《ロシア連邦:シベリア》
「シベリア」と呼ばれる地域は、西はウラル山脈、東は太平洋、北は北極海、南はカザフスタンのステップ地帯とモンゴルと中国の国境までを含み、面積は約1380万km2。アメリカ合衆国と西ヨーロッパ諸国全てを合わせた面積に相当します。
地理的には、西シベリア低地・中央シベリア高原・東北シベリア山脈・南シベリア山地に大別され、西からオビ、エニセイ、レナの三つの大河が北極海に注いでいます。気候は南からステップ(大草原地帯)・タイガ(針葉樹林帯)・ツンドラ(凍土帯)に当たります。
シベリアには、ロシア民族以外に、アリュート語群、チュコト・カムチャッカ語群、モンゴル語群、チュルク語群、ツングース・満州語群など、言語の系統が異なる多数の民族が住んでいます(ブリャート、ハンティ、ケト、マンシ、オロチ、ナナイ、エヴェンキ、ニヴフ、ヌガナサン、ヤクートなど)。この地方の口承芸術の蒐集・研究は、19世紀後半から20世紀初頭にかけて(帝政ロシア時代)流刑にされた革命家(政治犯)の人々によって始められたと言われています。
シベリアの東北端、ベーリング海峡周辺の地域(チュコト~カムチャッカ半島)で暮らすのは、シベリア・エスキモー(ヤップィック)、チュクチャ、ケレク、コリャーク、エヴェンといった人々で、海獣猟・毛皮獣猟・漁撈・トナカイ飼育などを伝統的な生業としています。
いずれも人口は百人~一万人程度の少数民族で、彼等の固有言語は消滅の危機にあります。
(本作品は、ヤップィックに伝わる民話を基にしました。動物と人間が結婚する話は多くあり、ワタリガラス、クマ、タコ、ミンク、クジラ、キツネ等のバリエーションがあります。いずれも、動物は「神」かそれに匹敵するものとして扱われます。クマ、シベリアタイガー、オオカミ、海獣は、特に神聖だとされたようです。)