07-11M 第11軍 戦闘序列
帝国第11軍、帝国歴1079年11月1日のミッドストン出陣時の戦闘序列を示す。
NATOマークの歩兵、騎兵が使用されている。
それぞれ、色分けされているが、これは戦況図で見分けやすくするためである。
魔導部隊は『M』マーク、あるいは、指揮官の頭文字が記されている。
(KJ、クテン・ジャニベグなど)
図に示されているのは、純粋な戦闘部隊のみであり、輜重を司る商人部隊などはまた、別にいる。
医療部隊、軍事官僚、なども別にいるが図では省略されている。
専任の工兵部隊は存在しない。
旅団、連隊、大隊は帝国軍の規定に従い編成されている。
一般に一個大隊1000人で計算されることが多いが、第11軍は急造故に大隊直属部隊が少なく、実数は900人程度、大隊によってはそれ以下である。
図では多くが省略されているが、連隊本部、旅団司令部に中隊~大隊規模の直属部隊があり、連隊、旅団では兵員が多くなる。
三個大隊編成の一個連隊は通常3000人を超え、二個連隊計六個大隊からなる一個旅団は7000人を超えるのが普通である。
だが、第11軍では6000人を超える程度の旅団が多い。
帝国軍の規定では、二個歩兵旅団に魔導連隊や騎兵大隊を加えて一個歩兵師団が編成され、二個歩兵師団に、一個騎兵旅団その他が加わって一個軍団となる。
軍は二個軍団以上で編成されることとなっているが、直近百年では、規定通りの軍が編成された事例は無い。
第11軍は師団編成、軍団編成を欠き、六個旅団を主体として軍を編成している。
師団編成まで欠いているのは珍しく、作戦上の統一性と柔軟性に乏しい急造編成の軍である。
第11軍は、第一軍、第二軍の残余と、カゲサト、クリアワイン、ミッドストン地区から臨時徴兵で編成されている。
予備役どころか、一度も軍に所属したことがない兵員も多い。
上記のように第11軍の戦闘能力は同程度の軍よりも大きく劣ると見做されている。
第11軍 兵力概数
クロスハウゼン旅団 9.700
騎兵連隊 4.000
レトコウ連隊 2.000
トエナ大隊 1.000
モーラン旅団 5.300
ミッドストン旅団 6.300
タルフォート旅団 6.200
クリアワイン旅団 6.300
カゲサト旅団 6.500
総計 47.300
クロスハウゼン旅団は、シャールフ特別大隊、二千人弱に8千人ほどの徴兵から編成された。
新規歩兵の大半がクロスボウ部隊とされ、歩兵連隊は兵員の八割がクロスボウ兵という偏った編成である。
帝国の通常編成ではクロスボウなどの遠距離攻撃部隊が四割を超えることは無い。
シャールフ大隊に所属していた長弓兵中隊は、そのままバフラヴィー司令部直属部隊となっている。
カンナギ・キョウスケ率いる魔導連隊も、シャールフ特別大隊の魔導中隊二個を基幹としており、新規魔導士の大半が『従魔導士』である。
元の正魔導士の半分は各魔導大隊の指揮官として配置され、残り半分は魔導連隊司令部直属中隊としてカンナギ・キョウスケの指揮下にある。
三個魔導大隊は、それぞれ十八門の魔導砲が配備されている。
四個の中隊にそれぞれ五〇ミリ四二口径四門、大隊本部に五〇ミリ六〇口径二門である。
魔導砲は移動用に車輪が付けられ、外見はナポレオン戦争時の大砲に似ている。
地球人カンナギ・キョウスケの技術、知識、そして魔法で製作された後装砲で、砲身には簡易ながらライフルが切られている。
魔導士のファイアーボールを火薬代わりとして運用され、発射頻度は一分間に二発程度。
これは、主として魔導士のファイアーボールの呪文詠唱の時間である。
