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恋の話

 中学校の時、はじめて恋人というのができて、クリスマスから冬休み開けまで付き合ってた。それは付き合っていたと言うのか? どうなんすかねえ。「クリスマスを恋人と過ごす」というのをお互いやってみたかったんかな感はある。つかさ、あと1ヶ月我慢してくれりゃあよ、バレンタインがあったじゃあないですか……そこまでやってくれてもいいでしょ……なんならホワイトデーもさせてくれたって良かったじゃあない……で新学期、クラス分けとかで自然消滅。ねえ? 綺麗じゃあないですか。

 でまあ、そんときの話なんですけども、問題がひとつあったんです。それは何かって言うと電話なんですね。

 と言いますのは、まあ恋人ということになってますから電話のひとつもしたいじゃあないですか。学校でいいだけ顔合わしてんですよ? でもさ。なんかさ。なかなか電話きれないからせーので切ろうね、切ってないじゃーんあははうふふみたいなやつをやってみたいじゃあないですか!! なにせこちとら中学生ですから、見逃してやってつかあさい。

 んでまあする。のは良いけども、問題があって、当時携帯電話なんてものはなく、PHSすら普及はしてなくて、かろうじてコードレスホンがあって、ポケベルもギリあったかなみたいな頃。なんで、家族というのがハードルになるわけですわな。

「うちは全員雅島ですけども?????」って、なるわけよ。まあそれで敢えて名前を呼ぶっていう家族相手の羞恥プレイみたいなやつをやって却って燃えるみたいなのもあったかもしらんけども、普通に嫌じゃあないですか。だからまあ、学校で、今日何時に電話するねっつって、約束して、その時間近くになったら子機を持って部屋の隅っこで待つわけですよ!!
 で通常の時間に掛け合いっこしてると、また長電話になるから、電話代の件でぐちぐち言われたりもする。では次はどうするか。家族の寝静まった深夜にこっそりやりとりをするんですよね。これも学校で取り決めしとくんですよ、12時半に電話するねとかね。でも電話のベルの音、うるさくないですか? 甘い!! 11時くらいにね、みんな寝たかなってときにそうっと親機のところに行って、呼び出しをミュートにすんのよ。で、12時半前に子機を見つめて、点滅したらボタンを押して、そんで小声で話す。終わったら、受話音量を戻すのも忘れないようにする。まあ月末にはバレて文句は言われますけどね。そういうことをやっていた。

 何時間か後には学校で会うんすよ? で更に言うなら1ヶ月ちょいで別れてんすよ? でもやってたんですよね。

 という話、みなさんおじさんから百万回聞かされてますか? 俺はこれから年1くらいでしていこうと思いましたんで、あと30回くらいはすると思います。「まじっすかー、いやー想像できないっすわー、そっかスマホないんすもんねー」とか言ってくれると、「お前なあ、スマホの前に今ガラケーって言ってるやつ以前の白黒のケータイ、でその前にまずピッチ、更に前にはポケベルだからな」って話ができて、あと着メロ自分で作ってた話とかでひと盛り上がり可能なんで、お若いみなさんはこの話用の相槌を考えておきましょうね。それが社交性というものです。でおっさん世代は盛り上がりましょうね。家に電話かけるあるある。今の子はしないよなー! いやあいいんですかね、悪いんですかねえ!!

 全部想定済みなら会話不要なのでは? いやまあそうなんだけど。そこはほら、なんつうか、声出していこうみたいな。そんなで。

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