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【感想のお部屋】 『その「ん」は、終わりじゃなく始まりの言葉』  前編  〜安定点。それは戦わないと手に入れられないもの〜





※※ はじめに ※※ (【感想のお部屋】定期)

この小部屋を見つけてくださって、ありがとうございます。

こちらは、“kou様”の作品を、 わたし “金時まめ”として、感想を語るお部屋です。
作品をまだ読まれていない方は、ぜひ本編を味わってからお越しいただけたら嬉しいです。
(感想なので、ネタバレを含みます)

『その「ん」は、終わりじゃなく始まりの言葉』
https://kakuyomu.jp/works/822139839133270401

※※ 以下、ネタバレを含みます ※※










⚫︎ 4日間を熱く駆け抜けた、16,435文字 🏃🏻≡ 🏃‍♀️³₃≡≡≡

2025年。
11月 9日 第1話 「しりとり」勝負開始!
11月10日 第2話 噛み合わない言葉の応酬
11月11日 第3話 同じ目線での会話
11月12日 第4話(終) 新しい「しりとり」


第1話を発表の段階で、作者様が日付と『07:00』の“更新予定”を載せてくださっての、連載開始でした。

次のお話はいつかな? というわくわく感も楽しいのですが、
更新予定を載せてくださる形もとても楽しかったです!

学生時代に、発売日の月曜朝には、駅の売店によってジャンプを買っちゃうみたいな。
そんな“お楽しみ”感が満載でした。


『犬猿の仲の幼馴染との七日間の言葉戦争』

ううむ。キャッチコピーから、なんだかきな臭いですね。
そして
『その「ん」は、終わりじゃなく始まりの言葉』

というタイトル。

読み始めると、なんと『しりとり』のお話です!🤭




⚫︎ 「しりとり」勝負開始!

舞台は大学図書館。閉館間際。
おぉ笑 閉館とは、早速“終わり”から始まっています!
『蛍の光』まで流れてますし。🎼

幼馴染だけれど犬猿の仲の、健斗さんと詩織さん。
「月読の暦」真理へ異なるアプローチをしたいからって、まさか同じ本をご所望してしまうんですね、それも同じタイミングで。

健斗さんは、理系の塊のようなお人。
最初、詩織さんのなかなかの棘のある言葉に驚いたのですが、
健斗さんの話ぶりを拝見するに…それは逆撫でますわ…。
思い出が保育園時代まで遡るのには、大笑いしました😆

・保育園「泥団子、せっかくピカピカにしたのにねぇ。詩織さん、そりゃ泣くよねぇ。」
・小学校「自由研究なんだから、自由にさせてあげて。」
・中学校「奇跡が起きて、星が降ることもあるんですよ?健斗さん」
・高校「フェニックスの垂れ幕!!笑 ありそう🔥🕊️」

ふたりと一緒に、自分も成長してきたように感じる、二人の『犬猿の履歴書』。

「しりとり」が始まる前の、連絡方法について、取り決めの時。
ちょっと真面目に読んでしまいました。
日常で便利に使っているものも、本当に気をつけないといけないですよね。
キャリアのSMSという連絡手段は、すっかりサブになっていますが、
世の中のお騒がせさんたちも『LINE流出!』とニュースになってることが多いですし。
普段、当たり前のように使用しているアプリたちについて、考えるいい機会でしたm(_ _)m



「開始」の合図で始まった最初のやり取りの、
『可逆反応』について。
  一度変化しても、もとに戻ることができる化学反応。
  たとえば、水が氷になる → 氷がまた水に戻る、のようなもの。
ふむふむ。
ここではまだ『元に戻ることができる』んですねぇ。
『可逆反応』には“何度でもやり直せる”という意味にも感じられました。




⚫︎ 噛み合わない言葉の応酬


翌日07:00。第2話更新。

しりとりって子どもの遊びといえど、意外に難しいと思います。それも、お互いの専門用語縛りって。ふたりとも知識量がすごいと感じました。

健斗さんが予測変換ミスで、言葉の最後に「ん」がついてしまい、ペナルティとして詩織さんに学食でおごることになります。

その時の、『裏窓』と『ドップラー効果』という
この二つの言葉について。
少し考えてみました。
この二つの言葉は、「距離が生む、歪み」を象徴したのではないでしょうか。

