• 異世界ファンタジー

07-26M ヘロン 11月9日0500

ヘロン高原11月9日午前五時前
帝国軍の塹壕線とケイマン軍の状況を示す。

図では塹壕線を主に表示するため、帝国軍は表示していない。



キョウスケの指導により構築された塹壕線は基本的には五線である。
第一線は当時のカナンで一般的であった陣地線、空堀と土塁、木の柵からなる。

基本的に直線で、一定距離ごとに簡易的な櫓があり、横矢をかけられるようになっている。
土塁と柵を合わせると高さは三メートル程になる。
実を言えば、この第一線は目隠しであり、第二線以降を見え辛くするのが主目的で作られている。
第二線から第五線までは、キョウスケの言うところでの『第一次大戦風』の塹壕線である。

キョウスケがカゲシン自護院での実習、またラト族第三騎兵旅団との戦いで経験した戦いでは、陣地線は基本一線で、直線である。
カナンの野戦は、ファイアーボールなどに対抗するため、兵隊間の間隔が広い、散兵に近い隊形である。
だが、対陣地線では、戦列を構成し、大盾、あるいは竹束などを並べて突進するのが基本となる。

今回、キョウスケが主導した陣地線は、意図的に折れ線で構成されている。
これは、射撃戦に特化したもので、突撃してくる敵に効率的に側面射撃を行うことを意図したものである。
基本的に白兵戦は行わず、敵が陣地に取り着いたら後退する。
図では、第二線から第五線まで、単線で描かれているが、これは主要な塹壕線だけを示している。
実際には各線も複数の塹壕からなる。
また、各塹壕線の間には前後を繋ぐ交通壕も掘られており、これは場合によっては、縦方向の塹壕線として機能する。
これにより、塹壕線の一部が突破されたとしても全線が後退する必要がなくなっている。

また、個々の塹壕線は、土塁は無いか、あっても高さが低く、射撃の邪魔にならないようになっている。
兵士は、塹壕に籠って、クロスボウを発射するだけである。

ヘロン高原は北から南にかけて徐々に標高が高くなっている。
このため、帝国軍は常に、高所から見下ろす形での射撃が可能となっている。

塹壕線の第五線は、高原の最高部、尾根に沿って構築されており、特に念入りに構築されている。

ヘロン高原では、中央の街道に沿った一帯が、最もなだらかで、整地も行き届いている。
尾根の部分の標高も、左右に比べるとかなり低い。
地形的には最も突撃しやすい場所である。
11月8日のケイマン第六歩兵師団の突撃が最初に行われたのもこの場所である。
11月9日の戦闘でも、両軍共に、ケイマン軍主力の突撃はここで行われると想定している。

キョウスケが特別に構築した第六線は、第五線の後ろ、中央部にのみ存在している。



ケイマン軍の後退と再編成

ケイマン軍第三軍団は11月8日の戦いで予定外の損害を出し、再編を必要としていた。
ケイマン軍は、高地北東部のメハン川に作られた貯水池と、北西部のヘロン川より水を調達していた。
11月8日の戦いでメハン川貯水池が破壊されたため、大量の水を必要とする負傷者は、高地北西部に運ぶしかなかった。
この場所には以前からケイマン軍に追随している商隊が仮設の村を作っており、それを利用できたためでもある。

特に第六歩兵師団の損害が酷く、連隊長以下、多数の指揮官を失ったため、それの補充が必要だった。
補充の指揮官は第三軍団内だけでは、適格者が足りず、第一、第二軍団からも急遽転籍している。

ケイマン第一軍団、第二軍団も第三軍団と並ぶ形で後退している。
第一軍団は作り上げた攻城兵器を運搬していたが、そのままで速戦が困難なため、攻城兵器を仮設村に保管するために移動した面もある。

11月8日に帝国軍メハン川東岸陣地を蹂躙した騎兵旅団は元の位置に戻っている。

第四軍団では、第201歩兵師団はメハン川東岸で陣地を構築して包囲網を形成している。

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