前回の更新が実に半年前ですね。
いろいろ迷走しているうちにこんな時期になっています。別の活動に勤しんでいるうちにミステリーから離れていましたが、シャワーを浴びていたらピンと思いつくことがあったので(そんな暇はないですが)書いています。
さて、探偵術と推理術と題しましたがこれはひとえにミステリーにおける論理演繹上の牽強付会を物語のモチーフとして取り込んでしまうという個人的な試みです。
例えば、犯人は基本的に見られることを避けるという前提に立つならば、その計画は秘密裏に進められるべきですが、その場合は堂々と犯罪を犯したという可能性が無意識のうちに捨象されてしまいます。
物語のなかでは基本的にオチが見えるものです。つまり、いかにして説得力を与えることが鍵になるわけですが、心理というのは証拠として扱うには非常に不安定なものだといえます。それゆえに「普通の人は○○しないのだから」という論で進めると、それは必ずしも説得力を備えたものとはいえなくなります。
サスペンスで言えば、犯人がラスト10分の自白の過程で「あいつを恨んでいた」といえばそれは有力な動機ですが、推理過程の証拠としては常に「恨んでいたけれども、それを利用した誰かが濡れ衣を着せようとしているのでは?」という可能性が生じます。ミステリーの多くで後出しじゃんけん型で背後関係が明らかになるのはそういうことなのです。以上のことから、不安定な証拠一つで推論がすべて覆る可能性を考えると心理や動機を用いた推論は確実性を欠くものといえるでしょう。
では、探偵術とはどういうことかという話になります。
一言で言えばこれは犯人を捕まえるのが目的であるならば、手段は問わないという話です。
キャラクター論的観点から述べるのならば、推理をフェアに進めがちな探偵というのが急に不安定な変数としての心理を仮説に盛り込めば説得力を減ずるが、アンフェアに攻めるキャラであればさほど気にはならないという話でもあります。
つまり、犯人を捕まえるのが目的ならもはやハッタリとして用いた方が説得力を与えられるのではという考えです。例えば、まったく知らない初対面の人間に「久しぶりだね」と声をかければ、心理上では知らない人よりも前にあった記憶を探す可能性が高いでしょう。偽証というのはフェアという観点に立てば敬遠されがちなものですが、目的が目的であれば峻別さえできるのならば有力な武器になり得るといえます。
無論、偽証で得た証拠は法律学的にも無効と扱われる根本的な問題はあります。ただ、話術で相手を騙し、そのうえで有力な傍証や秘密の暴露が引き出せるのであれば、課題はありますが面白い設定だとは思いました。
個人的には長編というよりは短編やオムニバス向きですね。
これは個人的な話ですが、文章が前より柔らかくなっていて驚きました。海外作品を読まなくなったせいですね(読め)
機会があったらまた何か更新すると思います。