・「裏窓」は、ヒッチコックの名作映画、だと仮定して。
怪我をしてアパートから出られない主人公が、向かいの、こちらもアパートで起きた(かもしれない)殺人事件に首を突っ込むお話。
証拠探しに美しい恋人(本当に美しいグレース・ケリー✨)が犯人(かもしれない男)の部屋へ侵入するシーンは手に汗握る展開で、主人公は足を怪我しているからそばに行けないもどかしさという“歪み”のシーンがあります。
・「ドップラー効果」は、距離と速度で、本来の音が“歪む”現象ですよね。

もしかして、上の考察があっていれば、
しりとりも成立させつつ、対になる言葉の意味も、近いものにして含みを与えていたんですかねぇ。そうだとしたら…驚きです🤯


さて。学食のシーンです。

・詩織さん 
   いつもより少しだけ丁寧にアイロンをかけたブラウスが、風にそよいでいる。
   別に、健斗のためなんかじゃない。(第2話より)

あら? 詩織さん?? ツ、ツンデ…。

・健斗さん
   「あの小うるさい女が、きれいになったと思っただけだ」(第2話より)


あらあら?? 健斗さん? なんて素直に。


    売り言葉に買い言葉。
    けれど、テキストだけのやり取りとは何かが違った。理屈をこねる健斗の目が、いつもより生き生きと輝いている。その声には、どこか楽しそうな響きが混じっている。
    詩織は、その事実に気づいてしまい、それ以上言葉を続けることができなかった。
               (第2話より)



勝負のための“しりとり”だけど、
3日目に入って、テキストだけとはいえ、「言葉をやり取りしている」、ということは『心のやり取りをしている』ということでもあって。
 

テキストでのやり取りもそれは楽しいけれど、
実際に、自分の目で見て、相手の目を見て、声を聞いて。それは“テキストだけ”とは、違うものね。詩織さん。

そんな、すこーし詩織さんの中で、言い知れぬ想いが芽吹いているときに!!

詩織さんが苦手としているグリーンピースをひょいひょいと、自分のトレーに移しちゃう健斗さん。
健斗さん、これは無自覚での行動なのかしら。
どうなんでしょうか。
もう。いやいや、ずるい。😇   
   

   「……次は、僕が勝っておごらせる」 (第2話より)

それ。「もう一度あなたと一緒にお食事したい」っていう意味ですよ?

あぁ、もうだめ。
顔を手でおおっちゃいますって。こんなの🙈
かわいすぎではありませんか、おふたり。
少しずつ、心が近づいてる感じの“空気”が絶妙な第2話でした✨



⚫︎ 同じ目線での会話


5日経っても。続きます、ふたりのしりとり勝負。
ここで出てくる『ラグランジュポイント』。わたしは初めて知りました。


     ――地球と月との引力の関係が安定する領域。天体と天体の重力が釣り合う、宇宙空間の安定点。

   そこに置かれた物体は、ほとんどエネルギーを使わずに留まり続けられるというものだ。(第3話より)

“必然”という言葉がふと浮かびました。
ただ静かに、“釣り合って存在する”安定点なのですね。

その後の、学食で何だかんだ理由をつけて、詩織さんのそばに座る健斗さん。

もう。その理由がかわいい!!


