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『白夜の星』 後書き


 長い外伝にお付き合い下さいまして、ありがとうございます。


 のっけから作者の後悔を書くようで恐縮ですが……本編を完結させた際、「まずいよなあ、これ」と、思ったのです。最初から、ハッピーエンド(大団円)にはならない物語だとは考えていましたが、「いくら何でも、ひどいだろ、これ」と。

 ラナが。いえ、ラナだけでなく、女性たちが。

 ……改めて私なぞが書くまでもなく。紛争などで一番被害を受け、傷つけられてしまうのは、体力的に弱い子どもたち、女性たち、病人、老人たちです。勿論、大切な家族や仲間を傷つけられる男たちも不幸なのですが。
 本編では、特にラナが、被害を一身にこうむる立場になってしまい、作者として心苦しかったです。

 『不思議な小太鼓』と『雷神と白樺』では、本編の前、幸福だった子ども時代のラナを書きました。本作は、本編の後日譚です。生き残ったラナと女性たちが、何とか、希望をもって生きて行って欲しい……と、願いをこめて書きました。

 残念ながら、ビーヴァは既に死んでいます。そういう点では、幽霊譚としてお読みいただければ幸いです。


 ビーヴァは、恋愛に関して、たいへん不器用です(もちろん、そういう風に創ったのは私なんですが)。ラナの気持ちには、ちゃんと気づいている。でも、乳兄妹ですし、彼らの掟や習慣から考えても、彼女を恋愛対象として見られない。かと言って、突き放すことも出来ず、上手い対処法も思いつけず、ぐるぐる悩んでしまう……典型的な優柔不断キャラクターですな。

 死んだのだから、そこは開き直ってくれればいいのに。どうも彼は、生前の感覚をひきずっています。

 どうやっても、彼一人で事態を解決できそうにないので、ラナ本人とキシムに頑張ってもらうしかありませんでした。この二人、どうしてこんな男が好きなんだろう……と、書きながら作者が悩む羽目になりました。
 ラブコメですよね、このパターンって……。

 カムロやロコンタ氏族長など、登場する男性キャラクターたちの殆どが、いいところのない話になってしまいました。ご容赦いただければ幸いです。


 題名の『白夜の星』ですが――
 ラナたちの暮らしているところは、北緯60度くらいを想定しています。現実には、ヘルシンキ(フィンランド)、ストックホルム(スウェーデン)、オスロ(ノルウェー)、サンクトペテルブルク(ロシア)などの都市がある緯度です。

 私が実際に訪問したのは、コペンハーゲン(デンマーク)と、オスロが北限です。ちょうど夏至の時期でしたが、北緯55~60度だと、白夜と言っても太陽は完全に沈まない、というわけではなく、一応、22時~4時くらいの間は見えません。でも、空が完全に暗くなることはなく、いわゆる「薄明」という状態になります。

 完全な白夜では、星は全く見えませんが(要するに、昼と同じ明るさなので)、薄明なら、明るい星ならなんとか……探せば見える? というくらいです。――いるけれども見えない、神霊になったビーヴァを示しています(照)


 本編では書ききれていなかった、テティ(神霊)と巫覡に関する設定や、没後のビーヴァの葛藤について、書いています。蛇足になっていなければよいのですが……。

 お付き合いいただき、ありがとうございました。お楽しみいただければ、幸いです。


 2017年4月(初出)
2017年7月

                      作者 拝

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