どうも夏木です。
気紛れに近況報告など書いてみたりします。
といってもわたしの創作活動なんか書くこともこれといってないので、第二部といってもいい物語上の大きな転換点を迎えたある作品について、今さらながらにちょこちょこ閑話的なものを書いていきたいと思います。
今回はその作品を書き始めた理由から書いていきます。
「人型兵器というロマンに理屈付けをするならどうすればいいだろう?」
現在、連載している作品「剣の刃が欠ける頃」(以下、「つるかけ」)はそんなテーマから構想が始まった作品です。
かれこれ六年も前になると思いますが、当時のわたしは巨大人型兵器反対派でした。
どう考えても主力戦車のほうが戦術的にも有利で費用対効果が高いですし、小さければ小さいほど優秀、という原則が成り立つ兵器開発の歴史において、突然変異的に巨大人型兵器が登場して活躍する場面が想像できなかったからです。現実というカチコチに凝り固まった法則の中に放り込んでしまえば、創作物にだけ許されたロマンや人間の感性に重きをおいた想像の産物は敗北するしかないとわかってはいるのですが、当時のわたしは「まったく非合理だ!」と鼻息荒く語っていたわけですね。今にして思えば恥ずかしいことこの上ないな……
こうした今よりももっと貧相な見識で小説をぽちぽち書いていたわけですが、ある作品がわたしにとって大きな転機になります。
当時大学生だったわたしは、知り合いの女子学生に「アルドノア・ゼロいいですよ」と勧められたのです。
アルドノア・ゼロは、今でもわたしの作品に大きな影響を与えている那須きのこさんの伝綺小説「空の境界」の映像化で監督を務めていたあおきえい監督が制作に携わっていた近未来SF作品です。
詳しいあらすじなどはネットの海からすくいあげて欲しいのですが、ざっくばらんに粗筋を説明すると、謎の超技術を利用して宇宙から攻めてきたスーパーロボットを持つ勢力と、通常の技術しか持たない地球の勢力が戦争をするという物語です。
言うまでもなく作品の魅力の大部分は、登場する人型ロボットに大きく寄っています。これら人型兵器はカタフラクトと総称され、火星のヴァース帝国が擁するカタフラクトはアルドノア・ドライヴと呼ばれる古代文明の遺産を組み込むことで超高性能を実現した機体を運用し、翻ってヴァース帝国を迎え撃つ地球連合軍が持つカタフラクトはガスタービンエンジンなど従来の内燃機関を搭載するため、性能面で大きく水をあけられているものの数と戦術でどうにか対抗するという非対称戦が物語の主軸となります。
これがなかなか面白く、特に第一話から第三話のニロケラス戦はSFファンなら見て損はありません。ロボットものが苦手でもじゅうぶん楽しめるほどに作品のクオリティは高かった。
まあ、この作品が面白くて「人型兵器もロマンがあっていいじゃないか」と思うようになったという話です。
となれば、影響されやすいわたしとしては「じゃあ書こう!」となったわけですけども、やっぱりただの作品は書きたくないな、何かテーマが欲しいと考えたわけです。
最初に取り掛かったのは、やはり勉強です。思い立ったが吉日、アニメを見た次の日の大学の帰り道、いつもお世話になっている書店に並ぶハヤカワSF文庫の区画で一通り物色。
そこで二度目の出会い。今思えばこの出会いが今の小説作品に最も強い影響を与えているんじゃないかと思える作品。
三島浩司さんの「ダイナミック・フィギュア」。もうこれ無くしては語れません。個人的には日本におけるリアルロボットSF作品の金字塔と思ってます。
緻密で現実に即した重厚な設定の数々、人型兵器が存在する理由に対する意味付け、舞台設定などなど魅力は語りつくせないほどですが、最も強く印象に残ったのは、個性豊かな登場人物たちが織り成す、それこそ火傷をしそうなほどに熱い人間ドラマです。
「アルドノア・ゼロ」から入り、「ダイナミック・フィギュア」に行き着けば、あとはなんだか書けそうな気がしました。
メモに書きだしては自分で突っ込みを入れ、適度に空想で補いつつ、何とか「つるかけ」の骨子が組み上がっていきます。「アルドノア・ゼロ」のような非対称戦、「ダイナミック・フィギュア」のような工夫した設定と熱い人間ドラマ……書いていてつまらないわけがないんですよね。
話を振り出しに戻すと、こうしてリアルロボットSF作品らしきものを書くにあたり、やはりどうしても必要なのは「人型兵器というロマンに理屈付けをするならどうすればいいだろう?」という問いに対する回答です。
自分としてはもうラストシーンまで思い描いている「つるかけ」ですが、現在公開している部分ではまだこの問いに対する明確な答えが出し切れてません。わたしが書きたい場面、登場人物に言わせたいことはもっと沢山あります。ネットで小説を書き始めてもう十年以上になりますが、これほど楽しい作品は自分の中で他に無いです。
まだまだ物語は続きますが、わたしは「書ければ満足」という自己中心的な執筆スタイルなので、色々やらかすときは大目に見てください。
これからも「剣の刃が欠ける頃」をよろしくお願いします。
……次回は登場人物への思いとか書いてみようかな。