ここでふたりは、お互いの専門分野へ興味を持ち始めたことを、素直に話し始めます。
この、劇的な何かがあるわけではなくても、
徐々に、だんだんと、ふたりが近づいていってる描写が、とても美しく、とても自然で、
kou様の腕💪✨、その筆致、お見事というか、拍手喝采でした。

望遠鏡が見せてくれる星たちの光。
それは“過去の光”。
何万年も何億年もかかって、地球に届いている。

今見ているその光の源は、今はもうすでに消滅しているのかもしれない。

けれど、“今”“光が自分の目に届いている”という事実に、
過去のものも、見えないものも、膨大な時間がかかっても、ちゃんと届くということを
教えてくれているように感じて、
無駄なことってないんだな、と心がじんわりしました。

「雪国」を語るシーン。
ここはふたりの“犬猿の仲”という長いトンネルを抜けて、心の距離が近くなっている、という象徴としての「雪国」なのでは?と感じました。

   


   二人はそれから、クリームソーダの氷がカランと溶けてなくなるまで、宇宙の話と、物語の話をした。
   それは、物心ついてから初めて、彼らが同じ目線で交わした会話だった。(第3話より)


ね。いつまでもお話ししたくなっちゃうわよね。うんうん。





……と。ここまで書いてみて。
あれ?なんだかとんでもない字数になってるような…。
これは。1つにおさまらないな。

ということで、
『その「ん」は、終わりじゃなく始まりの言葉』 の【感想のお部屋】は
『前・後編』という形にさせていただきます😊


では、また『感想のお部屋』(後編)でお会いいたしましょう👋
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。





kou様へ

いつも素晴らしい作品をありがとうございます!
今回の『その「ん」は、終わりじゃなく始まりの言葉』 も、大変に楽しませていただきました✨

前回の【考察のお部屋】
で楽しく“考察”させていただいたのですが、慣れない文体と構図を考えるのに、脳みそを使いすぎて、沸騰してしまったので、
今回はもうそれは心の思うままに、
自由に(自由すぎるくらいに)
本来の意味である【感想】をただただ綴っています。
反動っておそろしい。
実は、もう一本【考察のお部屋】を温めていたのですが、
推敲すればするほど、自分で何を言ってるのか、何を言いたいのかわからなくなる、そんな迷宮に入ってしまいました🤭

kou様は、小説で何文字以内の〜などの企画にも参加されていますよね。
そういう時って、
この構成で、何文字以内でここまで書いて、と頭の中で組み込むものなのですか?
あぁ全く想像すらできない…。
書けば書くほど、書きたいものから遠ざかる、そんな感じに過ごしております。

なので笑
今回は思う存分、自由すぎる自由の中、書かせていただきましたヽ(´▽`)/

後編も、こんな感じで書かせていただきます。
すみません🙏 
少しでも。楽しみにお待ちいただけることを願って。


あ、余談ですが、わたしは理系の人の話し方ってけっこう好きです。
例えば。ソフマップのお兄さん。
すごく早口で、めちゃくちゃ滑舌良くて、
「これとこれの違いはなんですか?」
と一つお伺いしただけで、カタログ以上の情報をどわぁぁぁ、と教えてくれる。
わたしの知識欲は大いに満たされ、その製品や果ては概念までも理解も深まり、
「課金するんで、もう1時間お話聞かせてくれませんか?」ってなります笑


