漫画嘘知識の一つに、角膜を移植するとそこにもとの持ち主の最後にみた映像が残っていて、みたいなやつがあります。俺はブラックジャックとブラック聖闘士で見ました。奇しくもブラック繋がりですね。
これは(最初に書いた通り)嘘知識ということになっています。ブラック聖闘士の場合は確か眼球丸ごとだったと思うので、もしかしたらなんかある可能性はあります(最終的に脱分極した細胞をピックアップして自己で再現できるみたいな、そういうテクがあるのかもしれない)が、まあそういうのはファンタジーと言いますか、「ない」話であると。
でまあ、人体移植系でそういう、ちょっとファンタジー的なやつだと、心臓移植したら触ったこともないピアノが弾けるようになった! みたいなやつがあるじゃあないですか。で、「あのピアノの音色は〇〇の……」みたいになるやつ。彼はまだ生き続けているんだ的な話。これもブラックジャックかひょっとして? そうかもしれない。
これはあながちゼロではないのではないかと思うという話です。
と言っても、心臓には記憶の座があってそれをトレースしてみたいな話ではない。「恐怖のあまり一夜にして白髪になりました」ということはなくても、「恐怖のあまり髪が全抜けして、残ってた髪も白髪です」くらいだったらあるかもしんないというレベルの話です。
まずですね、なんかツイッターで見たんですけど、ビート聾(ビート音痴と訳した方が適切ですかね)とわりと音楽経験ある人で、小脳の特定部位のサイズが違うっていうんですね。面白いのが、経験豊富な方がその部位のサイズは「小さい」ということなんですが、そこはちょっと端折るとして、つまり音楽の中でもビートというのはかなり身体・運動と関係がある部分だということになるわけです(手前味噌で恐縮ですが、小脳の機能については デブに至る体質(2)
https://kakuyomu.jp/works/1177354054881038781/episodes/1177354054881119825 参照のこと)。
そいでまあ言われてみりゃあそうで、そもそもビートというのはかなりの部分ハート・ビート、つまり心拍から来てるんだろうと思うわけですね。そうするとまあ身体というのもわかる。
でこれには個体差があるわけです。なんか騎馬民族と農耕民族のビート感の差みたいな話があって、それ自体はちょっと眉唾かなあと思ったりもしますが(騎馬民族は「パカラ、パカラ、パカラ」で3拍子を好み、農耕民族は、鍬を入れる、上げる、入れる、上げるの4拍子を好む、みたいな話。だから農耕民族の末裔たる我々は、
ハッ/ピー/バー/スデー/
トゥ/ユー/パン/パン/ (パンは手拍子)
とかやっちゃうという)、個体差があるのは事実っぽくて、で等間隔・等強度のクリック音を提示しても、そこにどういうビートを取るかは人によって違うらしいんですよね。でまあ違うというのは分かる。違う方が自然だと思うわけです。
ちなみにこの「自然ビート」というか「生得的ビート」みたいなものは、1.2 Hzくらいになりがちで、それがなんか心拍に近いとか、このへんは全く資料にあたってないので伝聞に頼るしかないんですけど、そういう感じもあって、だからまあ、「自分にとって心地よいビートがあって、それの一つのオリジンは心拍である」というのは言って言えないこともないのではないかと思うわけです。
ほいであと、心臓というのはまあ、勝手に止まると困るので、心臓の中に中枢があるんですよね。洞房結節というらしいんですが。
あとはお分かりですよね。
心臓移植によって、「固有のビート・タイミングが変動する」ということは起こりえるのではないかと思うわけですよ。そうすっと、いままでピアノとか全然ビート取れなくて(何しろ心臓の病気だから心臓を移植するわけで、ということは不整脈も多くて、そこ由来のビート感覚は減弱しているわけです)、すごく遠ざかっていた人がですよ。
移植によって、ビート感が変わるということはあり得るのではないか。ちょっと自分のビートが調整されて、あとまあプラセボというか、提供者の情報って知れるのか知らないんですけど、その人がピアノ弾いてたみたいな話が入ってきて、ピアノを弾きだすようになる。ビート感が変わっているので、「人が変わったように」うまくなったりするかもしれない。だいたい話というのは大げさになるので、「なんか移植後、ピアノが上手になったらしいよ」から、「まるで生き写しかのように劇的にうまくなった!」「触れたこともないピアノを見たら、聞いたこともない曲を弾きだした」までに展開することはあり得るじゃあないですか。
フムーと思ったという話です。