Ⅰ
内東校長がアメリカ留学の帰路に出会った自称ウラジミール・スヴァレフ伯爵ことアレイスター・クローリー(1875‐1947年)という人物は実在している。
江口之隆・亀井勝行『世界魔法大全1:黄金の夜明け』(国書刊行会1983年 70‐97頁)によると、この人は、英国中産階級層からなるカルト秘密結社「黄金の夜明け団」の幹部だった。なおかつケンブリッチ大学を卒業した知識人であり、登山家、チェスの名人、詩人といった側面がある。そして何よりもビール醸造会社を相続した資産家だった。
『黄金の夜明け団』のメンバーは彼を含めて皆、我儘で、彼が参加するとほどなく
分裂してしまうのだが、クウローリーは暇と財力をもとに、そこで得た魔法のノウハウを書籍に残し、近代魔術に多大な影響を与えることになる。
また、クロウリー著:島弘之・植松靖夫・江口之隆訳『世界魔法大全2b:魔法理論と実践』(国書刊行会1983年 287‐300頁)の江口による解説によると、この人は1983(明治34)年、ホノルル発コロンボ行きの西回り航路定期便線に乗り、48時間の石炭補給中に、神奈川県横浜港から江ノ島を散策し、後に『バンザイ』という詩を書いたのだそうだ。
この世界魔法大全シリーズには、秘密結社『黄金の夜明け団』の系譜にいる女性魔法使い・ダイアン・フォーチュンの、『世界魔法大全4:心霊的自己防衛』が収められている。そちらが入手できなかったので、シリーズから外して単体で復刻した大島有子訳『心霊的自己防衛』(国書刊行会1983年 第五章・吸血行為 56‐89頁)があり、吸血鬼の正体について――私個人の解釈なのだけれども――吸血症系サイコパス、精神DV系サイコパス、そして主を失った人工精霊について述べられている。
Ⅱ
では本題、「管狐」に関してだ。
手元にある、柳田邦夫『遠野物語』(1910年)のほかにあるのは、荒俣 宏『陰陽師 ―安倍晴明の末裔たち』 (集英社 2002年)くらいのもので、あとはwikiほかネットによるものだ。管狐の別名の一つに稲綱と呼ぶのは、のちに稲荷に習合されることになる、インド紀元の女神・稲綱が、稲荷よろしく眷属の狐の背に乗っている設定に由来している。
本文でもふれたが、管狐は狐というよりもイタチにちかい大きさ・形をしているという記述を目にしたことがある。オコジョサイズなのだろう。
イタチは猫と祖先を共通にしているので、ダイアン・フォーチュンがいう人工精霊とは、管狐で、その姿・大きさはオコジョのようなものなのだろう。
なお『世界魔法大全』翻訳者に名を連ねる江口之隆が著した『西洋魔物図鑑』(翔泳社1996年 222‐223頁)において、ダイアン・フォーチュンの説をとりつつ独自解釈を加え、「吸血鬼は3種類に分類される」とし、A.心霊的吸血鬼、B.元素霊吸血鬼、C.不死系吸血鬼と述べている。A.心霊的吸血鬼はやはりDV系サイコパス人間、B.元素霊吸血鬼は野良化した猫とも「管狐」ともいえる使い魔、そしてC.不死系吸血鬼については、中国仙道系の秘術「房中術」の術者のことではないかと言及している。
ノート20250310
挿図/「管狐」
