新しい眼鏡

 先日、眼鏡を買い換えました。

 透明に、薄い紫の入ったフレームです。

 最初に選んだときは「女性ものを男性がつけているように見えないかな」と思ったのですが、しばらく掛けてみて、紫色が思っている以上に薄くて、透明なフレームをつけているのと変わらない感覚なので、よしとしました。

 僕は小学校四年生の頃から眼鏡生活です。

 小五、小六の時の担任はろくでもない奴でした。

 彼のお陰で僕は日教組という団体を嫌いになることができました。



 あるとき、サッカーの授業で僕は、眼鏡をかけたまま参戦し、目の前で相手の蹴ったボールが顔面にぶつかったことがありました。

 眼鏡の鼻パッドを支えるクリングスがひしゃげて歪み、前と同じように掛けられなくなってしまったのを嫌い、親に怒られる困ったな、となんとか復元しようと弄っていたら「ほら、888。
お前も早くボールに走り込め」といわれそのまま指示に従いました。

 後から考えれば考えるほど非人道的に思えます。

 五年生にもなって眼鏡をかけたままサッカーの授業を受けていた僕も僕ですが、眼鏡をしている僕が顔面に蹴弾を受けて戸惑う様をみて、庇うどころかボールに向かわせる「小学生サッカー」をあおるような教師がろくな奴であるわけがないです。

 山内といいましたかね、その教師は。

 なかなかこういう思い出のある相手のことは忘れられませんね。



 そんなこんなでクリングスで支えた鼻パッドが嫌いになりました。

 フレームから伸び出した感じの、一体型の鼻パッドが好きです。

 買い換える前の眼鏡は、5000円+消費税で買ったもので、十年近く使っていました。

 フレームと鼻パッドが別パーツで、フレームから伸びたダボを鼻パッドに差し込む形で固定していました。

 フレームから伸びたダボが一本折れてしまったときは、臙脂のフレームに似合うよう、赤い糸で裁縫して固定していました。

 鼻パッドが割れてしまったときには、二度、三度と瞬間接着剤でつけ直していました。

 耳にかかる先セルの素材が経年劣化でボロボロしてきたときも、瞬間接着剤で固めていました。

 誰がみても「壊れた眼鏡をかけている」人でしたが、なかなか昇進の機会に恵まれない僕は「昇進するまで買い直すものか」と思っていました。

 それが今回、昇進も無しに買い換えたのは、多分に「致し方なし」という状況に追い込まれたからです。



 無くしたんです。



 街中を裸眼で歩くのが嫌いじゃないんです。

 そりゃ全員もやもやして見えますが、距離間がつかめなくなるでも無し、動く印象派ワールドに入り込んだようで眼鏡を外したりしています。

 冬服から春物に差し替える衣替えの時期に、いつもの位置にあったポケットにしまったつもりになっていたようで、ポロッと落としたようなのです。

 意地になって買わずにいたのですが、無くなってしまったからには買い直さざるを得ません。

 老眼もあるし「遠近両用眼鏡っすかねえ」と店員に聞いたら「度数下げたらいけるっすよ」といわれました。

 なるほど確かに、遠くはぼやけて見えなくもないですが、手元ぐらいの位置なら文字も読める。

 お陰で、フレームも機能も、納得の一品になりました。



 昇進は……しておりません。

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