短編『ウルダールの猫』は、創元推理文庫『ラヴクラフト全集6』に収録されている。――猫を虐待していた老夫婦が、謎めいた隊商がやってきたことをきっかけに、意を決した猫に逆襲され、食べられてしまう。――この隊商の中には、長編『未知なるカダスを夢に求めて』の主人公カーターとおぼしき少年が加わっている。
前者の短編のほうでは砂漠の町であったのだが、長編のほうでは深い森が途切れた平原のただ中にある田園地帯のなかにある都市として描かれている。ゆえに本作は穀倉地帯の集散地として、町を描いてみた。
短編はウルダールが、猫を大切にする人間の町になった経緯が描かれているのだが長編で猫は、月の怪物ムーンビーストから幻夢境を守る戦士として描かれている一方で、町ではペットとして振る舞っている。――萩原朔太郎の短編『猫町』や村上春樹の長編『1Q84』に登場する猫の町は、小規模な幽世《かくりよ》である。対して『未知なるカダス』の幻夢境も幽世ではあるが、地球規模の広大なエリアを有している。
本作において猫は猫神《バステト》族という亜人扱いとし、ウルダールは彼らの都市国家という扱いにした。
ウルダールの町:挿絵