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さて今回は、三菱「火星」エンジンです。
地中から掘り出されたようで状態は悪いのですが、実際に一式陸攻や雷電に使用された実物の火星エンジンです。
シリンダ上の吸気と排気バルブを駆動するためのV字型のプッシュバルブの白っぽいケースが前面に配置されて、よく目立ちます。
よく見ると、このバルブケースは前列のシリンダだけでなく、後列のシリンダの頭にも窮屈なところを通って接続されています。
本編のMK3A開発でも説明していますが、これが三菱の空冷エンジンの特徴の一つで、エンジン前方のカムから全てのシリンダのバルブを動かすためのロッドを接続しているのです。
このため、後ろのシリンダへの風当たりの障害になっているのがわかると思います。
中島の栄や誉では、この構造を止めて後列シリンダのプッシュロッドはエンジンの後方から駆動するように変えていました。
三菱は18気筒のハ-43になってやっとこの構造と別れを告げることになりますが、ちょっと遅すぎました。
なおこのプッシュロッドは中空でオイルの通り道にもなっていて、シリンダ頭部へのオイル循環の役割も果たしていました。
火星エンジンは所沢航空発祥記念館に展示されています。