十二月。師走を迎え、学生の方も社会人の方も、慌ただしい日々が続くと思われます。自分も例年を上回る忙しさが牙をちらつかせている……
さて、今回は第三回カクヨムWeb小説コンテスト、異世界ファンタジー部門に投稿している小説、『フーヤマ・シッカ』の前書きを書こうと思います。まぁ、誕生秘話と応募に至るまでの経緯、ひいては作者の心構えと捉えていただければ、幸いです。
『フーヤマ・シッカ』は、異世界に突然投げ出された主人公が、辛い事や楽しい事を様々経験し、成長していく本格ファンタジー小説です。
この小説は自分が2017年の夏に、初めてWeb小説という物を読んだのが事の発端。最初に受けた印象は、なぜこんなにも似通ったテーマを扱う小説があるのか。次に思ったのは、なぜ話に谷が少なく、常に右肩上がりの物が多いのか。
一言で片付けてしまうと、自分には合わなかった。ここで一旦、Web小説から離れます。しかし時間を置いて、読んだ内容を咀嚼し、ある事に気付くのです。
テーマ自体は、王道ファンタジーものに通ずるものがある。使っている言葉が違うだけなのだ。
例えば異世界トリップ。ナルニア王国を始め、ハリーポッターの通うホグワーツも現実世界と隣り合わせの異世界。そこに意図せずに迷い込むという事も、犬夜叉などで使われている。
元の素材は、自分も楽しく読む本格ファンタジーと同じである。ではなぜ、面白いと感じられないのか。
答えは調理法。
少し調べてみればWeb小説はライトノベルのような書き方を好むのだとか。常に何かが起こっているような展開の連発に、風変わりなキャラクター達。伏線は極力張らず、楽しい内容をすらすら読める様な、そんな書き方。
ここでまたしても、納得する自分。ライトノベルはあまり好まないのだ。
そして不意に思う。自分が好きな調理法では、同じ素材はどのような小説になるのか。
書き始めたのが、『フーヤマ・シッカ』。最後の落ちを考え、筆を執り始める。当初は、ファンタジー小説の公募にでも、原稿を送りつけようと思っていた。しかし書き始めて一週間、ページ数の危機が戸を叩く。
とてもではないが、規定の原稿枚数に収まらない。考えていた話を二部作に分けるなど検討するものの、すわりが悪い上にそれでも決められたページ数を超えてしまうと断念。ネタとして寝かせるかと考えている最中、Web小説について調べていた時にどこかで読んだ一節を思い出す。
Web小説は、超大作に向いている。
考えてみればそうだ。紙という媒体が無い分、どんなに長い小説も同じ重さを手に読める。長い執筆期間と並行して読者に提供できるという利点もある。
しかし『フーヤマ・シッカ』はWeb小説として根本的な欠点がある。テーマこそはWeb小説に良く見られるものを基盤にしているが、一切のWeb小説らしさを抜いた作品なのだ。つまりは、Web小説の読者を想定して書かれていない。恐らくは、読まれない。
再び悩む。ライトノベル風に書く自信は無い。だからと言って、挑戦する前からWeb小説は自分には合わないと決めつけるのはいかがなものか。取り敢えずは、試してみるべきか。
揺れながらWeb小説の投稿サイトを巡っていて、見つけたのが第三回カクヨムWeb小説コンテストの告知。結果としては、これに背中を押される形でWeb小説というものを始めた次第です。
なので入賞を狙い、熱い志しを胸に執筆活動している数多くの作家がいる中、自分の目的はWeb小説を続ける事が自分にとって有意義であるかを模索するものなのです。
腑抜けた理由と一蹴されれば、そこまでですが、ものは試しよう。一話ほど読んでみては、いかがでしょうか? 運が良ければ、あなたも自分と同じ調理法を好む仲間かもしれません。