北欧神話の担い手であるヴァイキングが活躍したのは10世紀ごろの数百年で、とっくに鉄器時代になっている。実際の北欧青銅器時代はそれを千年以上遡ったころだ。
青銅器時代の船は、巨木をくりぬいた丸木舟の上に構造物を足した準構造船か、板材を貼り付けただけの初期構造船(箱舟)かである。あとはアザラシ革を使ったフェルトカヤックがあった程度だ。
鉄器時代となって千年以上が経過した9世紀ごろ、船における背骨というべき竜骨がロングシップに導入されると、船体の強度が飛躍的に向上し、速度や小回りも改善される。速度8ノット(15 km/h)以上、1日に223海里(410 km)も航海でき、欧州全域・北アフリカ、北米まで席巻した。
――お話なので、千年以上かかったイノベーションを、英雄シグルズ一代で無理やり成し遂げてしまっている。――博識の皆様に突っ込まれる前に吐露しておこう。
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イラスト:アマミ