「海底火山の中でだけ繁殖するアメーバ発見」みたいなニュースが流れ、なんとな~くみんなイヤな予感がしたが、案の定ゾンビパニックが始まった。しかし、なんやかんやで比較的早期に収束した。一回コロナを体験しておいたのが良かったのかもしれないねえ、良かった良かった、となってから数年後。人類はある大きな問題に直面していた。
石油がもう逆さに振っても出てこなくなったのである。もともと昭和80年くらいには枯渇するとか色々言われてたが、なんやかんやなんとかなってたので舐めてたところはある。でもある日、Xデイを境に、何をどうやっても石油が取れなくなった。
でまあ、こうなると背に腹は代えられないので原子力発電所とかも動かすが、長年の脱原発事業の成果もあって、ノウハウが失われており、ちょーっと新設とかは無理かな的な感じにもなる。老朽化した原発を騙しだまし動かしてるが、まあ停まったらさすがにそこで終わりかな的な。
というのを実は見越してソーラーパネルを敷設しよう、っていうことのためには、多少儲けがないと誰も動いてくれないので補助金出してやろう、つって補助金出してたら「メガソーラーで自然の景観が損なわれる!! カス事業!!!」「メガソーラーで儲ける資本主義の豚!!! 守銭奴!!!!」みたいになる。嫌気がさした人たちが「じゃあやめま~す」と言ってやめ、他の技術も「まあ大体そういう感じになるよなあ」ということで誰も手を付けず、マジでかなりすごい空気になった。
しゃあなし、みんなであの古典的な、奴隷が回してる謎装置でおなじみのあの長―い棒がついたアレを交代制で回し、なんとかかんとかわずかな電気でどうにかこうにか遊んでいる。今アツい遊びは竹とんぼだ。
と言う時に誰かがゾンビのことを思い出した。一応アメーバはどっかで保管はされているらしい。このゾンビ、もとがアメーバなせいもあって、空気感染はあり得ないと言って良い。飛沫感染もほぼなくて、めちゃくちゃ濃厚接触(噛まれるなど)しない限りは感染しない。人間が出せる以上の力は出せるが、言うてサイズによる限界というものがあるので、金属製のケージでもあればそっから出てくることは不可能である。それでいて、極めてわずかの栄養補給でかなりの長時間動き続ける。なんか人間を食いたがるという性質はあるが、機能停止しそうになると別に人間以外でも食べる。で、一回死んでるのもあって、事実上の不死である。これ……いけんか?
それでまずは植物状態の人とか、死刑執行直後にとか、こっそりやってみると、まあなんかうまい感じで拘束するとそれなりに「回して」くれることが分かった。「おお」ってなって、次は認知症の老人とかを対象にして、「一時金も支給するし、『稼働』が続く限り年金支給」みたいにしたところ、ひそやか~に人が集まり、次は寝たきりの、次はわりに健康な…………とやっていくうちに、いつしか電力問題はわりと解決したのであった。
その後、それとはまったく別の理由で最終戦争が起こって人類は滅亡した。しかし、まさに自家発電によって自動給餌システムなどは動き続けたので、当面の間電力供給は続いたという。その後この惑星にたまたま訪れた宇宙人は、「無人の惑星でロボットだけが動き続けるパターンは結構あるが、ここは残された病人だけが永遠に動き続ける珍しいパターンだ」ということをSNSで報告し、800いいねくらいは稼いだという。これはこの宇宙人の生涯最大のいいね数で、彼は彼が死ぬ直前にその惑星に再度訪れ、「800いいねの地」という石碑を立てて、満足げに微笑んだそうである。