ちくま書房の「地霊を訪ねる」(猪木武徳)は自分と波長が合うらしく、読んでいる最中に何度も「いい本だなあ」と感じ入る。
ところがこの魅力を説明するのが難しい。
前書きには「ブラタモリ」「街道をゆく」といった有名な紀行寄りの作品例が挙がっているが、それとは少し違うし、タイトルの「地霊」から受ける印象ともやや異なる。
話題の広さ、思索の深さ、端正な文章、そうした要素とこちらの興味や知識や関心が少しずつ組み合わさって、微妙なバランスで「いい本」という印象になるものだ。
たまたま図書館で手に取って読み始めただけの本だというのに、年に一度あるかないかの出会いという気がする。