キョウスケが個人的に運用した場合は、一分間に四発以上撃てる。
騎兵連隊は四個大隊編成だが連隊本部を欠き、第一騎兵大隊長が連隊長を兼任する。
諸侯やモーラン軍閥の騎兵を集めて急遽編成された部隊であり、連隊規模での運用は不可能と見做されている。
バフラヴィーは、分散させて偵察、警戒に使用する構想だが、多くの騎兵指揮官は騎兵突撃主体の訓練しか受けておらず、第11軍司令部からは不安視されている。
レトコウ連隊とトエナ大隊は出陣直前に合流したため、そのまま軍司令部直属として運用されることとなった。
どちらも、諸侯の正規軍であり、質の高い歩兵としてあてにされている。
また、レトコウ連隊の第二大隊は魔導大隊であり、唯一の正規魔導大隊として期待されている。
モーラン旅団は、カゲシンのマリセア宗家に個人的に雇われていた牙族傭兵部隊を源流とする部隊である。
部隊長を世襲するモーラン家は、元はスラウフ族の一員に過ぎなかったが、現在はスラウフ族長家の傍系として扱われている。
直前までは、四個大隊編成の大型連隊であったが、今回のケイマン族侵入により、拡充が前倒しされ、旅団編成となった。
急な拡充であったこと、投射魔法の適応があった者を魔導部隊に派出したこと、周辺諸侯からの補充兵を受け入れなかったこと、などにより第二連隊は二個大隊編成となっている。
ちなみに、上級士官はスラウフ族系の牙族だが、下級士官以下の兵員は各種牙族に加えて人族も含まれる多国籍部隊である。
諸侯の臨時徴兵を受け入れなかったのは、部隊の質が低下するのを嫌ったため。
このため第11軍所属の旅団では、最もクロスボウ部隊の比率が低い。
第十一軍の突撃部隊として期待されている。
ミッドストン旅団
タルフォート旅団
クリアワイン旅団
それぞれの伯爵が率いていた直属の兵団に臨時徴兵部隊を加えて編成された。
元の伯爵軍は、連隊規模3000~4000程度の兵力であり、徴兵を加えて6000強の旅団となっている。
各伯爵軍は基幹となった伯爵軍と徴兵を混合し、可能な限り各大隊が均質になるよう編成されている。
クロスハウゼン旅団の歩兵連隊ほどではないが、クロスボウ兵は六~七割を占める。
三人の伯爵中ではタルフォート伯爵だけが、カゲシン自護院で軍隊指揮官としての教育を受けている。
タルフォート伯爵はカゲシン宗家の出身でタルフォート伯爵に養子に入った人物。
公子時代に軍事系にいたため軍の知識は豊富である。
13年前の対ケイマン族戦役にも伯爵軍指揮官として従軍している。
第11軍の副司令官に任命されている。
ミッドストン伯爵、クリアワイン伯爵は正規軍人としての教育を受けていない。
二人とも基本的には宗教貴族系である。
クリアワイン伯爵は13年前の戦役に従軍しているが、戦場には出ていない。
ミッドストン伯爵は今回が初陣である。
カゲサト旅団
カゲシンの衛星都市であるカゲサトの守備隊と、カゲサト周辺に駐屯していたベーグム師団の留守旅団から、兵員を選抜して編成された臨時部隊。
臨時徴兵は受け入れていないが、宗教貴族子弟が多く、兵員の質は、むしろ悪い。
指揮官はベーグム留守旅団長、クトゥルグ・レザーハミド。
59歳と、カナンではかなりの高齢になる。
引退していたのを呼び戻された老兵だが、軍人としては優秀で13年前の戦役にも従軍している。
一応は正規部隊であり、編成も正規の物である。
つまり、槍兵、盾兵、弓兵がバランス良く配備され、歩兵部隊だが魔導士もそれなりの数が所属している。
しかし、行軍訓練もろくに行っていない部隊であり、ヘロンに着くまでに消えてなくなるのではないかと危惧されている。