1件のコメント

  •  金時まめ様
     この度は、物語の世界を隅々まで旅してくださったかのような、温かく、そしてあまりにも深く鋭いご感想を、本当に、本当にありがとうございます。
     頂いたメッセージを拝見し、言葉にならないほどの感動と興奮で、しばらく胸がいっぱいになってしまいました。
     冒頭の「“終わり”から始まっています!」という一文から、もう心を鷲掴みにされました。
     まさか閉館の描写に、そんな深読みをしていただけるなんて! 二人の長い歴史『犬猿の履歴書』も、一緒に笑い、時にツッコミを入れながら楽しんでいただけた様子が目に浮かぶようで、本当に嬉しいです。
     そして、しりとりの言葉一つひとつに対する考察、特に『裏窓』と『ドップラー効果』についての「距離が生む、歪み」というご慧眼には、正直なところ鳥肌が立ちました。
     あー。確か、こいう作品がビデオで、あったな。(司書の仕事をしていたもので。していなかったら知らなかった……)調べると、映画だけど元は小説があるんだ。じゃあ、これにしよう(私は未視聴(^^ゞ)
     『ど』から考えて……、ドップラー効果、何だか良く分からないけれど理系っぽい言葉だから、これで良いか(^^)♪
     というようなノリで、書いているので、金時さんの考察は作者の意図を遥かに超えて、物語に新たな奥行きと命を吹き込んでくださったのは、間違いなく金時さんの深い考察です。
     もしかしたら、健斗と詩織が、私の知らないところでそんな言葉のキャッチボールをしていたのかもしれませんね。驚きと感動でいっぱいです。
     学食のシーンでの二人の些細な心の動きも、こんなにも丁寧に見つけてくださり、ありがとうございます。「ツ、ツンデレ…」「あらあら??」と楽しんでいただけて、健斗も詩織もきっと喜んでいることと思います。
     グリーンピースの行動が、健斗の無自覚な優しさだったのか、それとも計算だったのか……。ムダにするな。というのは無自覚な言い訳で、彼自身にも分かっていなかったかもしれませんね(笑)
     「……次は、僕が勝っておごらせる」
     この時の健斗は、詩織への対抗意識からの発言でしたが、心のどこかで、金時さんのおっしゃるように、また一緒に食事をしたいと意識していたハズです。
     互いの分野に自ら調べることで、理解を示して行く。
     学食で見かけた時に、
    「ここが一番効率的な動線上にあるだけだ」
     と、分かるようで分からない理系な理屈をつける。
     素直じゃない彼を、可愛いと思って下さり、健斗も照れることでしょう。
     そして、二人が互いの学問を理解を示す。
     前提が犬猿の仲だったので、不器用でも、こうやって理解を示すしかないな。と思っていましたが、徐々に、だんだんと、ふたりが近づいていってる描写として、それを肯定的に見てくださり、恐縮です。
     
     なお、あそこで「雪国」が出てくるのは、「トンネルを抜けると雪国であった」という一文を、文学を紹介した本で読んだのを思い出したからで、金時さんのおっしゃる深い考察ではなかったりします(^_^;)
     意図的に狙ったのは、4話にある「雪解け」は、二人の関係が雪の季節が終わるという意図で使いました

     文字数制限のある企画についてのご質問も、ありがとうございます。
     私の短編の場合は、こういう感じでお話を書こうかな、と感じで始めます。
     今回のお話で言えば、「犬猿の男女が、しりとりで勝負をする」→「同じ本を借りる為」→「ただの、しりとりじゃダメ。そうだ、理系と文系にして、お互いの学問の用語を使う」→「しりとりを通して、お互いの学問に理解を示す」
     という様に、ものすごく単純に考えています。
     この度の企画は、字数制限はありませんでしたが、私の中では、しりとりだし、一万字もあれば書けるだろう。
     そんな、ことを考えて書き始めましたが、書いている内に、どうしても必要なシーンやセリフから肉付けしていくことが多いです。
     そうやって、いつも膨らみ過ぎて、文字数をオーバーするので、とりあえず書き終わってから、膨らみすぎた話しを、頭を抱えながら削る作業をしています。
     最近企画で書いた肉料理の小説企画は、字数がオーバーしてしまい。削るのが面倒なので、未参加となりました(^^ゞ
     なので、金時さんが「迷宮に…」とおっしゃるお気持ち、痛いほど分かります…!
     思う存分、自由な翼で物語の世界を飛び回ってくださったご感想、本当に嬉しかったです。
     後編に続くとのこと、一体どんな言葉をいただけるのか、今から楽しみで仕方ありません。
     どうぞ、心ゆくまで自由に綴ってください。
    (余談ですが、理系ということで、まだ手にしたことがありませんが、『理系が恋に落ちたので証明してみた』 を読んでみたいと思っています。健斗の理屈っぽい早口も、金時まめ様にはきっと魅力的に聴こえるのだろうなと想像して、なんだか微笑ましくなりました。)
     この度は、健斗と詩織の物語に、これ以上ないほどの愛情を注いでくださり、本当にありがとうございました。
     後編のご感想も、心よりお待ちしております。
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