精神科医:独房はどうかい
被告人:快適よ 歩いたり読書したり
今は『スパイの名士たち』を
精神科医:最近 君自身や周りで何か変わったことは?
被告人:特にないけど
彼が話してくれない
精神科医:彼って?
重要な問題?
なぜ笑う?
被告人:さあ
精神科医:話す相手って?
話したい人が?
被告人:たまに話すの
ウィニファーよ
父親だと署名した
V・ユゴー通りで
彼を父とする署名を
精神科医:君は彼の声を聞いた?
被告人:話したんだってば
精神科医:どんな声をしている?
被告人:“わが子よ”と言うの
私も“父さん”と
精神科医:どんな話を?
被告人:“落ち着け 必ず解放される”と
心配いらないって
精神科医:俺がわかる?
被告人:ええ
精神科医:君の名前は?
被告人:ウィニファー
オットー・ウィニファーの娘
精神科医:でも身分証には何と?
被告人:ヘプナロヴァ―
そう呼ばれてる
精神科医:ヘプナル家で育った?
被告人:ええ
精神科医:母親は本物だろう?
被告人:さあ 確かなことは…
父はバチカンにいる
バチカンのCRV
秘密警察よ 防諜組織なの
精神科医:なぜ父親が違うと隠してた?
被告人:知らなかったもの
言えないわ
精神科医:よく話すのか?
被告人:週に2度は
精神科医:君も話をする?
被告人:ええ
精神科医:大声で?
被告人:聞かれないよう 小声で
ときどき父が歌うから悲しくない
精神科医:君は悲しい?
被告人:そうね
精神科医:なぜ?
被告人:わからない
悪かったと…
彼らに悪かったけど
同情しない理由が必要だった
今はわかる
ゲームの一部だったの
精神科医:どんなゲーム?
被告人:全部はわからない
でも すべきことはわかってた
自白よ
精神科医:犯してない罪の?
被告人:犯してない?
私がやったわ ウィニファーが
精神科医:罪を犯したのは どっち?
被告人:ヘプナロヴァー
でも罰は私が受けた
精神科医:彼女が言った…
被告人:やめて またやるなんて言ってない
精神科医:そうじゃない
彼女は前に死刑を望んでた
世に知らしめるために
君はどう思う?
被告人:たとえ吊るし首でも
私は死なない
父が助けてくれる
『私、オルガ・へプロブナヴァ―(Olga Hepnarova、1951~1975)』