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【感想のお部屋】 『その「ん」は、終わりじゃなく始まりの言葉』  後編  〜句点は存在しない、読点だけの物語〜




※※ はじめに ※※ (【感想のお部屋】定期)

この小部屋を見つけてくださって、ありがとうございます。

こちらは、“kou様”の作品を、 わたし “金時まめ”として、感想を語るお部屋です。
作品をまだ読まれていない方は、ぜひ本編を味わってからお越しいただけたら嬉しいです。
(感想なので、ネタバレを含みます)

『その「ん」は、終わりじゃなく始まりの言葉』
https://kakuyomu.jp/works/822139839133270401

※※ 以下、ネタバレを含みます ※※










⚫︎ 4日間を熱く駆け抜けた、16,435文字  🏃🏻≡ 🏃‍♀️³₃≡≡≡

2025年。
11月 9日 第1話 「しりとり」勝負開始!
11月10日 第2話 噛み合わない言葉の応酬
11月11日 第3話 同じ目線での会話
上記までは、【感想のお部屋】前編 にて、語らせていただいております。


この後編では
11月12日 第4話(終) 新しい「しりとり」
こちらの感想を綴っています。


⚫︎ 新しい「しりとり」
毎日連載の最終話。
おはなしの内容もしりとり勝負の最終日で、そんなリンクに嬉しくなります。
淡々と勝負をこなしている感の健斗さんでしたが、
詩織さんの、今までに見たことのないメールに動きを止めました。
保育園から一緒なのに、本当に相当な犬猿具合だったんですね。
そして、前話のクリームソーダも溶けた氷と一緒に、
詩織さんの中で、“何か”が緩やかに溶けていったからこそのメールでの顔文字使用。
むふふ(*´艸`*)

  健斗は眉をひそめたが、同時に口元がわずかに緩むのを自覚した。(第4話より)

“口元が” “わずかに” “緩んだ” うふふ (*´∇`*)✨ 💃🕺


それにしてもですね。
しりとりの言葉の数々が、それは美しいです。

・宵闇 … 夕焼けの朱が夜に飲み込まれる。まさに、ブルーブラックの空。
・密度汎関数法 … 複数の電子の…。ふ、ふーん。そうなんだ。
・泡沫 … “うたかた”読みの方が美しいですよねぇ。この言葉と同タイトルの映画があって、いつか観たいと思っています。
・多体問題 … 互いの相互作用を…。ふ、ふーん。……そうなんだ。(2回目)

作者様。解説も載せていただいてありがとうございます。
多体問題とは。つまりこういうことですか?

 美味しそうないちごショートケーキが目の前にある。🍰
 いちご🍓を最後にいただきたいと仮定しよう。
 その場合、
 ・ケーキの生地の部分から食べるのか
 ・いちごを固定してある生クリームから食べるのか
 しかし、そうするといちごの重みでケーキはバランスを崩す。
 「先にいちごをよけておけばいいではないか」という無粋な紳士には、
 いますぐ踵を返してこの場からご退場いただきたい。
 いちごとは、ショートケーキにとって、クラウンであり王なのだ。
 最後の美しい終焉を迎えるまで、

 “王”の尊厳だけは、それだけは、最後の一瞬まで守り抜かねばならない。

 バランスを崩さずに、美しくいただきながら、いかに綺麗に王(いちご)だけを残しつつ、
 いちごショートケーキなるものとの、濃密な時間をいかに過ごすべきか…。

つまりは、そういうことですよね? これは、難問だ。(絶対違いますね🤭)


しりとり勝負の約束の七日間が終わりに近づいた頃。

詩織さんが放ったのは『雪解け』

そのワードへの、健斗さんからのしりとりの続きが、
ま、まさかの!!



…この二文字を目にした時。手で目を覆って、しばらく動けませんでした。


文字で読む物語の醍醐味を改めて感じました。

自分のタイミングでこの気持ちを噛み締めてから、次へ行けますから。

映像作品だと、こうは行きません。


健斗さん。ここでこの“二文字”を講義するために、
とっても難しい文献をひっばり出してきます。

  民明書房刊 『詳説・高分子化学における不可逆的相転移』。

とてもいい解説本だとは思うのですが、
どうしても表現が難しくて……。


実はわたし、この健斗さんが提示した参考文献の、
『小さなお子さん用の絵本』を我が家の本棚に所蔵しておりまして。
ここでそちらを参照させていただきますね。


  


