自分が考えている長編ミステリーで出てきた問題を備忘録的に提起するというのがこのノートの趣旨なのですが、今回は前のノートで放り投げていた密室の意義について。
見てみるとかなりきれいに密室の存在意義が叩き潰されてしまっています。ミステリーだから小説だからといって「そういうもの」として片づけてしまってもいいのですが、やはり犯罪者の心情を考えるうえでそもそも密室という選択肢にどの程度の人が至るかという話なんですよね(また否定する)
確かに誰にもできなかったという状況だけで伝わるのは魅力的なモチーフであることは認めます。それはモチーフにはいいものもあると思います。個人的には外界から隔絶された洋館ってのはありだと思うんですよね。自分が容疑者に組み込まれてしまうのが難点ですが、不特定多数から浮かび上がる被害者と接点のある自分よりは接点だらけのなかでの自分だったら後者でもいいと思うのです。
——わかりにくいので補足すると、例えば街で通り魔があったときに偶然近くの監視カメラに写っていた接点のある唯一の人物だったら、かなりその人物は怪しいですよね。
こういう理由から必ずしも犯人目線で考えればゆえなきものばかりでもないと思うのです。
密室に話を戻します。現実における「密室=不可能状況」とするのならば、それは事後的に観測されるものが多いと思うんですよね。犯人が意図して作ったケースはほぼないといってもいいでしょう。
当たり前のことですが、他殺体がある時点で誰か殺していることは確実なので、現実的に誰にもできなかったから他殺体があるけど無罪なんてのはありえないからですね。(これを打っていて他殺体を運んでくるというのはどうかなとも思いましたが、結局は他殺体ですから無意味だと思われます。限りなく他殺体に見える自然死による死体などがあれば別ですが)
結局、私は密室は不可能状況という前提自体がおかしいと思いました。しいて言うのならば、容疑の均分にしかなりません。でも、前回も話した通り、それでは施錠されていない部屋でも開けっ放しの部屋でもいいわけです。
では密室の意味とはなんでしょうか。密室により分けられた空間―—不可視性の方が説得力があるように思いましたが、時間を遅らせるなどでしょうか。個人的には合理的に解決できるのはその程度しか思いつきませんでした。それか被害者が習慣的に昼まで寝るような人であれば、犯行時間の推定が難しくなるかもしれないです。
状況というより密室によって分けられた時間について考えた方が有意だというのが現時点での結論です。
追記 返信はあまりしませんが、ありがたく読ませていただいております。