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ブラザーインアームズ:ヘルズハイウェイ(BIA:HH)とは何だったのか

 デフォルトのオプション設定に面白さがスポイルされた可哀想な戦略FPSだった。しかも、PS3版を日本アカウントで遊ぶとオプション設定が保存されないバグがある。(北米アカウントだとちゃんと保存されます)

 脅威エフェクトというのがあって、これは真っ先にオフにしたほうがいい。撃たれている→だんだん画面が赤くなる→真っ赤になると攻撃が集中しているので銃弾が当たると死ぬorカバーすると脅威が減って平常に戻る。という仕様なんですが。見た目が自動回復でしかなくて、実際にプレイヤーが受ける(当たるかもしれないという)敵の銃弾の恐怖が削がれている。つまり、「これは怖いんですよ」と示されてしまうと、怖いものも怖くなくなってしまうという理屈と感覚だ。
 これをオフにすると、画面表示から銃弾の撃たれているという状況とその方向が分かりつつも、実際どのくらい集中して狙われているのかは分からない。だから「隠れなきゃ!」という敵弾の恐怖(そして「死」の連想・想像)とカバーによる絶対的な安心の報酬系とが生まれる。カバーするというチュートリアルもあるんだから、これはデフォルトでオフにすべきだったし、最高難易度でもオフになるべきだった。

 それと照準およびカバー時照準。これもプレイヤーの能力を上げすぎた。カバーしている時は実質無敵なんだけど、その状態から精度の高い射撃を繰り出せる事によって、味方の不要感が強まる。味方と連携することが肝のゲームだったんだから、ただ隠れて狙撃を繰り返すだけでは芸が無い。
 これは同じくカバーシューターとしてほうぼうに影響を与えBIAの開発者も影響を受けたと答えていたギアーズオブウォーにあった仕組みだったんだけど、体力が瀕すると中央に円形のマークが現れてきて、それがブラインドファイア時に普段は表示されない照準の替わりを為す。BIA:HHでもカバー時照準をオフにすると、味方に射撃命令を出したときのアイコンが数秒間だけ照準の替わりになる。これがちょっとした「命令を出した時のご褒美」になってる。それにカバー時狙撃が出来なくなると、「カバーから一瞬だけ外れて一人称のアイアンサイトで危険を冒しつつ狙撃」「味方にうまく指示を出して制圧」という駆け引きの面白さも生まれるしね。
 たぶんこのゲームは「脅威エフェクトなし、照準は全部オフ」で完成するように作られたように思う。そのほうが面白いから。(それに、選択肢として残されている)

 このゲームはストーリーがとっちらかっていて、自分は「一人称視点と三人称視点とが混在した、解離性障害や幻覚症状の表現・およびリーダーと統率とを失った部隊の物語」と解釈しているんだけど、ゲームそれ自体もそのように作られたのかもしれない。リーダーを失ったからカバーシューターへのアンチテーゼになりえた上記の要素を磨き上げることが出来なかったし、削るという決断も出来なかった。「続く…」のまま9年間新作が出ないのも、プレイヤーの想像によって完成するものが――作り手が、プレイヤーの想像力を信用しきれなかった。説明や解説に終始してしまった。ゲームプレイもストーリーもそのような印象を受けるし、開発も難航して二転三転していたから、実際そうだったんだと思う。まあ、ゲームだからして、ゲームプレイの部分は選択肢=オプションとして残されているのが救いですね。

(追記)---
ああ、完全に戦車パートの事を失念していた。あれは無理やり好意的に解釈すると、「戦車」こそが「統率された一個の戦闘単位」の象徴なんですよ。プレイヤーが味方に指示を出す事で達成されていた援護射撃、バズーカや爆発物による制圧(戦車砲)、それに移動、カバー。それら諸要素をすべて内包して統率された戦闘体系として存在できるのが、一個の戦車という象徴。だから基本的には強い。分裂した個人個人という単位の人間たちは弱い。という対比。やっぱこの解釈は無理があるな。
でもその戦車パートの挿入されるちぐはぐさも、やっぱり件の「統率無き開発」の成果でもあるように思う。戦車長としてそれぞれに移動命令・援護射撃命令・砲撃命令を出すほうがまだ面白かったと思う。

(追記2)---
そういえば、360版だと(PS3版だとセーブデータの仕様が違うので分からない)各チャプターのセーブデータを削除したうえで、コードで全チャプターを出現させるなどして、各チャプターの上から二番目以降を選択する(要するに、チャプターを最初から始めない)ことでプリセット装備がM1ガーランドとM1A1トンプソンになる裏技を当時発見したのですが、完全にワンマンアーミーになる「THE RABBIT HOLE」のパートでは通常通り拳銃だけだった。あのチャプターこそ戦車のシーンと対比になっていて、戦車は複数人で操作するからその現実性が担保されているが、全く一人だと戦っている相手は存在しないかもしれない。個人の弱さと集団の強さだ。戦友だ。

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