  ふたつの“ちがうもの”が
  なかよしになって、
  ぎゅーって くっついて、
  もう ずっと いっしょにいること。

  くっつくとね、
  ひとつのときよりも
  もっと すてきなちからが うまれるんだよ。

  いちど ぎゅーってしたら、
  もう はなれないくらい、
  とっても とっても つよい “なかよし”になるの。

    民明書房刊「くっついたら、ずーっといっしょになる ふしぎな“へんしん”のおはなし」


ね? とってもわかりやすいでしょ?
絵本も侮れません。

…。
(=´∀`)人(´∀`=) むふふ。



健斗さん。確信犯で負け、というか“降参”をして
終いには

  健斗:『「ん」で終わったから、僕の負けで結構だ。『月読の暦』の先行購読権を譲ろう。ん? 何か文句があるのか? なら、直接聞く。明日、大学前のカフェで食事に付き合え』 (第4話より)
  

うーーーん。高圧的……笑
なのに。明日“学食”じゃなくて、“学外のカフェ”に誘ってるじゃないですか✨☕️
『僕の負けで結構だ。』
が、かなりツボにハマりました笑
可逆反応から不可逆反応になり…。
最後は健斗さんの“加虐”反応、ですか??


そして。
詩織さんが最後に放った、『雪解け』という言葉が、
終盤になってもう一度出てきます。

改めていい言葉だと思いました。


『解』という感じは、つい“正解”とか固い印象のある漢字ですが、
『と-ける』『ほど-ける』などの訓読みもあって、なかなか美しい。

あら。読み方二つとも、送り仮名が『-ける』なんですね。
これは読み手のセンスが試される漢字ですねぇ。


『その「ん」は、終わりじゃなく始まりの言葉』
しっかり、タイトル回収も行なって、
予想を遥かに超える“二文字”で。


締めくくりの三行が好きです。

  

  嬉しい、という言葉に隠された少しの不安を。
  大丈夫、という言葉の裏にある強がりを。
  好き、という言葉に込められた、たくさんの覚悟を。
  (第4話より)

特に三行目の
 『好き、という言葉に込められた、たくさんの覚悟を。』

健斗さんが降参した“結婚”の二文字よりもむしろ
“好き”の二文字は、違う質量を感じました。
凡人には、“結婚”よりも“好き”の方が言葉にしやすいように感じますが、

かの健斗さんにはどうも逆のようです。

あのガチガチ理系の彼から、「好き」というパワーワードを、
詩織さんへ言える日がやってくるのか。

健斗さんには、
民明書房刊「くっついたら、ずーっといっしょになる ふしぎな“へんしん”のおはなし」を一読、いや何度でも読んでもらいたいですね😊
本当にかわいい絵本なので。


タイトルにもある「ん」について
「ん」って、しみじみ考えると、とても不思議な言葉だなと思いました。


「ん」お返事になる。
「ん」承認になる。
「ん?」問いかけになる。
「…ん」余韻になる。

驚いたとき
うれしいとき
くすぐったいとき
泣きたいとき ……

ため息の中で、まるで気配のように出てくる小さな音。
なんて美しい言葉でしょうか。
改めて、心に「ん」を大切に抱きしめました。
ご機嫌のいい時の鼻歌も「ん〜🎶」ですね

母音にも子音にも由来しない。孤高の「ん」。
寂しがりの「ん」を、kou様は作品の中で、
『始まりの言葉』にしてくださいました。
とても美しい物語でした。



最後にひとつ。

『その「ん」は、終わりじゃなく始まりの言葉』
このタイトルを見たとき。
音楽記号のダルセーニョ(D.S.)を思い出しました。

楽譜で、終止線まできた時、通常はそこで演奏は終了しますが、
『D.S.』の表記があるときは、セーニョマークまで飛ぶことを指示するもの。
「ん」で終わりに来ても、セーニョに飛ぶ。
素敵な循環のお話なんだなぁ、と感じました。


とっても素敵なおはなしでした。
なので。また読み直してきますね。
だって。

“もう一回、はじめよう”ってタイトルですもの。


では、また『感想のお部屋』でお会いいたしましょう👋
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。





kou様へ

『その「ん」は、終わりじゃなく始まりの言葉』
素晴らしかったです👏👏
本当に楽しかったです。
しりとりって、難しいですよね。 …考えたら随分長いこと、してないです。


設定もおもしろいし、健斗さんと詩織さんのふたりもとても魅力的だし、
幼馴染の、数々の成長段階の“溝”の羅列が、空想ではなく、現実にいるんじゃないのかと見紛うほどのリアルさで✨

