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絶対ありそうなのにないことわざ

 衣服足りて礼節を知る、ということわざがあって(今気づいたけどないわ。衣食足りて、ですよね。飯を忘れてた。デブの風上にもおけない)、まあそれを体現したってか体系化した人がいて、それがアブラハム・マズローというおじさんなんですね。マズローの欲求段階、とか自己実現理論、とか、承認欲求とか、みなさん何回かは自己啓発系のサイトとかブラック企業の企業案内で見かけたことがあると思うんですが、ようするに「衣服足りて礼節を知る」って話ですよほぼ。まず寒くなくて飯が食えて、そんで初めて褒められたいみたいな気持ちになって、褒められて満足しないと社会に貢献しようみたいなとこにはならないよねってアレ。

 の話はどうでも良くて、このひとが残したとされることわざに「When all you have is a hammer, everything looks like a nail」ってのがあるらしいんですね。ハンマーしか持ってないと、全てが爪(ネイル)に見えるという人を破壊したくてしょうがないサイコパスの述懐、ではなくて、ネイルの訳は釘ですね。
 本意としては、権力を持ってるとそれを使いたくなっちゃう、ってことらしいんですが、持ってるテクが限られてると、環境に対して視野が狭まる的なことにも解釈できたりするんで、結構いいことわざだと思うんですが、これ絶対対応することわざあると思ったんですけど、なくないですか? ある? あったらそこで話終わりなんですが、まあなくてももう話すこともないんで終わるんですけど、めっちゃありそうですよね。こう、身の程に合わない力を持ってしまって、それに振り回されるなんてもうベッタベタ、王道の展開じゃあないですか。今まで気のいい好青年だったのに、力を手にしたら急に暴君になって、で水戸黄門とかに成敗されて、最終的に誰かがぽつりと呟くわけですよ。
「金槌しか持ってねえと、全部が釘に見えるってのは、ホントですなァ、御隠居--」
「うむ。そうじゃのう」



「……金槌?」
「釘?」

 ちょっとざわついちゃうでしょ。適切なことわざがないばっかりに。困ったもんですよね。

1件のコメント

  • すげー! 俺が午後悩んでた問題がクリアしました。ありがとうございます。小ネタの密度が高い。
    Hachi-bay が最大にツボでした。解決! 一件落着! カッカッカッ!
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