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空冷星形のエンジンで大馬力と言えば、まずこのエンジンを思い出します。
R-3350と言ってもピンとこない方は、B-29のエンジンと言えばわかるでしょう。
貴重なエンジンの実物をカットモデルにして中身が見えるようにしてあります。
私が注目しているのはこの写真のシリンダのヘッドの下の胴の部分です。シリンダヘッドのフィンとは異なり、胴の部分には、放熱用のフィンが驚くほどち密にびっしりとついています。
こんな細かなフィンは鋳造では作れません。鋼製のシリンダ胴にU字型の溝を作り、そこに後付けで、プレス加工した薄板を押し込んで特殊な工程で圧着しています。
高空に上がると空気密度が薄いおかげで、エンジンの冷却性能が落ちます。温度の低下よりも密度の低下の方が影響が大きいのです。その対策として、こんな細かなフィンをつけて高い所でもなんとか冷えるようにしたのですね。
B-29と言えば、排気タービンのおかげで高空性能が優れていた、と言われています。しかし、それだけでなく、こんな高空でも冷却できる仕掛けも高空性能確保のために必要だったわけです。
日本では誉エンジン(疾風や紫電改に搭載)で鋳込み法による後付けフィンを実用化しますが、生産性の悪さからブルノー法へと移行してアメリカを追いかけています。
排気タービンを表舞台の技術とすれば、こんな裏方でそれを支える技術もあったわけです。
このエンジンは、成田の航空科学博物館で展示されています。