塚本邦雄の短歌を読み始めたら、実に調子が良くなった。
本当に敬意を持って読めて、しかもそれが好みに合っていて、刺激と、同時に何ともいえない安らぎを与えてくれるのは塚本邦雄の短歌くらいしか思いつかない。
歌集の歌の頭に鉛筆で〇印がつけてあって、最初に読んだ時に感激して付けたものである。これを今の感覚と照らし合わせると、微妙にずれがあって面白い。
以前も今も素晴らしいな~と思えるのはやはり初期の歌が多い。たとえば、
・鍵孔から覗けば黑きてのひらにすきとほりゐる雲雀の卵
・聖母像の乳房狙へる銃孔の中の螺旋に眼をまきこまれ
・雪の上を驟雨過ぎしが數千の地下より天にむけし銃口
なぜか「鍵孔」「銃孔」「銃口」の出てくる歌を選んでしまった。
他にも「蕗」「酢」「牡蠣」「紫蘇」「卵」は登場回数が多い。
難解で知られる塚本邦雄だが、一読してすぐに意味が通じるものも結構ある。そういう歌をまとめてみたい。