「お嬢様、大変でございます! お嬢様の呟きが炎上しております!」
「言い訳しましょう」
「言い訳でございますか。それもよろしいですが、こういう場合は速やかにアカウントを削除するなどして、沈黙を守るのも一つの防衛策かと……。アカウントなど金で買えば良いことですし。いかがでしょうか?」
「いいわ。消しましょう」
「ご承諾いただけましたか! ええ、お任せください。この私の首をかけてでも、必ずやこの炎上、おさめて見せましょう。しかしお嬢様、これまで謙虚に下々のものと交わってこられたのに、一体なぜ『庶民の皆様は、こんな輪状になった消しゴムを触れたことはおろか、見たこともないですわよね〜✨』などと、庶民を煽るようなツイートを……?」
そう問いかける執事の存在にようやく気づいたかのようにお嬢様は一瞥すると、視線を戻して物憂げにため息をついて答えた。
「良い輪消し……魔性」
その目にはもはやTwitterは映っていなかった。爛々と輝く目の先には、端正な輪の形をした消しゴムだけが静かに佇んでいるのだった。