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『掌の宇宙』第11話 解説

《インド タミル・ナードゥ州の民話》

 インド(正式名称バーラト)は、世界第二位の人口(約10億6000万人・2004年総計)を抱える連邦共和国です。28の州、6つの連邦直轄地と首都圏から成ります。連邦公用語はヒンディー語、補助公用語は英語ですが、17の言語が地方の公用語として認められています。

 無数のセクトやカルト、宗教、多くの人種の混合があり、非常に複雑な地域です。数字の0、十進法、大学の創設、医学、円周率、航海術など、さまざまな文化や科学、宗教哲学の発祥の地でもあります。人口に占める各宗教の割合は、ヒンドゥー教80.5%、イスラム教13.4%、キリスト教2.33%、シク教1.84%、仏教0.76%、ジャイナ教0.40%、その他(拝火教、ユダヤ教など)0.12%です。

 言語学的な調査によると、100以上の言語、四つの語族、主要な10種の表記法が存在すると言われています。105種の言語のうち、15種は、人口の95%が使用しており、それぞれを数百万人が話しています。文学作品には、サンスクリットで書かれた古典を含め、2000年以上の古い歴史を持つものがあります。

 タミル語は、インド亜大陸の最南端のタミル・ナードゥ州と、スリランカ北部で使われている言語で、話者は約4000万人以上といわれます。日本語の起源をタミル語に求める学者もいます(大野晋ほか)。

 インドの寓話は、中世ヨーロッパやアラブ諸国の寓話・民話・文学に大きな影響を与えました。特に『イソップ物語』のいくつかは、インドのものだと言われています。


■本文解説

注①:ヒンドゥーでは、結婚・出産・子育てといった社会的義務を果たし終えたものが、出家して解脱を求め、山林で暮らすのが理想の生き方と考えられていました。現代でも、このように老年期を送る方がおられます。家族も仕事も財産も放棄して求道する者は修行者(サドゥー、シヴァ派ではサンニャーシン、ヴィシュヌ派ではヴァイラーギなど)と言われますが、ヒンドゥーでは、俗世のつとめを放棄することを奨励してはいません。人生の義務をきちんと果たし、子ども世代に孫が生まれたら、というのが一般的です。

注②:ブラフマン(ブラフマー)は、ヒンドゥー三大主神の一人です。漢訳仏典では、梵天と呼ばれます。宇宙創造の神であり、神々と生類の主であり、バラモンの神ともされていますが、神話上の地位はあまり高くありません。通常、四つの顔と四本の腕、数珠・『ヴェーダ』・小壺・杓を持った姿で表されます。しばしば、白髪の老人として描かれます。妻はサラスヴァティー(弁財天、知恵と学問の女神)。賢者ダクシャの父であり、ダクシャはシヴァ神の最初の妻・サティーの父です。シヴァとの仲は大変悪く、最初五つ持っていた顔の一つを、シヴァによって切り落とされたという神話があります。

注③:ヒンドゥーは、開祖のいる宗教ではなく、民間宗教(信仰)や民俗であるので、「教」という概念には馴染まないと言われます。三大主神のうち、ブラフマンは宇宙創造を、ヴィシュヌが維持繁栄を、シヴァが破壊と再生を司る――と、表現されていることが多いです。しかし、実際には、三神それぞれに創造神や維持繁栄・破壊神の性格が存在しています。この話では、ブラフマンは神々を創造した神です。

注④:インド西部、西ガーツ山脈に発するクリシュナ川の大支流。

注⑤:インド、中国などにいる、日雇い労働者。荷物の運搬などを行いました。

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