく この顔は
涙に濡れた
歌い続け歩き続け
わたしの視線を運んでゆく
うしろに寄りそう花サルビアは
もはやのびやかでなく蒼くなかった
かまわない わたしの魂は
風にふるえた
誰に傷ついたのでもなく この顔は
涙に濡れた
今宵のわたしのランプのしたに
あのひとはいなかった
あのひとは知らない 甘松香(モスク)の花の匂い
あの胸に わたしの悶えは突きささらない
えにしだの香はたぶんあのひとの
夢に浸みていくかもしれない
あわれな女のこの眼は
涙に濡れた
ひとりぼっちは恐くなかった
飢えて渇いて 泣かなかった
あのひとの行くのを見てから 心のなかの
神さまが わたしを傷に包んでしまった
寝間のうち わたしのために
安んじて祈る母の祈り
いつまでも たぶんこの顔は
涙に濡れる
ガブリエラ・ミストラル