お互いに対峙するときは、常に臨戦体制な詩織さんと、鼻で笑う健斗さん。
そんなふたりが、お互いの得意分野を関心を持って、感心しながらふんふんと話し合っているところを想像すると、なんだかいいなぁって思います。(語彙力)

作中の健斗さんに習って、わたしも“我が家の所蔵絵本”という架空絵本を引っ張り出してみました。
感想の中で遊んでしまってごめんなさい。
あの難解な言葉たちを、どうやってかわいい言葉にすればいいのか——
“翻訳作業”は、とても楽しい時間でした。

わたしの中の“小さな子”に「この説明で伝わるかな」と相談しながら書いていたら、
絵本そのもののお話まで考えてしまって。
どこかでいつか、お披露目できたら素敵だな……そんなふうに思います。

詩織さんが「朴念仁」という言葉の裏にある、解けてきている想い。
“結婚”の二文字を放つときの、健斗さんの用意周到さ。

二者の対比が本当におもしろかったです。
健斗さんは、本当に不器用な愛の示し方で…。かわいい🤭
でも不器用な上にも“愛”がちゃんとあるのがわかる。
そんなところが見られるのは、読者の特権なのですね✨

ニマニマしながら、1日のスタートを切れた連載の数日間。
本当に楽しかったです✨

これからも引き続き、応援させていただきます 🚩
ありがとうございました。


1件のコメント

  •  金時まめ様
     この度は、物語の世界を深く、そして温かく見守ってくださるような、素晴らしいご感想をいただき、誠にありがとうございます。
     毎朝の投稿を楽しみにしてくださっていたとのお言葉、作者としてこれ以上ない喜びです。
     「多体問題」持ち出した本人ですが、健斗は理解していますが、私は理解できていません(^^ゞ
     それをショートケーキに例えてくださった解説など、言葉の端々から作品への深い愛情と、金時さんならではの豊かな感性が伝わってきて、大変面白かったです。
     ケーキの食べ方で、バランスを崩さずに、美しくいただきながら、いかに綺麗に王(いちご)だけを残しつつ、いちごショートケーキなるものとの、濃密な時間をいかに過ごすべきか。
     これは、かなり面白い内容です。
     いちごを先によければ……と言う紳士に退場宣告は、笑ってしまいました。
     これだけで、ラブコメディの一話くらいできそうです。
     また、「民明書房」のネタを絵本による翻訳、あれは…! 健斗のあの難解な説明が、あんなにも優しく、愛おしい物語へと変わるなんて、まさに魔法のようです。
     まさかそんな風に解釈していただけるとは想像もしておりませんでした。私の意図を遥かに超える、面白くて愛おしい解釈をありがとうございます。
     作者としては、健斗がそのような「翻訳」に触れたらどう思うだろうか、と想像するだけで微笑ましい気持ちになりました。

     二人の「犬猿の仲」が、少しずつ「雪解け」していく過程を、綿密に感じ取っていただけたこと。
     そして「同じ目線で交わした会話」の美しさについて触れていただけたこと、大変光栄に思います。
     「しりとり」という題材が、単なる言葉遊びに留まらず、二人の関係性の変化、「ん」によって「終わりではなく始まり」というテーマに繋がったことを、金時さんのように深く読み取って頂けたこと、本当に嬉しく感謝しております。

     この度は、温かいお言葉の数々、誠にありがとうございます。
     「素晴らしかったです」「本当に楽しかったです」とのお言葉、作者としてこれ以上ないほど嬉しいです。
     詩織と健斗、そして二人の長い歴史に「リアルさ」を感じていただけたこと、そして臨戦態勢だった二人が互いの世界に関心を持っていく様子を「いいなぁ」と思っていただけたとのことで、胸がいっぱいです。
     そして、“我が家の所蔵絵本”のお話、本当に素敵です。
     いえいえ、遊んでくださってだなんて、とんでもない。 健斗の理屈っぽい嘘を、あんなにも愛らしく、温かい物語に“翻訳”してくださったことに、深く感動いたしました。その素晴らしい感性と遊び心に、作者である私自身が、楽しませて頂きました。
     不器用な健斗の中に「愛がちゃんとあるのがわかる」と感じていただけたこと、二人のやり取りに「ニマニマ」しながら1日のスタートを切っていただけたこと、この物語が金時さんの日常にささやかな彩りを添えられたのだとしたら、本当に光栄です。
     温かい応援のお言葉、しっかりと受け取りました。
     これからも応援していただけるような物語を紡いでいけるよう、精一杯精進してまいります。
     この度は、本当にありがとうございました。
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